真夏
珍しく少しだけ長いです
あまりの暑さにアイスを求めてコンビニへ行ってきたが、この暑さなら行かない方が良かった気もする。
でもアイスが食べたかったから仕方ない。
それにしても、蝉の鳴き声を聞くと暑さが増す気がするのは何故だろう。
あぁ、暑苦しい。
近道のために公園を横切ることにした。
少しでも暑さから逃れたくて日陰になっているベンチの側を通る。
「今日は何して遊ぶの? 」
「えっと、何しよっか」
隣のベンチに座る女の子たちがそんな会話をしていて、女の子たちの近くには鬼灯がひっそりと生えていた。
今度久しぶりにほおずき笛でも作ってみようか。
この子たちは10歳くらいかな。
きっとほおずき笛なんて知らないのだろう。
そう思うとなんだか少し寂しい。
まだ女の子たちは何をするか悩んでいるようだったからつい声をかけてしまった。
「ねぇ」
「えっ、あ、はい! 」
ポニーテールをして水色のTシャツとデニムのスカートを穿いているボーイッシュな女の子が驚いたように答えた。
そりゃそうだろう。
急に知らない大人に声をかけられたら戸惑うし、驚く。
もう一人の女の子は困ったようにきょろきょろしている。
淡いピンクのワンピースを着て髪の毛を下ろして可愛らしい格好だ。
とりあえず声をかけてしまったので提案してみるしかない。
「あのさ、ほおずき笛っていうの作ってみない? そこにある赤い実を使うやつなんだけど」
「ほおずき? 」
「楽しそう! やってみたい! 」
ワンピースの子が目を輝かせて乗ってきた。
水色の子も不安そうだけどやってみたそうではあるし、いいかな。
「まずそこの赤い実を開いてみて? 中に丸いトマトみたいなものがあるでしょう? 」
そう言いながら鬼灯を渡した。
「わぁ、ほんとだ」
「食べれるの? 」
可愛いなぁ、私もおばあちゃんから教わるときはこんな感じだったのだろうか。
「食べれないよー。じゃあこれを取らないように優しく揉んでね。傷つけないように気をつけて」
懐かしいなぁ、久しぶりだけど上手に出来るだろうか…
「取っちゃ駄目なのー? 」
二人とも不思議そうに実を触りながら首を傾げている。
「取るのは後でのお楽しみなんだよ」
そこまでいくのが難しいんだけど。
「分かった、優しくだよね」
私も一緒にやりながら二人に教える。
本当に懐かしい、これ中々難しいんだよねー。
それにしても蝉がうるさいなぁ
「まだー? 」
二人とも早く次にいきたいようだけどまだまだなんだよねぇ。
「残念、まだまだ揉んでね。中から汁が出て種が見えるまでだよ」
それを聞いた二人は子供特有の集中力で真剣に揉み始めた。
しばらくして私の鬼灯から汁が出てきて、種が見えてきた。
「お姉さーん、見えてきたよ」
「私のも! 」
どうやら二人の鬼灯も種が見えてきたようだ。
「じゃあ、外そうか。破かないようにそーっとね」
言いながら自分の鬼灯から実を外す。
破かないようにそっと外していく。
二人を見ると二人とも凄く真剣にそっと優しい手付きで頑張っている。
ワンピースの子はちょっと危なげだが問題はないだろう。
「うわぁ、じゅるじゅる! 」
「外れたっ」
二人とも楽しそうにしてくれていて良かった。
「じゃあそれを穴が空いてる方を下にして、舌と下唇で潰しながら鳴らすの。潰れたらそのまま息を吸えば膨らむよ」
これも難しいんだよねぇ
この子たちは出来るかなー。
「鳴ったけど、変な音だよ? いいのー? 」
「私の鳴らない、何で? 」
ワンピースの子はすぐ鳴らせたけど、水色の子はまだ鳴らせてないかー。
これ割と難しいもんね。
「それでいいんだよ、面白い音でしょ? 」
何て言えばいいのかな…
「うん! 面白い! あ、ここをちゃんと抑えれば鳴るよ」
何て言おうか考えていたらワンピースの子が教えてくれるようだ。
「こう? …あ、鳴った! 変な音ー! 」
水色の子も鳴らせたみたいで良かった。
「あっ」
アイス絶対溶けてるよね、残念……
まぁいいか、カップだし。
「お姉さんどうしたの? 」
ずっと笛を吹いていた二人が不思議そうに見上げていた。
「何でもないよー、楽しい? 」
「うんっ」
「楽しいっ」
二人とも本当に楽しそうで良かった。
とりあえず完成したし早く帰ろう、もうすぐ日が暮れちゃう。
「日が暮れるからお姉さん帰るね? 二人は帰らないの? 」
そう言ったら二人は慌てて立ち上がった。
「帰らなきゃ、怒られちゃう! ばいばいっ」
「ありがとうございましたっ」
さて、私も帰るかな。
それにしても本当に蝉うるさい、暑苦しい。
早く帰ろう。
アイスを凍らせなくちゃいけないし、お風呂に入りたい。
お題をくれた方ありがとうございました。