オープニング
注意:こちらはSS速報VIPに書き込んだ内容をまとめた物となっています。
作者=ゆうきゆい(仮)=>>1=◆rMzHEl9LA2です。
――放課後、男は女に呼び出され誰も居ない教室に来た。
男の姿を見た女が頬を赤らめて恥ずかしそう下を向く。
誰も居ない夕暮れ時の教室に二人っきり、そんなラヴコメ時な教室に二人はいた。
男の名前は河野純一、このラヴコメの主人公だ。
河野純一が女に聞く。
「――で、なんだよ、和子? あの手紙は? 『放課後、教室に来て下さい』って書いてたから来たけどさ……」
「あ、あのさ、そ、その」
佐藤和子と呼ばれた女がもじもじと言いにくそうにしている。
女の名前は佐藤和子――このラヴコメでツンデレヒロインポジションである。
そんな大役の佐藤和子が恥ずかしそうに言った。
「……えっとね、昨日は、その……ありがとう、お礼、言い忘れてたから……」
「えっと、昨日って?」
河野純一が佐藤和子の言葉に疑問に思いながら言った。
佐藤和子が予想通りの反応と言わんばかりに溜息を一つ――
「とぼけちゃって……もう、知ってるのよ?」
佐藤和子がポケットからマスコット付きのキーホルダーを取り出し、河野純一に見せる。
キーホルダーを見た河野純一が反応を示す。
「あ、それ、俺のキーホルダー! 昨日無くしたと思ったら、和子が拾っててくれたのか」
河野純一が佐藤和子にお礼を言いながらキーホルダーを受け取り仕舞う。
「ありがとな! お気に入りだったから戻ってきて良かったよ、ホント……あ、それで昨日って?」
河野純一が佐藤和子に対して昨日の内容について深く聞こうとしている。
脚本の展開によっては何かしらの修正が必要かもしれない……。
「深くは聞かないわ……あんな格好までしてあたしを助けてくれたんだもの、よっぽどな理由があったのでしょ?」
「理由?」
「認めたくないならいいわ、素知らぬ顔で困ってる人を助ける……アンタがそんな性格だってことは理解してるつもりだから」
上手く修正してくれたおかげで『昨日の内容』について深く詮索されずに済んだ。
佐藤和子が続けて言う。
「……それに、あたしはそんなアンタのことが――」
――今だ!
物陰から出てきた俺は長年の修行で会得した――高速で移動する技、瞬歩で二人に近づく。
制服のブレザーにある内ポケットから耳栓を取り出すと河野純一の右耳目掛けて、耳栓を弾き飛ばす。
そのまま河野純一の後ろを横切り、今度は左側から耳栓を飛ばす――この間、約3秒の出来事だ。
そして、二つの耳栓は河野純一の方へ飛んでいき、両の穴に入ったことを確認すると再び物陰に隠れじっと息を殺す。
僅か5秒の出来事だった……そして、時は動き出す――佐藤和子が続きを話し出す。
「――好きなんだけどね」
そう、佐藤和子が言った。
俺は急いで先ほどと同じ要領で耳栓を外し回収する。
そして、何事も無かったように河野純一は言った。
「えっ、なんだって?」
「……」
教室内が静寂に生まれる――それは理想的で王道的な展開
フリーズから戻った佐藤和子が言った。
「あ、アンタってヤツは……人がせっかく勇気を振り絞ったのに……ほ、本当にアンタは……」
佐藤和子が怒りに肩を震わせてる。
河野純一は状況がわかっておらず、空気を読まず、いや、現状を確認するために再び言った。
「えっと、今、何か言ったか?」
河野純一の言葉がきっかけで佐藤和子の感情を抑えるストッパーが外れた。
「こ、この……」
「この?」
「ばかぁああああああ!!」
佐藤和子が強いヤツに会いに行くのが趣味な格闘ばりの渾身のジャンピングトルネードアッパー?を放つ。
「ふげらばっ!!」
河野純一が宙を舞う。
そして、そのまま床へと落下した。
落下した河野純一に対して佐藤和子が言った。
「アンタは少しそこで反省しなさい!」
そう言うとそのまま教室から出て行った……。
佐藤和子が出て行った教室で床に転がった河野純一が呟く。
「り、理不尽だ……」
台詞回しまで予想通りの展開――そう、それはまさに『計画通り』
俺は床に転がった河野純一を見て呟くのだった。
「――完璧だ、ウォルター」
ウォルター関係ないけどね……。
自分の完璧な仕事っぷりに惚れ惚れしながら、教室へと入って行く。
そして、何食わぬ顔で気絶した河野純一を起こすのであった。
***
ライトが一つだけの薄暗い部屋で俺は黒いマントと黒い仮面という正装で腰を屈めて言葉を待っていた。
隣には同い年の女が同じような姿勢で同じように座っている。
光が当っているのはライトの真下にある皮製のソファーだけ、故に当りには暗がりが出来ていた……。
ソファーの後ろには複数のビデオモニターが映っている。
皮製のソファーには男性が座っており、膝の上の猫を撫でながらこちらを見ている。
男性はぴしっとしたスーツと指には大きな宝石がついた指輪をしている。
そんな格好と優雅な立ち振る舞いがこの方がいかに素晴らしいお方であるかがよくわかる。
男性が口を開く。
「――ゼロよ、この度の仕事、大変見事であった」
我々の理想を現実としてくれるお方、総帥がそう言った。
ゼロ――フラグ数ゼロから付けられた俺のコードネーム
最初はフラグ数ゼロという現実に一時期、凹んだりもした。
それこそ、リアルにorzな状態になった。
しかし、今ではこの名前を誇りに思っている。
ゼロ――ニッポンポンで素敵な名前ではないか……。
俺は総帥に頭を下げた状態で返事をする。
「ありがとうございます」
続けて俺は答える。
「計画がスタートしから現在、ヒロイン数は三人、主人公である河野純一への高感度は五十、三十……先ほどツンデレヒロイン佐藤和子がイベント回収により五十になりました」
「うむ、なかなかの手腕だよ……この調子で頼むぞ、ゼロよ」
「はっ!」
総帥が猫を撫でるのをやめると、膝の上から猫が飛び降りる。
椅子から立ち上がり、総帥が言う。
「ゼロ」
「なんでしょうか、総帥!」
「我々の目的はなんだ?」
総帥がそう質問した。
自らの目的を見失わないように確認で聞いてくれたのだろう。
だから、俺は立ち上がり部下たちの方を向いて自信満々に答えた。
我々、組織の理念を――
「事実は小説より奇なり! つまり、ラヴコメは現実である! 故にラヴコメは現実でないとならない! 我々は『人類ラヴコメ化計画』を必ずや成し遂げる事をここに宣言する!」
歓声が沸き、ラヴコメコールが繰り返されるのであった。
注意:こちらはSS速報VIPに書き込んだ内容をまとめた物となっています。
作者=ゆうきゆい(仮)=>>1=◆rMzHEl9LA2です。