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第三話

注意:こちらはSS速報VIPに書き込んだ内容をまとめた物となっています。

作者=ゆうきゆい(仮)=>>1=◆rMzHEl9LA2です。

 ニセあずにゃん襲撃から遡る事、数十分……。

 茜色に染まる放課後の部室で、西崎律は「明日、クラスメイトの男子達と共に買出しに行って欲しい」と言った。

 それを聞いた、西崎律の後輩――相沢梓は座っていたパイプ椅子から立ち上がると少し期待するように言う。

 

「クラスメイトの男子って……もしかして、あの先輩だったりしませんか!?」

 

 あの先輩? どの先輩? などと一瞬考えた律だったが、梓が知っている同じクラスの先輩は新嶋七海の想い人である河野純一ともう一人、梓を助けてくれた先輩しか知らない。

 七海との交渉の際に河野純一の名前は既に出しているので、消去法で梓を助けてくれた先輩の方を言っているのだろう。

 なので、律は「えぇ、そうです」とだけ梓に答えた。何故、梓がそのことを確認したのか意図はわからなかったが……。

 

「そうなんですか……先輩と休日に二人っきりで買出しに……」

 

 なにやら勘違いしながらぶつぶつと呟いている梓を無視して、律はペットボトルのお茶と上司が弁当の時にくれたお菓子をカバンから取り出し、一人でティータイムと洒落込む。

 お茶を一口飲んでから、一息ついたところで七海に再度確認の為に聞いた。

 

「で、行ってくれますか?」

 

「あ、はい。わたしも河野先輩と休日デートが出来るのなら喜んで!」

 

 律の予想通り、河野純一の名前を出す事で買出しの件は二つ返事で了承してくれた。

 七海の買出しの件、上司からの休暇の件、全てが律の思い通りとなった。まさに計画通りである。

 あとは、明日の為の準備を全て行なえば完璧である。

 

「明日の一人旅、楽しみですね……お土産は八つ橋で決まりですね……」

 

「ん? 先輩、何か言いました?」

 

 律は七海の問いに「いえ、ただの独り言です」と言うと、再び、お茶とお菓子を味わい始める。

 と、さっきから立ったまま思考していた梓が口を開く。

 

「あ、あの! 明日、私も行っていいですか?」

 

「……買出しにですか?」

 

 梓は元気よく「はい!」とだけ答える。

 意図はわからないが自分が断ることは話がややっこしいことになりそうなので、律は「彼が了承してくれたら……」という条件で許可した。

 許可が下りるや否や、ものすごいスピードで部室を出て行く梓の後姿を見ながら、適当な理由をつけて、彼が梓が来ることを断ってくれるだろうと考えていた。

 さまざまな要因が相沢梓(恋する乙女)と合わさったことで事態がオカシナ方向に向かうとは知らずに……。

 

 

 ***

 

 

 想定外だった……まさか、ニセあずにゃんが一度関われば追跡者以上にしつこい相手だったとはな……。

 ニセあずにゃんが教室の前に居たことも、ニセあずにゃんが買出しに参加することも想定外だった。

 あれから、何故か何度も俺の名前を聞いてきたので「俺の名はペイジ・ジョーンズ・プラント・ボーンナム」と一人で四人分の血管針攻撃が出来そうなミドルネーム持ち外国人の名前を名乗っておいた。

 名前を聞いた相手が明らかな偽名を名乗れば、それは『お前と友好的になるつもりは無い』という遠まわしな意思表示になるだろう……なるのか?

 まぁ、河野純一が近くに居たあの場では『何か問題が発生してもギャグで済ませられる程度』が限界である。

 あの場で完全な拒絶をすれば、あの河野純一(お節介なお人好し)がこの問題に深く関わりかねない……。

 そうなれば、下手すれば河野純一との仲が悪くなり、組織の任務に影響を与えかねない。

 などと考えている間に自宅に到着したので部屋に入る。

 そして、部屋に入った俺は置いてある机を両手で叩いて言った。

 

「おのれ、ニセあずにゃんめ!!」

 

「おい、隣ィ!! 今、何時だと思ってるッ!!」

 

「はい! すいません!」

 

 ボロアパートの薄い壁の向こうから苦情が来る。

 時刻は午後11時……ニセあずにゃん対策の相談をする為に西崎を探してあちこち彷徨った結果、夜遅くに帰る羽目になった。

 結局、西崎は見つからない、隣の住人に怒られるで踏んだり蹴ったりである。おのれ、ニセあずにゃん!!

 

「と、とにかくだ……西崎にメールして、休日を取り消すしかないだろうな!」

 

 俺は自宅に置き忘れていた携帯を手に取って、メールが二件入っていることに気がつく。

 そういえば、今日の昼休み、西崎が組織から連絡が来たと言っていたな……。

 メールを確認すると、一つは組織からのメール、もう一つは西崎からのメールであった。

 組織からのメールは昼休みに西崎から言われた内容と同じであった。

 そして、もう一件のメール……俺が家に帰ってくる少し前に届いたメールのようだ。

 西崎からのメールを開いて読んでみる。

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 From:西崎律

 

 Sb:明日のイベントについて

 

 お疲れ様です、西崎です。

 買い物リスト及び、デートに関する資料はPCの方に送信してあります。

 明日は頑張ってください。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 西崎らしい用件だけが記述された内容である。

 俺は西崎への返信に『休暇は取り消し』とメールしようとして、まだ、続きがあることに気がつく。

 携帯のキーを操作して表示内容を下に進めていく。

 結構な余白を入れているらしく、下げても下げても、真っ白な画面しか表示されない。

 俺は焦る気持ちを押さえながらひたすらに下げていく。

 そして、ついに余白に隠された内容が表示されるのであった。

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 P.S.

 せっかくの休日なので、前々から計画していた旅行に行ってきます。

 今は京都に向かう夜行バスに乗っているところです。

 お土産は八つ橋で問題ありませんか?

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 全てを悟った俺の手から携帯が落ちる。

 そして、膝と手をついて落ちている携帯をのぞく様な形になる。

 俺の格好を形で表せばorz(オーアールゼット)、人生二度目のorz(オーアールゼット)である。

 簡単に言えば俺は絶望した……。

 

 

 ***

 

 

 次の日、相沢梓は待ち合わせ場所である駅前へとやってきた。

 時計を見るとまだ、待ち合わせまで30分ほどある。30分も早く着すぎたことを理解して、恥ずかしくなった梓は言い訳を始める。

 

「それだけ楽しみだったので仕方がないんです! 今日の為に新しい髪型に挑戦したんだから! 余裕を持って早起きしてしっかり準備して時間が余るのは仕方がないのです!」

 

 例え、相沢梓の見た目が人形のように整っていて可愛くても、朝の駅前で独り言を喋る少女は軽くホラーである。

 現にそんな梓の様子を見た、近くを通る通行人達が梓から数十メートルぐらい距離を開けている。

 そんなことは気がつかず、梓はハンドバックから手鏡を取り出すと髪型の最終チェックを始める。

 早起きしてしっかりとセットしたこともあり、初めてする髪型でも何処もおかしなところが見当たらないほど完璧であった。

 長い髪をヘアゴムで束ねた、何処か子供っぽい新しい髪型は子供っぽい外見の梓にはよく似合っていた。

 梓はそわそわしながら、憧れの先輩が来るのを今か今かと待つ。

 新しい髪形を見て、先輩はなんと褒めてくれるだろうか……「かわいいよ」、「似合ってるよ」なんて言われたらどうしようかと考えながら落ち着き無くそわそわする。

 

「あっ!」

 

 そして、待ち合わせの時刻15分前になったとき、こちらに向かって歩いてくる黒髪の青年の姿が見えた。

 青年が近づくに連れて、それが例の先輩(梓の想い人)であることを理解する。

 黒髪の青年は梓の元まで来ると、梓の姿を見て驚いた顔をする――そう、まるで信じられないモノを見たみたいに……。

 梓は梓で例の先輩が、自分を見てなんて言ってくれるだろうかとドキドキしながら言葉を待つ。

 そして、黒髪の青年は言った。

 

「サイドテール……だと……!?」

 

「えっ?」

 

 似てるけど何か違う――そんな、コレジャナイ感

 あずにゃんっぽいけど、何か違う――そんな、コレジャナイ感

 加速するコレジャナイ感――コレジャナイあずにゃん。

 この日、この時間、この世界にコレジャナイあずにゃんが誕生したのだった。

注意:こちらはSS速報VIPに書き込んだ内容をまとめた物となっています。

作者=ゆうきゆい(仮)=>>1=◆rMzHEl9LA2です。

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