7.
どう考えても無理だった。
新垣は擬態したつむぎに好意を持ち、勝手ながら推測するに今が最高潮のような気がする。
百点満点から更に加算されることはなく、ボロが出ればどんどん減点されていくだけ。
つむぎは失望されるのが怖かった。
何もできないと、バレるのがとてもとても怖かった。
それに結婚して最初は関東に住んだとしても、事と次第によっては他の地方へ、そして彼の故郷へついてことにもなるのではなかろうか。
大家族って、いったいどんな家庭なのだろう。
ゴーヤチャンプルーもまともに作ったことがないつむぎがそこに馴染めるのか。
地元から一歩も出たことのないつむぎにとって、旅行ですら訪れたことのない沖縄に嫁ぐと言うのは、とてもとてもハードルが高く、好意が目減りしていくなかそこで暮らすのは絶対無理だと思ってしまった。
なので、つむぎは新垣が関東へ引き上げたタイミングで電話をかけて。
別れを告げた。
「はあ……」
すっかりテンパっていたので、自分が新垣に何と言ったのか全く覚えていないのだけど、彼とのつながりは切れた。
新垣が飲み会で荒れていたと言う噂が流れてきて、いったい何があったのかと直接聞いてくる人もいたが、つむぎは笑ってごまかすしかなかった。
全面的に自分が悪い。
結婚に憧れていたくせに。
手をつないでドキドキしたくせに。
運命のひとかもしれないと思ったくせに、いざとなると現実が怖くなって逃げ出したのだ。
一部の人達から期待させて突き落として、いいように弄んだのだと陰で非難されているのを知り、悲しくなったけれど、返す言葉もない。
つむぎは人望のある人に酷いことをして、評価を落としてしまった。
気まずい状態が続くなか働いているうちに気付けば三月を迎え、つむぎは新垣と親しかった同僚達から思わぬことを聞く。
「結婚するんだって」
「は?」
驚くつむぎに彼らは事細かに教えてくれた。
「なんか正月に地元の子と再会して、子どもが出来たって」
「え?」
正月は、まだつむぎと付き合っていて、頻繁に電話を貰っていた頃だった。
「……そうなんですね。それはおめでとうございますとお伝えください」
なんだ。
そうなんだ。
振り回して悪かったと思ったけれど。
凄く好かれていると思い込んでいた自分が猛烈に恥ずかしかった。
本当は、別れを切り出そうとしていたのはあちらの方で。
出向解除もタイミングとしてちょうど良かったのだと。
「なんだ……。早く言ってくれたらよかったのに」
やがて社内報のお祝い欄に新垣の結婚が掲載された。
そして、つむぎは新しい歳を迎えた。
二十四歳。
なんとなく、占いの呪縛から解放されたような気持ちになった。




