担任がピュア過ぎる?
手直ししました
新学期の春。
何もかもが新鮮で夢が溢れ、周りの環境も著しく変わる時期。
それが入学したての一年生なら尚更だ。
しかし、緊張し動揺もしてしまうのもこれまた事実。
例えば新学期が始まり、ぞろぞろと徐々に生徒が集まりつつある教室は入試試験より緊張する。
『友達が出来るのだろうか』とか『ボッチは嫌だ』とか『逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ』と自分に暗示を掛ける人だって居る筈だ。………たぶん。
そんな考えがあるならメール等をお待ちしてます。
友達になってあげますよ。
そして仲良く生きていきましょう。この世界は生きづらいけど、仲良くすれば辛いテストだって何とかなります!!
これが僕の新学期についての作文です。
あっ、メールの宛先はWW.……。
……
………
一年一組の教室で担任の咲夜先生が僕こと黄塚荷稀の作文を額に青筋を立て、メールの宛先を読まれている途中で清々しく作文が破かれる。
「……貴様。これは何だ」
「何だと言われましても……作文ですよ?」
さらに目の前の作文が細かく千切られ、風に舞う。
「もう一回聞くぞ。黄塚、これは何だ?」
「いやだから作文だって言ってるじゃないぎゃっ!?」
咲夜先生の手刀が僕の首にジャストミートしてその場にうずくまり、咳き込んだ。
「ごほっ、ごほっ……な、何するんですか!今の時代に暴力を挙げる何てふざけてますよ!!」
「ふざけているのは貴様だ!!」
咲夜先生は怒鳴りながら僕の制服の襟を掴み、無理矢理立ち上がらせる。
立ち上がるどころか浮いている。
「黄塚……お前は何故ラジオの原稿みたいな作文を書いているんだ。貴様はラジオの作家になりたいのか?なりたいなら私は手伝うぞ……?」
先生は協力的な笑顔なのだろうしているつもりなのだろうが、それとは真逆でその眼鏡の奥から先生の切れ長で鋭い目が僕に向けられている。
先生は容姿端麗で、黒髪で後ろの髪を束ねて細いポニーテールが可憐に動き、縁無しの眼鏡が特徴的な僕専属の担任だ。
なぜ僕専属なのかは僕が通っているこの青嵐高校の独特なルールがあるからだ。
そのルールとは生徒一人に担任が一人付く、青嵐は生徒の人数よりも先生の方が多い。
聞けば全校生徒三百人に対して先生の人数は三百五十人にもなる。
そして今は放課後の教室で呆れた顔をした咲夜先生が僕の襟を掴み挙げながら話す。
「黄塚。貴様は何故そんなに人とは違う生き方をするんだ」
「先生、それは僕が人間じゃないと言っているんですか?」
「まぁ確かに君は人間じゃないのかもしれんが、それは今更の話だろう?」
まだ二日しか会っていないのにもう先生の中では僕は妖怪人間的な物と化しているんですね。
「この間だって貴様は教室で私が見てる前でだ。貴様は窓に向かって『あぁ……鶏肉になりたい』と……」
「先生、僕は鶏肉に何てなりたくありませんし。あの時僕は鳥になりたいって言ったんですよ?……先生の聞き間違いって凄いですね」
あの時は外に鳥が空高く羽ばたいていたから言っただけで、
「なぜ鶏肉になりたいんだ?」
「あ、ガン無視ですか?」
逆に生徒が鶏肉になりたいんだって言って真面目になる先生は咲夜先生しか僕は知らない。
咲夜先生は見た目は知的でクールだがピュアなのだ。
そんなプラプラと足の付かない話が先生と僕の間で続く。
あれ?今僕は宙に浮いていて足をプラプラ。先生と僕の話も脚が着いていない……。我ながら上手いな。
「聞いているのか?貴様は何故鶏肉になりたいんだ?」
咲夜先生が神妙な顔で僕に疑問を投げ掛ける。
「まだ続けるんですか?それよりもそろそろ降ろしてくれませんか?何気に辛いんですよ?」
この状態、力を抜くと首が絞まり掛ける。
まったく華奢な体をしているのに先生は何でこんなに力持ち何だよ。
しかし僕の気持ちとは裏腹にピュアな先生は、
「何故だ!何故鶏肉になりたいんだ!!」
もはや本気にしている。
「だからなりたいなんて言ってません!!」
その後も先生のピュアなハートは治まる事を知らず。何時しか作文の話はきっぱりと鶏肉によって先生の頭から消えたらしく、学校を出てからも背後で叫ばれた。
「貴様ぁあ!!何故鶏肉になりたいんだぁぁぁあ!!」
後ろで叫ばれながらも僕の入学してから二日目の学校が終わった。
投稿して初っぱな脱字がありました。
すいません