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第21話 これより先、国家機密

 零たちは、少しゆっくりしてから喫茶店を出た。


 「そろそろ、アレックスの元に行きましょうかね」


 「あぁ、ちょうどいい時間だ」


 零は何とか元の調子を取り戻した。だがホシは・・・


 「ブツブツブツ・・・・・・」


 一人で何かを言っていた。相当気にしているらしい。


 




 そんなこんなでアレックスのいる場所に着いた。


 「やぁアマナ君。汽車はどうだった?楽しめたかい?」


 「まぁな、久しぶりに最高の気分だった」


 「それは光栄だ。あそこの機関車の設計には私も携わっていたからね、思い入れがあるんだ。楽しんでくれたのなら本望だ。じゃあ、早速だけどスチュワートの所に行こうか。


 エリザベート、済まないけどここから先は私たちだけで話がしたい。ホシさんたちを連れて、早いけどホテルに戻っててくれないかい?夕食には戻るからさ」


 アレックスは、エリザベートにそう伝えた。


 「分かりました、お部屋でお待ちしております。では参りましょう」


 エリザベートは、ホシたちを連れてホテルへと向かおうとした。しかし、零は一人の人物を呼び止めた。呼び止められた彼も、行く気はなかった。


 「済まねぇが、チュウちゃんは残ってくれねぇか?これにはお前の力が必要なんだ」


 「うん、おれもそのつもり」


 「そうですか。一緒にとらんぷをやろうと思っていたのですが・・・あまり、危険な事はしないで下さいよ?」


 エリザベートは心配そうに忠也の頭を撫でた。まるで自分の子が初めてのおつかいに出かけた気分だった。


 「心配しなくていいぜ、エリザベートさん。絶対に守るからな」


 「頼もしいですね、アマナさん。夫とは随分違いますね」


 「し、失礼な!私だって頑張ってるよ!」


 エリザベートの突然の毒舌に、アレックスはたじろぎながら反論したが、エリザベートは安定に優しく笑うだけだった。


 「そろそろ、行きましょうか。これ以上時間を喰わせては迷惑ですからね。ホシさん、サナさんとルナさんも、みんなで大富豪やりましょう」


 「やる!やる!やる!」

 「だいふごー!だいふごー!」


 こうしてエリザベートたちと分かれた。ここにはアレックス、零、ハチ、タマ、そして忠也がいる。このメンバーでスチュワートの元へと向かう事になった。


 



 そして一行は、スチュワートのいる軍の兵舎に着いた。


 西洋甲冑を着た人たちがトレーニングに励んでいる。そこの中で軍服を身に纏い指導をしている人物がいる、スチュワートだ。


 「ほい次、腕立て二百な、はいいーち、にー」


 「ひいいいぃぃ」

 「駄目だーーーもたねー!」


 「おいおいしっかりしろ新米ども。俺もやるから俺より遅れたら、追加で五十な、はいいーち・・・」


 どうやら結構なスパルタな指導らしい、ほとんどの人物は音を上げている。だがその中で一人だけ平然した表情でスチュワートのメニューをこなす人物が一人、ビーンだ。


 「九十八!九十九!」


 「おー・・・流石ビーンさん、もうあんなに」 

 「だけどスチュワート隊長も速ぇ」


 いつの間にか、ビーンとスチュワート、どちらが先に腕立て二百回を終わらせられるかの勝負になっていた。


 「はいにひゃーく」

 「二百!!だー!!負けた!」

 

 ギリギリだったが、スチュワートの勝ちだった。ビーンは地面に転がり悔しがった。そしてその目線の先にアレックスたちを発見した。


 「あ、たいちょー!アレックス様来ましたよー」


 「あぁ、もう来たか。おーい、俺は少し話があるかんな、腕立て腹筋それぞれ二百五十ちゃんとやっとけよ」


 『あいさー!』


 スチュワートは部下に指示しアレックスたちの元に来た。


 「おうわりぃ、もうこんな時間だったんだな、会議室は押さえてあっから、そこで話そう」


 



 そしてスチュワートの案内で兵舎にある会議室に向かった。


 「さてと・・・アマナ」


 スチュワートは少しわざとらしく零を呼んだ。


 「さっそくだが、例の事件についてだ、青薔薇は明日行われるゾロアス家主催のパーティの最中に現れるはずだ。そしてそのタイミングは、これはまだ憶測でしかないが、依頼主がマリリンだとするなら、マリリンが舞台に立った時だろう、そのタイミングで奴は現れる、そこまでは分かるか?」


 「あぁ」

 「それしかないだろうしね」


 ここまでは大方予想は出来ていた。それはここにいる全員だ。


 「だが問題は青薔薇を語る存在だ。奴の狙いはあの双子のはず、何故あの子どもを狙うのかは見当もつかねぇが、何か重要な事なんだろうぜ。


 奴としてはマリリンの件で、あんさんらを分断させ、その隙に子どもたちを手に入れるという事が目的になる」


 「うん、だからそれを阻止するため私が動いたんだ。彼女たちの護衛の為にね。そして君たちと一緒に青薔薇を止めようと思ったんだ」


 アレックスがここに急遽来た理由は、警備をより厳重にさせ青薔薇からマリリンを守る事、そして自分自身がパーティに出席することで抑止力となり、首謀者に簡単に行動させないようにするためだ。


 「成程な・・・分かったぜ。だったらハチ、お前はホシたちの護衛を頼む。そして俺とタマとチュウちゃんで明日のパーティに向かう、いいか?」


 「はい兄貴、必ず守ります」

 「俺の方も、必ず救って見せますよ」

 「おれもがんばる!」


 零の指示にそれぞれ決意を抱いた。


 「よし、だったら作戦を言おうか、ホシさんの方はいつ何が起こるか分からないから、私の部下に常に監視をするように言ってある。ハチさんはホシさんたちと一緒にいてあげて下さい。


 次にパーティの方ですが、出来る事なら今のうちに青薔薇を捕らえてパーティそのものを危険に晒す真似はしたくありません。ご協力、願えますか?」


 アレックスは零に今から行動を起こすように提案した。


 「そうだな、それが一番危険度が低くなりそうだ、それでも命を賭ける事にはなりそうだがな。いいぜアレックスさん、それで行こう。あんたを信じるぜ」


 零はそれを承認した。零はアレックスを信用したのだ。以前ゾロアスに協力を仰がれたときには零は彼らを僅かながら疑い、別行動での協力する形をとった。


 だが、今回のアレックスの提案に共に協力すると決めたのは、アレックスの熱い意志を零は感じ取ったからだ。


 アレックスは自分の為には行動しない、常に周りが平穏無事に暮らせるかを第一に考えている。その為に自分の身を削る事を厭わないのがアレックスだ。零はそのアレックスの決意を昨日と今日の付き合いで感じ取った。


 「そうか、私の事を信用してくれてありがとう。だったら、ここから先は国家機密だ。それを君たちに伝えよう。


 ・・・私には独自に組織した諜報部隊がある。私を含めほんの僅かしかいない、スチュワートもその一人だ。組織の目的はただ一つ。国家転覆を目論む一派の正体を暴く事。


 君たちも睨んでいる様に、一連の事件は繋がっている。全てはあの双子の姉妹を入手する為に仕組まれた事なんだ。何年も前からね。それを主導しているのが私たちが追っている一派なんだ」


 「そういう事だったんですか・・・でも、なんでそんな周りくどい方法をとっているのですか?あの子たちを手に入れたいのなら、力ずくでもいいんじゃ?」


 タマはごく普通の質問をした。だが、そこが最も重要なのであった。


 「それはホシさんが自分の意志であの子たちを手放す必要があるからなんだと思う。そしてあの子たちが自分の意志でホシさんの元を去る必要があるんじゃないかと踏んでいるんだ」


 「今の言い方だと、そこまではやはり確証はないって事だよな。だが、サナとルナの正体が何なのか、大方の予測はついてるって事か?そういう風にも聞こえたぜ」


 零はアレックスたちが、既にサナとルナが狙われている理由を予測出来ていると悟った。


 「確証はまだ無いけどね、あの子たちは恐らく・・・」


 「王子!!!」


 アレックスが答えを出そうとしたその前に、一人の兵士が勢いよく部屋に入って来た。


 「おい、今は重要な話をしてる最中だ。よっぽどの事じゃなきゃぶっとばすぜぇ」


 スチュワートはゆっくり手の関節を鳴らした。


 「ひぃぃっ!!じゃないです!アレックス王子!明日のパーティ出席を取りやめをお願いしたいんです!!」


 「ん?どういう意味だい?」


 兵士のこのタイミングの登場で、大方の予想は当たっていると言っていた。


 「実は、王子にも殺害予告が届いたんです!青薔薇から!」


 「そうか・・・」


 アレックスは落ち着いた受け答えした。


 「むこうも動いてるって訳だよねー。でも、あんちょく過ぎない?」


 忠也はこの予告状の不可解な点に真っ先に気が付いた。


 「そうだねチュウヤ君。青薔薇が私を殺す為に動く訳がないんだ。絶対に予告状も出すことはしないしね。まさか・・・青薔薇の代わりを務めれる奴が向こうにはいると言っているのか?マリリンちゃんを殺すのは本物ではなく、偽物・・・」


 アレックスがこの結論に至った時、周りは一気に凍り付いた。


 「こいつぁ、してやられたな。俺たちは青薔薇を上に見過ぎたあまり、動くのは本物しかいねぇって考えちまってたんだ。偽物がいるのなら殺害に動くタイミングは、分かんねぇぜ・・・」


 スチュワートは冷静に語っているが、その額には汗が出ていた。


 「やべぇよ、アレックスさん!今すぐ行かないと!」


 タマは今すぐにでもこの場所を出て向かおうとした。


 「タマ待て!勝手に行動するんじゃねぇ!」


 零は声を上げてタマを制止させた。こうでもしない限りタマは突っ走りそうだったからだ。


 「す、すいませんアニキ」


 「アレックスさん、青薔薇は依頼には忠実か?期日を早くするなんてことはしねぇよな」


 零はアレックスに質問した。青薔薇がプロならば、自分の仕事には誇りを持っているはずと考えたのだ。


 「うん、彼は依頼主の要望は絶対にこなす。どんなに理不尽になる状況でもね。それがどうかしたのかい?」


 アレックスは質問に答えたが、零の真意までは伝わらなかった。


 「相変わらず、お前は馬鹿だなアレックスよぉ。青薔薇は依頼に忠実って事は裏を返せば、その期日までは標的は無事であるってことだ。俺たちの睨むように本物が行動を開始するのが明日ならば、その間は逆にマリリンちゃんを守る存在になり得るって事だ。


 偽物はそんな事は関係ない、別の目的があるかんな。俺たちは今、青薔薇に助けられている状況ってなわけだ。どちらにせよ、今すぐ行動は起こすのが一番だと俺は思うぜアマナ、青薔薇も俺たちの敵なんだかんな」


 スチュワートは零の考えを代弁しただけでなく、更には行動を促した。


 「スチュワート、あんた少しいやみな奴だと言われねぇか?」


 「まぁな、俺はひねくれもんだ」


 「はっ・・・若干ムカつくな。


 アレックスさん、俺の、俺たちの考えは決まった。偽物を捕らえる・・・本物もな」


 「そうだね、ホシさんたちには部下を通して上手く言っておくよ。


 じゃあ、マリリン ゾロアス救出作戦、作戦変更だけど、開始と行きましょうか!!」


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