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3.2母の最期

 三人は森を抜けてアスタリアとルアーニアを隔てる大きな川へ出ると、オリビアは躊躇することなく、馬に乗ったまま川を渡り始めた。先へ先へと進む母を追いかけるようにして、ユアとエテルも川を渡り始めた。ここ最近は、快晴が続き、川の流れが穏やかだったためか、川の流れに馬が足を掬われることはなかったが、冬に近づく川の水は驚くほど冷たかった。


 ユアは、川の水に浸かった膝下から、体温を奪われるような感覚がして、ユアは思わず身体を震わせた。その様子を見ていたエテルが後ろから「大丈夫か。」と声を掛けた。その言葉にユアは「大丈夫。」とだけ返して、先を行く母の背中を追いかけた。


 ユアとエテルが川を渡り切って、岸へと上がると、「この森を通って、あの山の麓にルアーニア人の集落があるはずよ。」と言って、母が東西に大きく広がる山を差した。大きく広がるその山の頂は獣の爪のように鋭く尖った形をしていた。「さぁ行きましょう。」そう言って母が森へ入ろうとした時、エテルが「森へ入るな。」と叫んだ。


 エテルはそのまま声を荒げながら言葉を続けると、「あそこに見える大きな岩まで走って岩陰に隠れろ。」と言って、川を少し下った先の岩陰に二人を促し、自身もそっと息を潜めた。エテルの並々ならぬ緊張感がオリビアとユアに伝わって、周囲の空気が一気に一変した。

 岩陰に隠れて少し経つと、複数の男たちが、森の中から出てきた。


「本当にここに来るんだろうな。」

「あいつの情報は確かなのか。」

「もう川を渡り終わってんじゃないのか。」


男たちの声が次々と飛び交うのが三人の耳に届いた。


「人狩りか…。少なくとも、ルアーニア人ではなさそうだ。」

そう言ったエテルの眉間に皴が寄った。

「あいつらはまだ、俺たちに気付いていない。無視して先を急ごう。」

エテルの判断に従い、馬を引き連れて森へ入ろうとした時、小さな石ころが飛んできてユアの引き連れていた馬に当たった。それに驚いた馬が鳴き声を上げながら、前足を大きく宙に浮かせた。


「おい、そこに誰かいるぞ。」


その声に続いて複数の矢が三人に降りかかった。エテルとユアは、オリビアを庇うようにしながら、矢を剣で裁いた。


「ごめん。気づかれた。」

「気にするな。ここは大丈夫だ。お前は、オリビア様と集落へ向かえ。」


そう言うと、エテルは自身の馬に乗って、男たちに向かって馬を走らせた。ユアは思わずエテルの名を叫んだ。


「必ず追いつく。俺を信じろ。」


エテルは振り返ってそう伝えると、早く行けと合図した。


「ここはエテルに任せて、先を行こう。」


 そう母に伝えるととユアは馬に乗って森の中へ進んだ。オリビアも、エテルを一人で戦わせることに戸惑いを見せつつも、ユアに続いて森の中へ入っていった。



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