第四話
注意:こちらはSS速報VIPに書き込んだ内容をまとめた物となっています。
作者=ゆうきゆい(仮)=>>1=◆rMzHEl9LA2です。
西崎のメールを見てから俺は問題解決の方法をずっと考えていたが思いつかず、気がつけば朝の8時半になっていた。
待ち合わせ時間は9時であり、俺の家から駅までは歩いて15分ほどかかる距離にあるので今から身支度をし、家を出ないと間に合わない計算になる。
仕方が無いので解決策は移動しながら考えることにして、俺は早々に身支度を済ませると食パンを一枚咥えて、外へと出ると駅を目指して歩き出す。
歩きながら対策を考えるが、徹夜明けの頭では上手く思考が回らず、結局、何も思いつかないまま目的地に到着する。
時計を見ると時間は待ち合わせの15分前――考え事をしていれば、あっという間だろう。そして、集合場所に向かっているとすでに誰かが待っていることに気がつく。
一体、誰だろうか? そう、考えながら近づくとその人物が俺には黒髪ツインテール?をした小柄な人物に見えた。
はっきりとはわからないが……まさか、あれはあずにゃんではないだろうか? 俺がそう想ってしまうほど、遠くから見るとそっくりだった。
もしかしたら、寝不足と疲労が生み出した目の錯覚かもしれない。それでも、俺はもしもあずにゃんだったら……という可能信じて走り出す。
あずにゃんだったら、仲良くなってりっちゃんを紹介してもらおう。そんな想いに胸と頭をトキメキさせながら近づいていく。
そして、その人物を近くでしっかりと確認した俺の感想は――
「サイドテール……だと……!?」
――まさに『会いたかったのはこれじゃなーい!!』だった。
***
俺にとってサイドテールに進化したコレジャナイあずにゃんの絶妙な偽者感は『サイドテールによるドでかいインパクト』、略してサードインパクトな衝撃だった。
生命が吹き飛んで液体が吹き出す代わりに眠気と頭のダルさが吹き飛んで、あまりの似てるけど何か違う感に汗が噴出した。
そんな感じで思考停止していた俺に「あのー」とコレジャナイあずにゃんが声をかけてくる。
コレジャナイあずにゃんに視線を向けて「何か?」とだけ聞くとコレジャナイあずにゃんが落ち着きのない感じで言った。
「……えっと、その、ど、どうですか? この髪型、やっぱり似合いませんか?」
サイドテールはコレジャナイあずにゃんに似合ってるかどうかで言えば似合っているだろう。
子供っぽい見た目にサイドテールがよくマッチしていて、はっきり言ってよく似合ってるし。
そして、よく似てるんだが……なんか、そう、何か違う、コレジャナイ感があった。
俺が黙っているとコレジャナイあずにゃんは不安そうにおどおどしている。
そんなコレジャナイあずにゃん、略してコレにゃんを誰かが見たらあらぬ誤解を生みそうなので、俺はとりあえず「キミによく似合って、可愛いよ」とだけ言っておいた。
テンプレ的お世辞だったのだが、コレにゃんはお世辞を真に受けるタイプらしく、「やりました!」とすごく嬉しそうな顔をして言った。
ただ、一度二度顔を合わせた程度の知り合いのお世辞でそんなに喜ぶのだから、好きな人間に褒められたら有頂天になりそうだな……。
俺はコレにゃんが原因で怒りが有頂天になりそうなのだが……。
「あの、ところでペイジ先輩」
「ペイジ? 何故にペイジ?」
「えっ? あだ名ですよね?」
不思議そうに首をかしげて、コレにゃんはそう言った。
そんなあだ名はありえません! 一体、何処の誰だ……そんな、適当なことを言ったやつは……。
何故、俺のあだ名がペイジになるんだ……まったく……。
名付けた人間の意味不明な思考を読み取ろうと考える。
俺の名がペイジ・ジョーンズ・プラン……俺がそう名乗ったんだった。
ペイジがあだ名って、俺はどこの外国人だ……生まれも育ちも日本な俺は生粋の日本人である。
今後もペイジ先輩、ペイジ先輩と呼ばれ続けたら、怪しげなあだ名が学校中に広まりかねない。
とりあえず、コレにゃんの勘違いを正す必要があるみたいだ。
「……それ、冗談だから」
「知ってますよ? 先輩、冗談が好きな人みたいなので、私も合わせてみただけです」
コレにゃんは舌をチロリと出して可愛らしくおどけてそう言った。
わかりにくい冗談はやめて欲しいものである。
とりあえず、コレにゃんは冗談が苦手だということが理解した。
「ところで、先輩の名前って?」
コレにゃんが俺の顔を下から見上げるようにして名前を聞いてくる。
名前ねぇ……そういえば、何度か聞かれたが、忙しくてまともに答えるタイミングが無かったな。
基本的にコレにゃんと会うタイミングは忙しい時ばかりだからな……。
隠してる訳でもないので答えることにする。
「そうだな、俺の名前だが――」
「おーい!」
名前を名乗ろうとした所で後ろから声が聞こえた。
振り向いてみると、こちらに向かって走ってくる河野純一の姿が見えた。
河野純一は息を切らしながら、こちらに来ると言った。
「悪いな、遅刻した!」
「遅刻?」
そう言われて、時計を見てみて気がつく。時計の針は9時5分を示していた。
どうやら、いつの間にか待ち合わせの時間を過ぎていたようである。
キョロキョロと周りを確認していたコレにゃんが口を開く。
「七海は遅刻みたいです」
「遅刻?」
「はい、あの子、朝起きるのが苦手で……私もここに来る前に起こしてから来たのですが、遅刻したことから考えると二度寝したみたいです」
コレにゃんは申し訳なさそうにそう言うと「七海に電話します」と言って電話を掛け始める。
それから10分ぐらいしてから、新島七海が死にそうなぐらい疲れきった感じで、栗色のセミロングヘアを揺らしながら走って来た。
待ち合わせの場所まで来た、新島七海は座り込むとはぁはぁと疲れきっている。
そんな、新島七海を見たコレにゃんは言った。
「大遅刻だよ、七海?」
「み、皆様方、ま、誠に申し訳ないでありまする……あぁ、うぅ、キツイよぉ~」
「もう、大丈夫? はい、これ飲んで」
「あ、あぁちゃん、あ、ありがとう~」
新島七海はそう言うと、コレにゃんから渡された水筒のお茶を飲み始める。
ふと、疑問に思ったことを聞く。
「あーちゃん?」
「私のあだ名です。相沢梓で苗字の最初も名前の最初も『あ』で始まるから略して『あぁちゃん』なんです」
「字で書くと大きな『あ』に小さな『ぁ』で『あぁちゃん』! ちなみに先輩方、わたしが名付け親です!」
お茶パワーで復活した新島七海はやや自慢げにそう答えた。
まぁ、偽者のあだ名はそんものだろうな……。
新島七海はまだ自慢げにコレにゃんのあだ名について語っている。
そろそろ、止めないと延々と語りそうだな、この女は……。
「最初はのばして『あーちゃん』にしようかな?って思ったのですが、やっぱり『あ』を二回続けたくて……で、『ああちゃん』だとRPGの手抜きな名前みたいだったので――」
「それじゃあ、先輩方、七海も復活しましたので、そろそろ行きましょう!」
俺が止めるまでもなく、新島七海によるあだ名の話はコレにゃんによって強引に止められる。
新島七海は不満があるらしく、ぶーぶーとコレにゃんに抗議していた。
コレにゃんは無視して、新島七海に言った。
「七海、買い物リスト持ってるよね? 私、西崎先輩が居なかったから買い物リスト貰って無くて……」
「うん、あるよ!」
新島七海が肩からかけたポシェットからメモを取り出して、「はい、買い物メモ」と言ってコレにゃんに渡す。
コレにゃんは新島七海から買い物メモを受け取るとメモを見る。
「結構な量があるなぁ……」
そう言っていたコレにゃんが何かを閃いたらしく「あっ」っと呟いた後、新島七海に耳打ちで何かを話し始める。
話を聞いている新島七海はうんうんと頷いて話を聞いた後、「いいよー」と返事をした。
そして、コレにゃんは衝撃的な提案を言った。
「分担しましょう!」
「はっ? 分担? 何を?」
思わず俺はそう言った。
「先輩、買い物ですよ。買い物リストみたら結構な量があったので分担しないと丸一日かかっちゃいますよ?」
量が多いのは長い間、一緒に居ることでフラグを建てる作戦なのだから当然である。
だから、本来の計画では三人で少し買った後、俺が途中で離脱し、二人が長い間あっちこっちを回りタイミングよくクレープ屋や映画館に入るように誘導する。
朝から行って昼に帰ってこれるような量だったら擬似デートになる前に終わってしまうし、入れられるイベント量も限られてくる。
阻止するしかない……適当な理由を考えて……。
どうする、俺が今から離脱するか? 駄目だ、普通に不自然だ……。
どうする? どうすればいい?
俺がそんな風に考えていると再び、河野純一の一言によって逃げ道が塞がった。
「そうだな、分担した方が早く終わるから、分担しよう」
またかァァァッ!! 河野ォオオオオオオオオオオオッ!!
賽は投げられた。この時、少しでも方向性を良くする為に行動すべきであった。
しかし、寝不足な俺はそれでも分担を阻止しようと鈍った思考しか出来ない頭で考え続ける。
更なる発言がコレにゃんから発せられるとも知らずに……。
「チーム分けは、私と先輩、河野先輩と七海ね!」
「喜んで!」
「うん、それでいいよ」
コレにゃん、新島七海、河野純一と順々に発言していく。
三対一であり、すでに俺が発言しても意味が無い状態となっていた。
コレにゃんが俺に覆せないことを確認してくる。
「先輩もそれでいいですか?」
「うん、いいよ」
自棄になり、さわやかにコレにゃんの質問に「はい」と答えた。
もうやだ、このメンバー……。
俺は全てを投げ出したい気分の中、コレにゃんに引きずられるように買い物へと連れて行かれるのであった。
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作者=ゆうきゆい(仮)=>>1=◆rMzHEl9LA2です。