二大国統合調印式編 その11 天涯比隣(ココロノナカデ)
「・・・」
アマナは中を見渡している。
「何故・・・ここにいるのだ。お前は」
アングラはアマナに質問したが、表情を見れば分かる。アングラはもう答えを知っているはずだ。
私はアマナを見た。血にまみれたその目はひどく悲しく、そして憎み恨んでいる。アングラをじゃない。そんな生やさしい目じゃない。この目は、闇が深すぎる。
私はなんの為にここにアマナが現れたのか理解できた。
「変わりましたね・・・アマナさん」
「あぁ、なにもかもな・・・」
その後だ、視界が揺らいだ。何をされたのかはっきり分かる。私は首を斬られた。だが、痛みも何も感じなかった。
アマナは殺しに来たのだ、全てを。
「あり がとう ござい ます」
最後に出た言葉、何故か感謝の言葉だった。今の彼に最も意味のない言葉だ。だが私は言わずにはいられなかった。彼なら全てを壊してくれる。そう思ったからだ。だけど、全てを壊した後アマナさんはきっと本当に何もかもが無くなってしまう。
でも、きっと、彼を救える者が必ず現れる。私はそう信じれる・・・未来を、信じよう。
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「アマナ君よ、君はこの世界の真実を知っているか?」
最初、かなり動揺していたアングラだったが、先ほどの余裕を取り戻したようだ。いや、取り戻したというより、悟ったかの様な表情だ。
「そんなことはどうでもいい、私は私の目指す世界を創る。二度とお前の様な存在が現れない未来をな」
「そうか・・・ここまで来て、私の野望は終えたか。だがアマナ君、君がいくら足掻こうと無駄なのだよ。この世界を支配したところで、君は私にしかなれない。神にはなれないのだ」
「言いたい事はそれだけか?」
「そうだな・・・残念ながら私は家族に言ってやれる言葉が一つもない。念仏も私には唱える権利すらない。
だが、強いて言うのなら願うな。私や君の悪足掻きがいつか繋がって、この世界を導ける神が現れることを・・・アマナ、この世界の支配者よ、いつか君に救いが現れることを」
私はアングラを殺した。癪に障るな。何故あんなにも清々しい顔をして死を受け入れた?お前にとって支配とは何だったんだ?成し遂げるべき野望だったのではないのか?
私は苛立った。何とも言えない虚無感が襲う。様々な事を一気に理解できた気でいた。だが今は疑問しか残らなかった。元凶を潰せば、少しは気が晴れると思い込んでいた。だが、何も残らなかった。
「タマ・・・何か言いたいのか?」
私は質問をぶつけた。タマはじっと私を見ていた。何も言わず、ただじっと。その姿に心など感じなかったが、私の思い込みのせいか、その目は否定的な目を私に向けているように感じた。
「何も無いのなら行くぞ」
私は次の場所に向かった。アレックス、お前は最後に殺す。
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「空が、赤い」
「それは夕方だからでしょ?ルーアン」
「どこかで血が流れている」
「まぁ、どんなに頑張っても毎日誰かが傷つく」
「そうじゃない・・・思い出した。この感覚は、死だ。今日大勢の人が死んだ。感じるんだ!」
突然ルーアンがわたしの肩をつかんだ。
「今すぐ引き返さなきゃいけない!!」
「ど、どうしたんだい!?ルーアン君!!」
お父様も動揺している。一体どうしたというの?
「このまま進んでは駄目です!!引き返してください!!」
「ちょっと!ルーアンいきなりどうしたのよ!!」
「行けば分かる!セイアン村だ。さっきのアマナさんの声、この赤い夕陽、結びつくのはセイアン村だけだ!」
こんなルーアンは見た事がない。きっと何か大変なことが起きたんだ。彼の殺し屋だった頃の血がそれを察したんだ。
「お父様、ルーアンの言う通りにしましょう。彼は嘘をつくような人ではありません」
「・・・分かった。村に戻ったらアレックス様たちに連絡を入れる事にしう。御者さん!今すぐセイアン村へ戻ってください!!」
わたしは急遽村へと引き返した。
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そして、時間をかけ村にたどり着いた。
「ここは、一体どこなの?」
わたしがたどり着いたのは、まだ火が燻ぶっている地獄のような場所だった。
「セイアン村のはずだ・・・私たちがいない間に、何が起こったというのだ。何か知っているのか?ルーアン君」
「分からない・・・」
ルーアンもこの現実にただ、立ち尽くしているだけだった。
「ってこんな事してる場合じゃない!!誰かいるかも!!」
わたしは瓦礫をかき分け、誰かいないか探し始めた。後を追うようにお父様とルーアンが、その後に一緒に向かっていた者が動き出した。
「っ!!マスター!!マスター無事か!!まだ息がある!!」
お父様が、セイアン村の喫茶店の店長のマスターさんを見つけた。全身大やけどで顔もすすにまみれている。
「シャイニー か?」
「あぁ私だ!しっかりしろ!!何があったんだ!」
「国家 反逆だ、奴ら ここの村が 反旗を翻したと でっち上げた。アマナ君たちが戦ってくれていたが・・・彼でも駄目だった」
そこまで言ってマスターさんはかくんと倒れた。
「マスター!?マスターーーーー!!」
お父様は必死に呼びかけたが、もう彼は動かなかった。
「マリリン、これを・・・」
ルーアンが私を呼んだ。そこにはホシさんが倒れていた。
「そ、そんな!!ホシさん!なんで!?」
「マリリン、彼女の死を悼むのはあとだ。それよりも・・・」
わたしは、ルーアンに掴みかかった。
「ルーアン!!それよりもってどういう事よ!!ホシさんはここの村のみんなはわたしにとってとても大切な存在だったのよ!!」
「わ、悪かった」
別にルーアンを責めたい訳じゃなかった。でも、どうしようもない怒りが沸き起こって八つ当たりしてしまった。
「わ、わたしこそ・・・なにか気になる事があったの?」
「この死んでいる兵隊たち・・・何故ここにいる?一応俺は今回の調印式の警備網を見ていた。こいつらはここの担当ではない。それどころか、ここの死んでいる兵隊のほとんどは担当地域がバラバラだ。
こいつらが、この村を襲った。だがどうなっているんだ?何故、ここを襲った連中までもが壊滅している」
わたしはそう言われて初めて冷静になった。死んでいるのは村の人よりも兵隊が多い。アダムスもエイドも着ている鎧はバラバラだ。
「アマナさんは・・・どこにいるんだ?」
お父様が小声でぼやいた。
「いないのですか?」
「そうなんだ。彼が戦った魔法を使ったような跡は見つけた、だけどルーアン君が立っているその場所から痕跡がないんだ・・・いや、ちょっと待ってくれ」
お父様はホシさんの近くにしゃがみこんだ。
「なんだ?これは・・・」
「足跡?犬の様な・・・しかし、大きすぎるぞ。この足跡は」
巨大な足跡?どうしてそんなものが・・・わたしも周囲を探してみた。地面が抉れてくぼんでいる場所を見つけた。
「ルーアン!!コレは!?」
「これは、鹿か?この形状は・・・でも、いくら何でもでか過ぎる」
わたしとルーアンは、更に目線を横にやった。お父様も、それを眺めた。
「これは・・・足跡と呼べるの?こんなのって」
「まるで、クレーターじゃないか」
「だけど、これは紛れもない足跡だ。見たこともない形だが・・・でも、この大きさだと」
「五十メートルは簡単に越せる大きさの生き物になるぞ?」
ルーアンとお父様が同時に語った。
「アマナさん・・・一体どうしたというのですか?」
わたしは一つの予測に行きつく。アマナさんはまだ生きている。
「・・・大変な事になって来た。一度家に戻るぞ!王子たちにこの事を伝えるんだ!!」
わたしは家に向かおうとした。だけど、わたしの家のメイドが慌てて駆けつけた。
「シャイニー様!!ゾロアス邸が!!ゾロアス邸が燃えてしまっています!!」
「っ!!くそ!マリリン!!ルーアン!!君たちはここにいろ!!私は会場に向かう!!」
お父様は馬車から馬を離し、またがった。
「俺も行きます!!」
「いや、私一人で行く!馬の扱いは得意なんだ。電話が通じない今、最速で情報を伝えるにはこれしかない。ボーダーの電話も会場には通じない。あれはアダムス国内のみだ。最も早く行くには私一人で行く事だ!ルーアン、君はマリリンや私の家の者と共にボーダーに向かってくれ!!そこでここでの事を伝えるんだ!!」
「っく、分かりました・・・お気を付け下さい」
「何としてでも伝えなけば・・・ハイヤー!!」
お父様は全速力で会場へと向かった。三日三晩、走るつもりなんだ。
「俺たちも行こう!!」
「分かりました!!」
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アレックスの乗る車、俺ぁ奴と一緒に同席していた。アレックスの奴は運転したいとか言ってたが、流石に許可が下りず渋々後部座席に乗っている。
「・・・アマナ君は今、どうしているだろうか」
「なんでぇ、アレックスいきなりよぉ。突然あいつの事なんか思い出して」
「いや、何となく思い出したんだ・・・そういえばスチュワート?さっきから眉間にしわを寄せて何を考えていたんだい?」
「あ?俺か?う~ん、それがわっかんねぇんだよなぁ。妙に胸騒ぎが済んだけどよ、それこそあんたとおんなじ、レイの奴の事を思い出してた」
「レイ?」
「あ、ちゃうちゃう、アマナのことな。俺はレイって呼んでたかんな」
やべぇやべぇ、思わず本名言っちまった。しかしなんだ?なぜあいつの事を思い出してんだ?二人そろって・・・なんかやべぇ気がするな。怠けているつもりはねぇのにアレックスの前でレイと呼んじまったし、気を引き締めるか。
「そろそろ、到着します」
運転手が俺たちに合図した。俺ぁめんどくせぇが一応ここの警備のトップだ。このくそ暑い鎧着て出席しなきゃいけねぇ。めんどくせ。
「あ~、あちぃ。なんで俺まで鎧なんか・・・もしもの時どうすんだよ」
「もしもの時の為に着てるんじゃないか」
「こんなくそ暑い鎧で戦えるかよ。俺の戦い方には最も邪魔だ」
俺は鎧をしっかりとつけ直し、車を降りた。
「あれ?我々が一番か?アングラさんがもう到着されている頃と聞いていたんだけど」
「今聞いてきたけどよ、ここの関係者以外の招待された奴らはまだ来てねぇってよ。来てんのはせいぜい新聞社とか、ラジオ局ぐれぇだってさ」
「相変わらず情報収集が早いね君は・・・」
スチュワートは苦笑いで答えた。というか、ここに来た時点で誰もいなかったから聞いたんだけどなぁ。アレックスのやろう、ここの会場に入るまで気が付かなかったんかよ。
「仕方ない、先に我々だけでミーティングでもするか」
「さんせー、この鎧さっさと脱がせてくれ」
俺は鎧を脱ぎ、空調の効いた部屋で警備についておさらいを始めた。




