10.
帰国してからつむぎはまず、フラメンコ教室の扉を叩いた。
アンダルシアで観たフラメンコにいたく感動し、踊ってみたいと思ったのだ。
不器用なので上達は遅いが、習うことが楽しい。
様々な友人もできた。
それからは興味を持ったものは何でも飛びついて、それがいつの間にか資格をとる事に繋がり、転職もした。
実家からも出て独り暮らしも始め、自分で何とかしなければならないことを経験して自然と家事能力は上がった。
とはいえ、末っ子気質そのままに割と近居だったのでしょっちゅう梅干しやらっきょう漬けを貰いに行ったりするけれど。
気が付けば三十歳を過ぎた。
「あ……」
ある日、SNSで懐かしい顔を見つけた。
それは南の島の、お洒落なカフェもある家族経営の民宿だった。
新垣はやはり地元へ帰っていた。
いくつか投稿を見ると、彼と雰囲気の似た明るい笑顔の女性が後追いしてくる一歳児を笑いながら片手で抱え上げ、鍋をかき回す動画があった。
もしも。
もしもあの時。
きちんと新垣と向き合っていれば、これは自分の姿だったかもしれない。
可愛い赤ちゃんも子どもたちも。
「……な、わけないか」
画面を閉じた。
空は繋がっているけれど。
同じじゃない。
だから、これでいい。
もしもは、ない。
みんな前に進んでいるのだから。
つむぎはじっと空を見上げた。
また新しい何かを見つよう。




