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3.3母の最期

 森へ入ってから、ずっと何者かに目を付けられているような感覚がユアにまとわりついていた。ユアは馬を走らせながら、周辺に気を配っていたが、ユアたちの真上を飛んでいる梟のヤンと、後ろを走る母以外に、生き物の影を見つけることはできなかった。


 それでも、どこかから感じる嫌な視線を振り切りたくて、「もう少し早く走ろう。」と言いながらユアが母を振り返った時だった。母の背後にある森の暗闇の中で、何かが紫色に光った。怪しげなその一瞬の光の正体を突き止めようとユアは自身の剣を引き抜きながら、母の近くに馬を寄せた。


 その時だった。光のあった方向から、鋭い速さで一本のナイフがユアたちをめがけて飛んできた。ユアは自身の剣でナイフの軌道を逸らすと、そのナイフは近くに佇んでいた木の幹に深く刺さり込んだ。

 

 ナイフの柄には、一匹の蛇の装飾が施されている。まるで生きているかのように繊細に施された蛇の装飾を目で追っていくと、その蛇の瞳には紫水晶が埋め込まれていた。その紫の瞳を見た瞬間、ユアは背中に氷水を浴びたかのような寒気に襲われた。


 紫色の瞳の蛇。これは、ルアーニア領地の更に先の土地に住みついている、バロニア人の人狩り集団「紫蛇集」の印だった。アスタリア領からバロニア領までをうろつく人狩りの集団はいくつか存在しているが、その人狩りの集団の中で、最も戦いに長け、大きなグループを形成しているのが「紫蛇集」だった。

 あのナイフが飛んできた瞬間に、その方向から、鋭い針のような殺気がいくつも湧き始めているのをユアは感じていた。しかも、その殺気は一つだけではない。


「たぶん、河原にいた何人かが私たちをつけている。お母さんは先にルアーニア人の領地へ向かって。」

攻撃から母を守りながら、複数の敵と戦えないと判断したユアは、母へ先に進むように伝えた。


しかし、いくら自分に戦う能力がなくとも、娘を一人置いていくことに母は躊躇しているようだった。


「今の私じゃ、お母さんを守りながら先には進めない。でも、お母さんの背中は私がちゃんと守るから。」


 ユアは馬から降りると母の手を握りながら言うと、母はルアーニア人の集落に向かって馬を走らせた。ユアは母を見送ると、木の幹に刺さっていた紫蛇集のナイフを引き抜き、一番鋭い殺気が生まれている方向へ思いっきり投げ飛ばした。


 すると、暗闇の中で、金属と金属がぶつかり合う音が響いた。そして、それが合図となっていたかのように、今まで隠れていた人狩りの集団が飛び出してきた。飛び出してきた人数は五人だった。激しく鳴り響く刀音の中、ユアは一人一人着実に倒していった。


 あともう一人を倒せば、決着が着く思ったところで、目の前敵がユアから距離を取り始めた。すると、ユアに向かって、二本の矢が木の上から降りかかってきた。


(まだ、他にも隠れているというの。)


 ユアは刀使いの人狩りから距離を取りつつ、木の上に登ると、矢が飛んできた方向を凝視した。すると、矢の飛んできた場所の少し離れたところで、葉が不自然にカサカサと重なり合う音を拾った。


 ユアはその怪しげな音のする方へ木を飛び移りながら移動していくと、その先でユアに狙いを定めている弓使いの人狩りを見つけた。兵士はユアが自分のいる木へ向かって飛び跳ねた瞬間を狙って、矢を放った。

 空中で矢を避けることができないと判断したユアは、自身に向かってくる矢を左の掌で受け止めた。ユアは痛みに耐えながら、掌に食い込んだ矢を引き抜くと、相手に向かって落下する身体の勢いに任せて、その矢を人狩りの喉に突き刺し、そのまま身体を地面に突き落とした。


(これで敵はあと、二人。)


そう思った時だった。少し先の森の暗闇から母の叫び声が聞こえた。



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