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8.

 だがしかし。

 喉元を過ぎれは何とやらで、つむぎは懲りていなかった。

 『二十三歳』は確かに当たらなかったが、『職場関係の人』は当たりなのではないか。

 だって一日のほとんどを仕事で過ごす社会人にとって、他に出会いはないのだから。

 それよりもお付き合い=結婚という考えがあまりにも突飛すぎたと覆いの反省した。

 まずは、交際。

 そこから始めよう。

 恋愛偏差値ゼロなりに考えた決意だが。

 そこからが就職活動氷河期リターンの始まりだった。


「あんたのそれ、『カエル化現象』の亜種だから」

 留学先から帰国して久々に会う幼馴染の苑子が、居酒屋でビシッとつむぎを指さし糾弾した。

「そんなあ~」

 その指に両手を添えて、くにゃっと別の方向へつむぎは曲げた。

「やってること、めちゃくちゃだって解ってるんでしょ」

「うん。……大変申し訳ないと思う次第でございまして」

 ぺこりと下げる頭をぱしんと軽く叩かれる。

「そんなん、通じるか! もうね。今日から、ケッコンから離れろつむぎ。占いも二度とやるなよ。迷惑だから」

「うわああん。ようしゃない……」

「ちゃんと己の行動を顧みなさいよ。被害者の会を結成されてもおかしくないんだからね」

「はいい~」

 あれからおよそ二年。

 つむぎは仕事で関わりを持った独身男性の幾人かと、ちょっとお付き合いをしては別れてを繰り返していた。

 正直、デートコースなど全員新垣と行った所と丸かぶりで、ちょっといい雰囲気になったらはぐらかし、関係を深めようとされると逃げ出した。

 そんなわけで、つむぎは手繋ぎから先に進んだことがない。

 ハグもないし、チュウなんて、子どもの頃病床のおじいちゃんにねだられて従妹たちとほっぺたにやったのが最初で最後だ。

 恋愛の作法がまるで分らない。

 もう、この年になると経験がないことが足かせになる。

 男性経験がないことで幻滅されないか、怖くなってしまったのだ。

 ちなみに家事と掃除は現在もそこそこだ。

 お茶とお花も始めてはいるが、なんだかんだと受け身なせいか脳に浸透していないのが現実。

 ダメダメなままのつむぎである。

 そして、そういうところもまた足かせになっていて。

「もう、ほんっと期待させといてそれはないから」

「うん、でも……」

「でももだっても何もない。あんた、勤続三年くらいで年休も貯金もたまっているでしょ。良い機会だから、今度のゴールデンウイークにうちに来なさいよ。今度はちょうどいい感じに休みが長いじゃない」

「え、苑子ちゃんのうちって……」

 苑子は現在芸術を学ぶために海外を渡り歩いている。

「バルセロナ。スペインをぐるっと回ろう。連れて行ってあげるから、パスポート取っておいて」

「えええ……?」

「えええ……? じゃない。一度リセットすべきなのよ、その呪いの言葉」

 かくして。

 つむぎは黄金週間に飛行機に乗った。


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