こうして僕に友達が出来た?
更新です!
今日、僕は登校していて気付いたことがある。
それは学校に向かう度に『うわっ鳥人間がいるよ』とか『鶏肉が居るぞ』とか……何だろう。察しはつくけど分かりたくない真実だ。
つまり、咲夜先生が昨日ピュアなハートが疼いてしまったが為に、僕に『鶏肉』のレッテルが貼られてしまったと言う簡単な理屈だ。
入学して今日で三日目だと言うのに最早噂の人柱と化してしまうとは、やはり僕は人間ではないようだ。妖怪人間的な物なのだろうか。
そんな朝から窶れた感じで学校に着き、教室の自分の席に座り音楽プレーヤーで音楽をたしなんでいた時だ。
何時来たのだろうか。咲夜先生が徐に僕の耳からヘッドホンを取り上げた。
「黄塚、おはよう。今日で三日目だ。話す気になったか?」
僕から取り上げたヘッドホンを片手にぶら下げ腕を組み、朝から悲しくなるような挨拶が聞こえた。
「先生、おはようございます。それと朝早くから事情聴取するの止めてくれませんか?」
「事情聴取?私は貴様の鶏肉事件の話を聞きたくて訊いたのだが………」
小首を傾げて先生の細いポニーテールで揺れる。
本人の口からは『鶏肉事件』とゆう単語が飛び出ているのに、もしかしたら先生はピュアであるが為に事情聴取と言う言葉を知らないのでは?等と考えてしまう。
「先生、事情聴取ってなんですか?」
僕は先生を試してみた。
先生は知的でクールと言う属性を持った容姿端麗な女性なのだから、まともな答えが来るだろう。
「む?事情聴取とは犯人の事情を聴く事だぞ?」
事情聴取をちゃんと知っていたみたいだ。
僕は晴れた笑顔で先生に応えた。
「疑問が解決しましたありがとうございます。先生」
「いや、気持ち悪い生徒でも疑問や問題を解決するのが私の信念だから構わんさ」
流石は咲夜先生だ。
三日目にして僕に罵声を浴びさせてくる。
と思っていたら先生の話は続いていた。
「しかしな?犯人だってな。やりたくてやったわけじゃない筈だぞ?犯人だって優しかったりする筈だ。うん」
急にピュアな事を言い始めちゃったよ。しかも犯人に頷いて共感しちゃったよおい。
やはり先生は先生だ。
ピュアなハートを持ったSっ気のある先生だった。
後は時間を確認してくれれば完璧だ。
「先生?あの……もう一ついいですか?」
「む?なんだ。言ってみろ」
先生は得意気に無い胸を主張してきた。
「時間はいいんですか?」
先生はその言葉に『む?時間……?」と悩ましげな顔をして腕時計を見た。
現時刻。八時十分。
既に周りに居た他の生徒の担任は見当たらず。咲夜先生は真っ白な顔をした。
「なっ……なな!?か、会議に遅刻してしまう!!なぜ早く教えなかったんだ!!」
そう言って咲夜先生は急いで教室を出て会議室に方へと向かって行った。
僕はそれを見て溜め息を吐きつつ鞄から本を取り出し、本を開いて題名を黙読する。『ヘルシーで簡単!鶏肉料理革命!!』
………どうやら僕は親の手によって調理されるらしい。
それよりもだ。何故僕の鞄に料理本が紛れてるんだよ!!
これは僕に対する当て付けなのか!?
今学期のテストが悪かったら僕はカラッと油で揚げられるの!?
「ほぇ~、それはまた美味しそうっすね~」
「まったくだよ!!………へっ!?」
僕の心の叫びが本物の叫びになっていたのか、僕の机の頬杖をついて料理本を眺める少女が居た。
その少女は赤みがかった髪をサイドで結んで鼻の頭には絆創膏を付けて指定ジャージの格好だ。まさに体育会系。
「あの……もう良いすっか?鳥さん」
痺れを切らした彼女はズイッと僕に顔を近づけてきた。
「うわっ!き、君だれ!?」
「人に名を訊くときはまず自分から名乗れっ!すよ?」
彼女は人差し指を立てて突き出してきた。
確かに彼女は正論だ。
しかしそれ以前に顔近い。
少し動揺しながらも僕は名乗った。
「ぼ、僕の名前は黄塚荷稀。よろしく」
しかし名乗ったのはいいが、当の本人は難しそうな顔をしていた。
「ど、どうかした?」
「へ?あ、あぁ名前に鳥って付いてないんだなぁって思っただけっす」
あ、君は僕の事を完全に鳥の妖怪的な感じで捉えていたんだね。
誤った誤解を解かなくては。
「僕は普通に人間だよ。鶏肉でもないし鳥でもないよ」
「いや、馬鹿な私でもそれは分かるっす」
僕の弁論が軽く蹴られた。
それはそれで寂しいが彼女は誤解だったことを分かってくれてるみたいで安心した。
「ところで……君の名前は?」
まだ名前を聞いていなかったので恐る恐る訊くと、
「人に名を訊くときはまず自分から名乗れっ!……って、言ってたっすね。荷稀君」
彼女はたははと笑った。
僕も彼女につられて少し吹いた。
そのマイペースで人当たりが良い小動物的な感じが僕にはとても合う性格なのかもしれない。
今まで家族や先生以外とあまり喋らなかった僕としてはこの高校で初めての友達になるかも知れない。
すると彼女は笑顔で自己紹介してくれた。
「私は鷲見原蒼子っす!部活はバスケ部に入ろうと思ってるっす。これから三年間よろしくっす!荷稀君!」
「あぁ!こちらこそよろしく!鷲見原」
「ソウでいいっすよ!中学でもそう呼ばれてたっすから」
「あぁ分かったよ。ソウ!」
高校に入学してから初めての友達が出来た。
鷲見原蒼子。マイペースで元気で運動神経も良さそうな女子だ。
こうして高校三日目が幕を―
「勝手に終わらすな貴様」
閉じようとしたが帰りのHRで目の前には顰めっ面の咲夜先生が居た。
「何でですか?話し的にはこれで幕を閉じた方がいい気がするんですけど………」
「貴様に連絡だ。これから三年間、貴様の家の居候になることになった」
「あ、分かりまし……た?えっ?居候?何処に?」
さらさらと話が進むところだった。
先生が居候ってもしかして………
「貴様の母上が管理しているアパートだ。それもお前の部屋の隣にな」
「な、なんだってぇぇぇ!!?」
今日、僕の部屋の隣にピュアなハートを持った先生が入室することになった。
この学校のルールで担任は会議以外は生徒と共に生活をしなくてはならないらしい。
「まったくお前の根性を螺切ってやる」
嫌そうな顔で宣言された。
「先生、螺切るのは止めましょう?」
今回は早々に新キャラを出しました!!
次回は荷稀と咲夜先生の休日の話です!!