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二本の糸

作者: 山名シン

人生とは二本の糸で出来ている。

初めの糸は勿論出産の時。

「生まれる」という目的のみがそこにはある。

それこそが初めの原始の糸、「生の糸」になる、最初の運命となる。

そうして、「生まれた」後の世界から生の糸は二つに別れる。

「生の糸」と「死の糸」の二本に別れていく。

死の糸というのは迷いの糸、常に揺れ動き枝分かれしていく、人生に置いての最も重要な運命となる。

その目的は「死」ただ一つ。

逆に生の糸は、不動の糸。

常に「生きる」という目的にそって、真っ直ぐ突き進んでいく。

どれ程迷おうと死が近付いていようと、最後の最後まで生きる事は変わらない。

人生とはこれらの生と死、両方の糸が複雑に絡み合って成り立つ運命が折り重なり一つの「衣服」を作る。

つまり人生とは衣服の事である。

そして、この衣服を着飾るのが、私達「人間」である。

人間が何故大事な所を隠し、自分を大きく見せようとするのか、それが衣服にある。

衣服は権威そのものだ。

権威はその人の生きた証になる。

だから大きく見せようと必死になる。

そして、また新たな糸を紡ぐ。

それが、子孫を残す事だ。

そして子孫がまた新たな運命の糸を紡いでいく。

これが歴史になる。

人生は、一人の人間が裸の状態を打破すべく、己の手で小さな糸を紡いでいく。

その連続だ。

「生きる」という目的を見失わないように、真っ直ぐ不動の運命の「生の糸」が己の存在を証明させていく。

「死ぬ」という絶対条件に向けて日々迷いながら道を外し外され、また新たな道を紡ぎだしていく。

別れに別れた糸が最終的に絡み合い一つの衣服を完成させる。

そして出来た衣服を着飾る。

そうしてやっと一人の人間の一生が終わる。

権威が決まる。

生きた証を残せる。

人によって差異はあれど皆各々の人生を歩む。

また、紡ぎだされたそれらの衣服は次世代へと引き継がれていき、また新たな糸が生まれる。

次の世代もまた先の世代同様の、あるいは全く異なる運命を辿り、「歴史を紡ぐ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 生と死の糸。シンプルな作りの中に、幾億もの人生が悩み、苦しみ、また生きようともがく様がタペストリーのように彩られていくという視点が、納得させられました。 [一言] 糸が生と死だけではなくて…
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