5.
当初の予定より早く、新垣たち出向組の帰属が決定した。
計画通りに作業が進んだので規模を縮小し、いったん彼らを常駐から解き数人が交代で出張して定期的にチェックすることで経費削減できると上層部が算盤をはじいたそうで、決まった途端に撤収準備など一気に慌ただしくなっていく。
新垣は、数日後には関東へ帰ってしまう。
つむぎとの交際を知っている上司が気を利かせてくれたらしく、その定期チェック業務は新垣が任されることになったが、それも半年以内には終了することが分かっていた。
こうなると、遠距離恋愛……のような感じになるわけで。
仕事の合間にも時折何か言いたげな視線を送る新垣に、つむぎはどうしたらよいのかわからなくなった。
折に触れて、新垣は故郷の友人や年の近い親せきたちのほとんどが結婚して家庭を持ち、それがとても羨ましいとこぼしていた。
彼は長男でないけれど四世代同居の大家族で育ち、就職して関東で独り暮らしも最初は嬉しかったが、今は寂しいばかりだとも。
なんとなく。
結婚したいと言われているような気がした。
この数か月の付き合いで、新垣は周囲の言う通りの好青年だと思う。
南方系特有のはっきりした顔もがっしりした体格も、男らしいし、仕事も出来るし、優しい声をしている。
いつもつむぎを大切にしてくれ、すごく……好かれている……ような気がする。
今まで生きてきて、男性にあからさまな好意を示されたことは初めてで、どきどきした。
だけど。
つむぎは二の足を踏む。
だけど。
彼が好きなのは、擬態したつむぎなのではないか。
その疑いがぬぐえなかった。
つむぎの見た目は地味だ。
黙っていればおとなしく家庭的な女の子に見えるらしい。
哀しいかな就職活動の荒波にもまれているうちに、そんな感じのニーズがあるような気がしてついつい装ってしまったのだ。
本来のつむぎは、怠け者のオタクだ。
自室のベッドにだらだら横になって傍らに積んだ本や漫画を読みながら転寝するのが一番幸せな女だ。
そして、末っ子気質ばりばりの超絶わがままな暴君で。
家族や古くからの友人たちからは『羊の皮を被った猛獣』と嘆かれるほどに。




