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Prologue

 春の風、僕たちはいつもの屋上で「ゆびきりげんまん」をした……。

 春の風が僕たちを包むように、そして彼女の長くて黒い美しい髪をなびかせた。

 

「一、隠し事はしない」

 彼女は柔らかい唇を動かした。

「ニ、約束は守る」

 彼女が言う、約束事は僕たちが付き合うことでの約束だ。僕たちは小指を絡めあったままだ。

「三、お互い想いあう」

 そして最後の約束。僕も彼女に合わせてそっと口を動かす。


『どんなに離れていても心は一つ、だから相手の事は忘れないで』

 

 僕は彼女に見つめられている事に気がついた。その彼女の潤った優しい瞳がなんとも言えないくらいに輝いていた。この柔らかくて白い手が好きだった。そして彼女は「生き物」を大切にしていた。そんな彼女の全部が愛しい。

「薫……」

 彼女は僕の名前を優しく呼んだ。僕は返事をしない代わりに、眉毛を少し上に上げ、首を右へと傾けた。

「約束……守ってね?」

 彼女は珍しく、ニカッと歯を見せ笑ってくれた。いつもなら微笑むだけだった。

 僕は「うん」と頷いた。


 そしてまた、春の風に吹かれながら僕は一人この屋上で少しだけ早い桜の描かれた画用紙を手に持ちながら、街を見下ろしていた。

「ばいばい……美咲……」

 僕は流れ出てきそうになる涙を堪えようと、太陽が浮かんでいる大空へと顔を上げた。その時、視界に入った小さな鳥が懸命に翼を広げ、あっという間に僕の上を通り過ぎてしまった。

 あの鳥のように空を飛べたら良いのにな……。


 ……そして僕は目を瞑り、視界が真っ暗になったのを確認したのだった……。





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