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第4話 お手伝い

 零たちは孤児院の中へと案内された。中はそこそこに綺麗に整頓され子供が描いたであろう絵が壁に貼られていた。


 「ただいま」

 『ただいまー!!』


 ホシと双子は誰もいないはずの孤児院にそう告げた。


 「誰もいないけど、言った方がなんか気分がいいんだ。ここは我が家みたいなものだしね。だから帰った時には絶対に言うようにしてる」

 

 ホシは、零たちを横目にそう言って奥へと向かった。


 玄関部分の机の上に写真が置いてあった。零は写真を見て驚いた。


 「本当に俺にそっくりだな。この人がアマナさんか?」


 写真は、子供が大勢並んでいる写真で真ん中にホシともう一人零にそっくりな男が写っていた。


 「そ、そいつがアマナさ、今はもうこれ位しかあいつの物は残ってないけどね」





 零たちも奥へと進んでいった。手洗い場に双子が身を乗り出してしっかりと石鹸で手を洗っていた。その後に靴を揃えて脱ぎ、下駄箱に入れ、奥の広い部屋へと入りそこに用意されていた布団で昼寝をはじめた。


 「あの子たちしっかりしてますね。組の連中に、帰ったら手を洗うのを徹底させましょうか」


 「そうだな、ぶん殴ったり汚いもの触ってそのまま飯食ってる奴とかいるからな、今度言っておく」


 零たちも見習ってしっかりと手を洗っていた。


 「なんだか、おれも眠くなってきた・・・」


 忠也が虚ろな目になって来た。相当眠たいらしい。


 「布団ならまだあるから、一緒に寝てたら?」


 「そうするー・・・」


 忠也は布団にたどり着く前に手前で眠ってしまった。すかさずタマが忠也を抱え、双子の隣に寝かした。


 「俺、ここで様子を見てますね」


 タマはとりあえず寝ている3人を見ていることにした。




 手を洗った後、ホシは応接室の様な部屋に零たちを案内した。


 「さてと、少し休憩出来るな・・・なぁあんたら、とりあえず分からない事だらけなんだろ?少しの間なら時間があるから、話聞くよ」


 「そうか・・・かたじけない」


 零は言葉に甘える事にした。とりあえずここの事を知らなければ今後をどうするかの見当もつかない。


 「まず、整理しますと、ここは俺たちがさっきまでいた世界とはまるで別の世界。えっと、エイドと言う国なんですよね?」

 

 ハチが取り仕切り情報の整理をした。


 「そ、エイド王国。国王の名前はエイド ルピナス イブ六世。そんで隣にあるのがアダムス王国だ。あっちの国王の名前はアレクサンドラ アダムス。これも、知らないんだよな」


 「はい、全く知りません。言葉自体は通じてるみたいですけどね。そして村の雰囲気も、まるで北欧のどこかみたいだ。ここは間違いなく日本では無いとしか言えません。しかし、靴を脱ぐ等は日本的な所もあるみたいですが・・・」


 「ニッポン・・・それがあんたらの国の名前かぁ・・・やっぱり聞いたことがないな。うちにはやっぱりサッパリだな。悪い、力になれそうにないや」


 ホシは色々と考えたようだったが、どうにも良い手段が思いつかなかったようだ。


 「ホシさん、一つだけ聞きてぇ事がある」

 

 しばらく黙っていた零が口を開いた。


 「ん?なんだ?」


 「さっきタマがやってた、あれの事だ。魔法・・・とか言ってたか?」


 ホシが思い出したかのように手をポンと叩いた。


 「そうそう!魔法だよ!これなら手掛かりになるんじゃないか?アダムスには魔法を使う奴らがいるって話だ。もしかしたら何か分かるかもしれないね」


 「そうか、ハチ、明日になったらそのアダムスに向かうぞ」


 「唯一の手掛かりはそれぐらいですからね。行きましょうか」


 決まった。零たちはアダムスへ向かおうと考えた。




 「あ、そろそろ夕飯の準備しないとな・・・」


 時間は夕方4時になろうとしていた。意外と話し込んでいたみたいだ。


 「あ、今晩くらいは俺が作りますよ。夜、お仕事なんですよね?」


 「いや、いいよ!うちにとっちゃあんたらはお客さんみたいなもんなんだからさ。それにここに来て訳も分からない状況なんだろ?休んでおいた方が良いって!」


 ホシは手伝わなくてもいいと言う。しかし、恩を返さないのはハチにとって許せなかった。


 「そうですか。しかし、俺としても何もしないのは癪に障ります。何かやらせていただけませんか?」


 「そ、そこまで言うなら・・・あ、さっきのニジマス。出来たら三枚におろしてもらえると・・・ってこれは、流石に無理か・・・じゃあ」


 「分かりました。三枚おろしですね」


 「え?出来るの?」


 ホシが少し無理を言ってしまったと後悔する前にハチは快く承諾した。


 「ハチの腕は確かだぜ、任せて大丈夫だ。俺に出来る事は・・・」


 零も何か手伝おうとする。


 零はあまり料理は出来ないので、食器を並べる事しか出来ない。零は少し料理を練習しなければと心の奥で感じた。





 ハチは慣れた手捌きでニジマスをおろしていく、包丁を器用に扱い鱗を取り、腹部も綺麗に捌いて内臓を取り、血合いもしっかり取り除き、骨が入らないように丁寧にかつ素早く身を剥いだ。


 「こんなのでよろしかったでしょうか」


 「いや・・・下手したらうちより上手いんじゃないか?」


 ホシが少し苦笑いになっていた。


 そんなこんなで昼寝をしていた子たちが起きてきた。


 『きょうはなにー!?』


 双子が今日の夕食が何か聞いている。


 「今日はね、さっきのニジマスのムニエルとおひたし、ご飯とみそ汁だね」


 「わーい!わーい!わーい!」

 「おみそしる!おみそしる!」


 双子はどうやら味噌汁が一番うれしいみたいだった。


 「あ、レイさん、でしたね。すまないけど、みそ汁の火ちょっと見ててくれる?」


 「分かった」


 零は火の様子を見る。流石に火の加減の調節位なら零にも出来た。


 


 「さてと、完成っと」


 夕方の4時半、夕食が出来上がった。


 全員ちゃんと丁寧に手を洗って席についた。


 「じゃ、手を合わせて、いただきます」


 『いただきまーす!!』


 「いただきます・・・」


 タイミングがずれたが、零たちもしっかり合掌して食べ始めた。


 「・・・なるほど、この子たちがみそ汁を喜ぶわけだ。美味しいですね」


 みそ汁の具材は、じゃがいも、玉ねぎ、豆腐だけしか入っていないとてもシンプルなものだった。だが、このシンプルさがまた良かった。


 「このムニエルも、ハチ、お前に引けを取らないぜ」


 「おふくろの味ってやつなのー?」


 「忠也・・・君、地味に難しい言葉知ってるよね」


 「うま!うま!うま!」 

 「びみ!びみ!」


 こうして、和やかな雰囲気のまま夕食を食べ終えた。忠也が率先して食器を洗い、サナとルナが食器を拭いた。


 「チュウヤ君、洗うの上手だねー」


 「おとーさん、いつも食べたら放置してたからさ、おれがいつも洗ってたのー」


 ホシは忠也の頭を撫でた。そしてまた忠也は首をかしげて不思議そうな顔をした。しかしその後は笑顔になった。


 「さてと、そろそろ準備しなくちゃね。今日は済まないね。泊ってけって言ったのにここまでやってもらってさ」


 「別に構わねぇさ。借りた恩は必ず返す。筋を通すって事だ」


 「ありがとうね」


 ホシは礼を述べてさっさと出かける準備を始めた。


 「きょうははやいね」

 「はやい はやい」


 サナとルナが少し心配そうに声をかけた。


 「ちょっとね、今日は大物が来るんだってさ。だから今日あの店は貸し切りなの」


 「おおものってだれ?」

 「わかんない わかんない」


 双子は特に分かってない様子だが、どうって事なかったかのように遊びに出かけた。


 「じゃあ公園で遊んでくる!遊ぶね!遊ぶね!遊ぶね!」

 「いく!いく!」


 「六時には帰って来るんだよー」


 『はーーーーい!!』


 双子が遊びに行き、部屋が静かになった。その後だ。


 『キンコーーーン』

 

 突然入口のチャイムが鳴った。


 「ホシさんよぉ、いるんだろ。ちーーっと用事があるんだ」


 入り口から柄の悪そうな声が聞こえてきた。


 「なんであいつらが?昨日集金に来たばっかだってのに・・・何の用だ?あ、済まないけど奥に行っててくれないか?例の借金の話だからさ」


 ホシはささっと準備を済ませ、玄関へと向かった。


 零たちは奥の応接室でしばらく待つことにした。だが、タマと忠也がドアに耳を当てて会話を聞こうとしていた。


 「おいタマ、向こうのプライベートに突っ込むのはよせ、忠也も真似してるじゃねぇか」


 零がタマを止めようとしたが、タマは零に反論した。


 「いや、なんというか、昔の勘が怪しいって言ってまして・・・つい・・・」


 タマはどうにも気になって仕方がないようだ。零は止めるのはやめておこうと考えた。


 「迷惑はかけんなよ」

 

 「分かってますって!」


 「とは言っても、タマのこのおせっかいでいつも俺たちは迷惑に巻き込まれるんだがな・・・」


 ハチの予感は見事に的中することになる。


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