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「リリ、俺の可愛いリリ。どうしたんだ、そんなに目を赤くして」
「もしかして誰かにいじめられたの?お義姉ちゃんがすぐにそいつのこと〆てきてあげるから誰にいじめられたのか教えて」
朝起きて、ご飯を食べようとリビングへ向かったリリのもとへ兄と義姉が飛んできた。
「ううん、なんでもないの。大丈夫」
心配させちゃったのか、悪いことしたな。昨日は結構遅くまで泣いていたからな。
「ねえ、リリ本当に大丈夫なの?」
「うん、ありがとう。お兄ちゃん、お義姉ちゃん」
もうルシウスのことは諦めがついたから大丈夫だよ、とはシスコンの兄夫婦には口が裂けても言えない。
「まあ、リリがそういうなら」
リリはさっそく1週間後の出発に向けて準備を始めた。
両親には早めに伝えなくてはならない。伝えるにはまず都市に出た後の計画を立てなければ・・・
「さてと、うちの村から都市までは馬車に乗せて行ってもらうとして問題はどこに住むかよね」
リリたちの村ではほとんどの人たちが農業を営んでいるため外に働きに行くことがほぼない。都市に行くための馬車だって野菜の出荷の馬車くらいしか出ていないのだ。
そこでリリは都市から嫁に来た酒場のおばさんに話を聞くことにした。酒場といってもこの村では定食屋も兼ねているので昔からよく知っているのだ。
「ねえ、おばさん」
「なんだい、リリちゃん」
「都市ってどんなとこ?」
「都市はこの村よりもずーっと広くて人もたくさんいていろんなお店があるとこだよ」
「宿屋もたくさんあるの?」
「もちろんさ。なんだいリリちゃん、新婚旅行でも行くのかね?」
「ううん、ただ聞いてみただけよ」
酒場のおばさんは、にやにやしながら聞いてきたけど私にはそんな
都市というぐらいだ。それはすごいところなのだろう。人もお店もたくさんあるということは職には困らなそうだ。
今晩にでも両親に話そう、リリは決心した。
夜になり、両親に都市行きを話そうと思ったとき兄夫婦がいつもよりも早い時間に帰宅した。
都市行きはギリギリまで兄夫婦には黙っていようと思っていたリリにとっては最悪のタイミングだった。
「おい、リリ。兄ちゃんはお前を嫁に出すことをやめた。リリ、お前はずっと兄ちゃん達と一緒に暮らすんだよ」
「そうよ、リリちゃん。これからも私たちと一緒に暮らしましょう」
「お兄ちゃん、お義姉ちゃんいきなりどうしたの?」
「「あんなやつなんかにリリ(ちゃん)は渡さない」」
2人が何を言っているのかリリにはよく分からなかったが私は嫁に出なくてもいいということだけは分かった。
リリが都市に行く理由は、村に嫁ぎ先がないからだ。兄と義姉がいいというなら、ここにいたい。というか、兄夫婦の中では私が一緒に暮らすことは決定事項なのだろう。
「そっか」
リリの誕生日まで残り1日