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1.

わたしはつむぎ。

もうすぐ二十三歳。

高校の時に友達と遊びで占い師を訪ねて、占ってもらったの。

その時、『西門の母』は言った。

『あんたは二十三歳くらいに結婚する』と。

そして、私に好意を持ってくれている男性が、いま目の前にいる。

これって、どうしたらいいの?


-------------------------------------------



「ねえ、今から西門の母に行ってみない?」


 言い出したのは誰だったか。

 もう、覚えていないけれど。

 模試帰りの夕暮れに、同級生たちと地元で有名な占い師の所へ繰り出した。


 『西門の母』。

 彼女は手相占いをするひとで、当たると評判だった。

 値段はとてもお手頃で、高校生の私達でも大丈夫。

 ただ、おばさんは物凄く早口で、『次』と言われたら占い終了らしい。

 だから、彼女からいかに話を聞き出すかと言うスリリングな話がまた、なんだか肝試しのようで、わくわくした。

 しかも日が暮れたら繁華街の中心にある西ビルの裏門近くの定位置にふらりとおばさんが現れ、小さな机と椅子を組み立てて占いを始める。

 街灯の光が余り届かない場所で、見えるか見えないかわからない小さな懐中電灯の灯を頼りに手のひらの線をたどり、なかなか容赦ないことを言われたと、見てもらった経験のある子が言っていた。

「はい、次」

 先に見てもらった同級生を送り出して、つむぎの番になった。

「お願いします」

 代金は先払い制。

「で、名前と生年月日は?」

 ちらりとつむぎの顔を見たあと、おばさんは鉛筆を手に取る。

「ええと、たのうえつむぎ、西暦二〇△□年の三月……」

 帳面に書きとっている手が止まった。

「ちょっと待った。あんた、高校生?」

「え、そうですけど……」

 今になって彼女はつむぎたちが揃いのコートを着ている事に気が付いた。

「あんたら、受験生か! こんなことしとらんでさっさと勉強せんかい!」

 叱られて、きゃーっとみんなで悲鳴を上げたが、おばさんは結局、占いを続行してくれた。

 目前に迫る受験の行く末を聞くなんて、怖くてできなくて。

 遠い未来の、結婚運について尋ねた。

「まあ、とにかくあんたは二十三歳くらいで結婚するやろね」

 二十三歳。

 母親が結婚した年なのでつむぎにとって違和感のない年齢だった。

「そうですか。それで、相手の人ってどこで知り合ったかとか……」

 すぐにでも切り上げそうな雰囲気につむぎは粘った。

「はあ、職場で知り合う感じじゃないかね。はい終わり」

 ぺん、と机の上にポケットティッシュが置かれた。

 これが出てくると試合終了という意味だ。

 つむぎの初めての手相占いは、一瞬で終わった。

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