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二大国統合調印式編 その6 宣戦布告(スベテハヘイワノタメニ)

 「レーーイ!!!」


 突然洞窟の中で俺を呼ぶ声が響いた。そして一人の小さな少女が俺に突進してきた。


 「みんなが!みんなが!みんながあぶないの!!」


 「ルナ!?いや、サナか・・・とりあえず落ち着けサナ、何故ここに来た」


 俺はサナに尋ねた。サナがたった一人でこんな所に来るなんて有り得ない。買い物袋の中に牛乳と、菓子類が何個か入っている。ホシにおつかいを頼まれてた最中か?


 「みんなころされちゃう!!へいたいさんがはなしてた!!アレックスさんも、むらのみんなもみんないなくなっちゃう!!」


 まさか、スチュワートたちの言っていた・・・


 「ハチ!タマ!サナを連れてルナを探しに行け!チュウちゃんは俺と来てくれ!」


 俺はとっさに指示を出した。俺は今のところ症状は出ていない。しかしハチとタマはいつあの怪物になるか分からない。もし、怪物が自分自身の精神状態に左右されるのだとしたら、サナとルナの魔法で一時的に何とかなるのかもしれねぇ。少し危険かもしれねぇが、この2人は絶対にサナを傷つけたりはしねぇ。それ位の強さは持っている。


 俺は忠也とホシの元に行く。俺なら忠也が怪物になってしまっても止められる。俺はアレを支配できる。


 「・・・来たか、サナ。俺の後ろにいろ」


 来たのは2人か。走って来たみてぇだな。息が上がっているのが分かる。


 「あのガキ、こんなとこまで逃げやがって」

 

 「どうします?もうそろそろ、国王二人あの村を通過しますよ?」


 「好都合だ。行ってしまったのなら話が早い。お前は村に帰れ。少々早いが『全ては平和の為に』」


 兵隊の一人が戻ろうと洞窟の入り口に向かった。行かせるか。


 「おい、てめぇか?アレックスの言っていた国家転覆を目論む輩ってのは・・・」


 「!!お、お前は!?」


 案の定な反応だ。兵隊たちは俺にビビり上がるような反応をした。


 「その甲冑、アダムスとエイド?2つの国同士が結託してんのか」

 

 「ふん!我々は世界に深く根を張っている、ゲイル様を失った程度で我々は止められない」


 そう言う事か・・・まだ、あの事件は終わってねぇって事か。


 「大体話は掴めたぜ、貴様ら、アレックスたちを道中で襲った後、それの責任を俺たちの村に擦り付ける気だな?俺たちが暴動を起こした、とか言う嘘をでっち上げてな・・・


 決めたぜ。あいつ等を、村のみんなを守る為なら俺は、再び冷徹に徹しよう。覚悟は出来てるか?今の俺は人を殺す事に何の躊躇もねぇぜ?てめぇらも人を殺そうとしてんだ。死ぬ覚悟ぐらいで来てんだろうな」


 俺はドスを取り出し、殺気をあの2人にぶつけた。


 「くっ・・・貴様がここにいる理由は分からないが、俺たちのヘマで全てが水の泡になるのは避けなければ。アマナ、死んでもらうぞ!!」


 上手い事俺に意識を向けさせれたな。ハチ、タマ、頼んだぜ。


 俺はハチたちが村に向かうのを確認した後、俺は怒りと殺意を胸に、あの2人に攻撃した。

 

 「うおらぁっ!!」


 「っ!!?ぐぅあああっ!!俺の腕が!!」


 俺は1人の兵隊の腕を無理やり切り落とした。しばらくこのドスの手入れを行っていなかったせいか、切れ味が悪い。


 「どうしたんだ?そんな情けねぇ声出しやがって、てめぇは村ごと消すんだろ?腕が消えようが足が消えようが、頭が吹っ飛んでも断末魔の一つあげる事を許されるはずがねぇんだよ!!」


 俺は更に切り付ける。こんな奴ら相手にあの白い刀は使いたくねぇ。こいつらは俺自身が殺す。誰に許されなくてもいい。あいつ等を守れるのなら、名無しの喧嘩屋にも、冷徹の零にもなってやる。


 「がは!!」


 俺は兵隊の1人の心臓を貫いた。心拍が消えていく。久しぶりだな・・・人を殺すのは、やはり気分が良いものじゃねぇ。だが・・・


 俺はドスを引っこ抜き、目の前で腰を抜かして俺を見るもう1人を睨んだ。


 「ひっ!!た、助けてくれ!なんでも話す!!」


 俺はそいつの前にしゃがみこんだ。


 「そうか・・・だったら言え、こんなふざけた事を企んだ愚か者について・・・全部な」


 俺は髪の毛を掴み更に詰め寄った。そして、最悪な答えが返って来た。


 「シャロウだ!シャロウ ナロー。ゾロアス家の執事をやっているあの男だ!!」


 俺は掴んでいた手を離した。


 「俺が知っているのはこれだけだ!助けてくれるよな!!」


 「いつ、そんな約束した?」


 「そ、そんな!嫌だ!!助けてくれ!!」


 俺は足で兵隊の一人を踏み倒した。ジタバタと暴れている。


 「誰もてめぇは助けねぇよ。死んだ後もな。人を殺した罪は永遠に消えねぇんだ。俺もそのうち会いに行ってやる。先に逝って待っていろ。じゃあな、名も知らねぇ兵隊さんよ」


 俺は刃欠けしたドスをゆっくりと喉元から真っ直ぐ横に掻っ切った。兵隊を断末魔を上げさせることなく殺した。


 「チュウちゃん、出てきていいぞ。行くぜ」


 「分かった」


 忠也がひょこっと顔を出した。俺は惨状が見えないルートで外に出た。


 「あにき、なんであにきがれいてつのゼロって言われたのか分かったよ」


 「見てたのか?」


 「うんちょっと、ごめんねあにき。でも今回だけは許せない。おれも鬼になるよ」


 良かった。アレを見せた事で怖がらせたかと思ったが、感情が昂ったようだな。感情の昂りなら問題ねぇだろ。俺のあの時と同じだ。むしろあの怪物が支配できた。


 「急ぐぜ・・・」


 俺は忠也を抱きかかえ走った。


 ・


 ・


 ・


 「ホシ!!」


 俺は玄関のドアを勢いよく開けた。村は今のところ無事みてぇだ。


 「レイ!?なんでここに!?もしかして、何か方法が見つかったのか!?」


 「いやそうじゃねぇんだ。アレックスたちはここをもう通り過ぎたか?」


 「あ、あぁ、一時間くらい前だったな。エイドの王子も三十分前に通ってったよ。だけど急にどうしたんだよ。そんな慌ててさ。アレックスたちの手伝いでもする気になった?」


 「あぁ、あの事件はまだ終わってねぇ。ホシ、今すぐ逃げる準備しろ。ここはもうすぐ燃やされる」


 俺は簡単に事の説明をした。


 「ちょっ!待って!話がついていけない!!」


 「追いついている暇はねぇ。兎に角、この村に危険が迫っている。それだけ考えろ!」


 「わ、分かった・・・でも、サナとルナがまだ。それに村のみんなにも」

 

 ホシは自分の事よりも真っ先に他人を優先する。それがホシの良いところだが、今回はそれでは駄目だ。俺が何とかしなければ。


 「村の連中には俺が伝えに行く。サナはハチたちと一緒だ。ホシ、ルナはどこに行った?」


 「えっと、キャベツ買いに八百屋に行って・・・いったん帰ってきて、あ!!遊びに行くって公園に向かったんだ!!」


 「分かった、準備してろ!チュウちゃんはここでホシと一緒にいろ!」


 「分かった!一緒に準備してる!」


 次は公園だ。俺は外に出る。アレックスたちが通った後とは言え今日は甲冑を着た奴が多い。誰が奴らなんだ?ここで真実を告げても混乱を招く。そうなったらあいつ等の思う壺だ。


 まずはルナとハチたちだ!


 俺は公園にたどり着いた。そこに鉢合わせるかのようにハチたちもそこにいて、サナもルナも一緒だ。


 「兄貴!無事でしたか!」


 「あぁ、ルナも大丈夫そうだな」


 「ルナはげんきだよ?」


 ルナにはまだ、状況を説明してない様だ。けど詳しく丁寧に優しく説明してる時間はねぇ。


 「とりあえず家に戻れ、ホシとチュウちゃんが準備しているはずだ。とりあえず家に居ろ。誰も入れるなよ?例えアレックスだろうが、スチュワートであってもだ」


 「アニキはどこに?」


 「村役場だ」


 俺は役場に向かって走った。にしても邪魔だな甲冑ども・・・


 ・


 ・


 ・


 「ほいほい、分かったよ~」

  

 村長のファルコはいつも通り仕事をしていた。村長室で部下と色々やり取りをしている。


 「ふぃ~疲れたー」


 部屋には村長一人だけになり、一息ついた。


 『コンコン』


 「失礼します村長、面会したいお方がいらっしゃるそうで」


 「え~誰?今日は誰とも会う約束無かったじゃないか」


 「なんでも調印式の事で用事があると」


 「はぁ~、まぁいいや通して。全く今日はいつも以上に疲れてんのに何の用かね~」


 村長は特に考えもせずその人物を通した。


 「失礼します。トキと申します」


 「ん?ウィング家の?一体どうしたというんだい?」


 トキはうつむきながら村長に言葉を投げかけた。


 「申し訳・・・ありません・・・」

 

 「はい?」


 「わたくしは、ここまで来てしまった。あなたは村の長、そしてここはこの村の情報が全てここに集まっている・・・つまり、ここを潰せば、情報の伝達が著しく低下する」


 「な、何を言っているんだい?」


 「本当に、弱い人間だわたくしは・・・アマナさんなら、どっちを選んだのか。わたくしには、これしか選べなかった!」


 トキが突然大きな電話機のような物を取り出し、ボタンを押した。その瞬間役場が大きく振動した。


 「な!なんだぁ!?」


 「ファルコ村長。未来の為に・・・犠牲になっていただきます!」


 「トキ君!お前一体何を!?」


 トキは隠していたナイフを手に取りファルコに襲い掛かった。


 「うおらぁ!!」


 その直後だった。村長室の窓がいきなり割れ、一人の男が飛んできてトキを蹴飛ばした。


 「ぐはぁ!」


 「ファルコ!!」


 蹴破って入って来たのは、零だ。


 「アマナ・・・君か。本当に君は流石だ・・・でも、少し遅かった」


 「てめぇは確かトキ」


 「もう、止められなくなった。火蓋はもう切られたんだよ。村長は死んだ。わたくしの役目は終わったんだ」



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