カエルのケロ助Ver.4.73
カエルのケロ助は黄金のハエを探し、旅を続けていた。
その道すがら、いきなりケロ助は足を止めた。
「奴が来る」
そして、ケロ助は真剣な眼差しで遠くを見ていた。
「冬将軍が」
冬将軍?
シベリア寒気団の事であろうか。
それとも脳みそにツボカビでも沸いているのだろうか。
まあ、ともかく変温動物であるケロ助にとって寒さは天敵である。
動きが緩慢になったケロ助は一歩踏み出すと、足元にあった小石につまずき、不様に地面にキスをした。
お似合いの姿である。
ケロ助は這いつくばりながら、ふと考えた。
偶然とは、必然とは何か?
起こるべくして起こった、それともたまたまなのか。
既に起こってしまった事象について意味を求めても意味のないようにも思えるが、それでも何かを肯定したいのだろう。
例えば人生を真っ白な本だとすると、その最後のページに『黄金のハエを見つけた』と書かれていれば、その過程はどうであれ行きつく先は決まっている。
例え、魔王と戦おうと時間旅行して、謎の鉱石生物と戦おうと、それは全て『黄金のハエを見つける』ための必然の事象でしかない。
すなわちある一点が決定した時点で、それ以前の事象は全て必然となるのだ。
ここに未来に一切決定事項はないと仮定すると、未来から現在までを偶然、現在から過去までを必然とはできまいだろうか?
現在は常に更新される決定点であるのだ。
偶然から必然に変わっていく変化の過程こそ、時間の流れである。
もしかしたら先程俺が石につまずいたのも必然かもしれないのだ。
「そろそろ冬眠しなくては」
そして、ケロ助は偶然を必然に変えるために未来の予定を立てた。
しかし、その予定はまだ不確定である。
まだ這いつくばっていたケロ助の上を影が覆う。
そして、何かがケロ助を押しつぶした。
(こんなところで俺は果てるのか。まだ黄金のハエを食べていないというのに)
ケロ助は目の前が真っ暗になり、次の瞬間ぱあっと光が開けた。
「芳崎先輩!?大丈夫ですか?」
不審がりながらもケロ助が目を開けると、目の前には人間の男が心配そうにケロ助を見ていた。
「生きている・・・」
何が起こったのかとケロ助は辺りの状況を分析した。
景色が違う。
よく分からないが、どうやらケロ助は人間の女になったらしい。
そして、ケロ助の尻の下には一匹のカエルがのびていた。
まあ、何が起ころうとケロ助の旅は続くのだった。