9.
「うわあ……」
ぽかんと口を開けて、空を見上げた。
青い。
途方もなく青い空が広がっている。
どこまでも澄んでいて、まるで宇宙の色のようだ。
「ね? すごいでしょ?」
「うん……」
空に魅入られたまま、つむぎは応える。
地球は一つだから、空なんてどこで見ても同じだと思っていた。
だけど、違った。
アンダルシアの地を両足で踏みしめ、思い知る。
知らないことが、まだまだたくさんあった。
本当に、たくさん。
つむぎはスペインを北から南へと横断した。
美術館の規模に驚いたり、中世の建物の数々にうっとりしたり。
苑子の導きで、毎日新しい経験ばかりした。
日本でなじみのある野菜も全く違う味がした。
命がぎゅっと詰まっているような、そんな味。
宗教や文化、そして風土が違うことは頭で知っていても、こうして身体で感じているうちに、つむぎの中の何かが剥がれ落ちた。
運命なんて。
どうでもいいじゃないか。
結婚=幸せって、どうして思い込んでたんだろう。
そもそも幸せってなに?
「ねえ、つむぎ」
「うん?」
「あんたはね。自分が思うよりもかなり面白い子でね。たくさんの可能性を秘めているんだよ」
苑子は随分と買いかぶっている。
笑い飛ばそうとしたけれど、違うな、と思った。
「うん、ありがとう。私もそう思う」
なんたって、『羊の皮を被った猛獣』だもの。




