プロローグ
また同じ夢を見た。
言い争いをする両親、それを見て部屋に閉じこもる自分。リビングのソファーで1人、一枚の紙を目の前に項垂れている母の姿。ゆっくりとこちらを見てくる疎ましそうにしている目。
その瞬間、自分のせいだと強く感じる。
自分のせいで両親が喧嘩した
自分のせいで父が出て行った
自分のせいで母が泣いた
自分さえいなければ…
涙が頬を伝い、目が覚める。
朝から今すぐ消えたい気持ちでいっぱいになる。
相変わらず嫌な目覚めだ。
多分これは、前の自分の記憶なのだと思う。
なぜなら、今も同じような状況にあるから。
何度輪廻を繰り返しても、私の魂に家族の愛というものは与えてもらえないらしい。
妾を作る父に、他所で男を作る母。
二人の間に愛はない。
私は乳母と使用人達の手によって育てられた。
そのことには感謝してるけれど、そこにはあるのは義務感だけで、家族のような温かさはなかった。
今となってはどうでも良いけれど、幼い頃の自分はそれがひどく寂しかったように思う。こんなにも多くの人に囲まれているのに、寂しさの消えない自分に心が押しつぶされそうだった。
でもそれも諦めたら心が軽くなった。
期待するから辛いのだと気づいた。
求めるから寂しくなるのだと分かった。
ならば一層のこと、何も望まなければいい。
それなのに、私の母は、自分と同じ失敗をしないように良い男を選べと口煩く言ってくる。絶対に自分のことを裏切らない男を、と。そして、私のためだと甘い言葉を言いながら彼女の理想を押し付けられる日々。
果たしてそうなのだろうか。
愛を知らない私は、家族を作るべきではないと思う。夫の愛し方も子どもの愛し方も分からない。こんな自分に人を愛せるとは到底思えない。
また自分のような寂しさで心を閉ざす子どもを作ってしまうくらいなら、私は一人きりで生きていきたい。
こんな想いは誰にもさせたくない。
同じ失敗を繰り返さないためにも、私は人を愛さない。
そう心に決めた。
もこれ以上傷つきたくない。
傷つけたくもない。
辛い思いをするくらいなら、愛を知らないままでいい。
このまま一人で生きて一人で死ぬ。
それは、どれだけ平穏で幸せなことだろうか。
なのに、この世界の貴族というものは結婚が義務であるらしい。
まったく、困った話だ。
夢で見た、前に生きていたであろう世界なら見放してもらえたかもしれないけど、現世では家長である父親の意見が絶対だ。抗うことなど許されない。
それに、貴族令嬢である自分に、一人で生きていく術など何もない。
12歳になった日を境に、定期的に送られてくるようになった釣書。
妾に貢いでばかりで金のない父親は、見境なく周りに声を掛けているのか、この前は40も歳の離れた相手からの縁談であった。
恋とか愛とかそれ以前の問題だと思う。
ほんと勘弁してほしい…
しっぽり系の話になる予定ですが、またラブコメといういつもの感じになる気がしないでもありません笑
これから宜しくお願い致します^ ^