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“The Reddest World”  作者: ワルツ
第1部:裏切りの物語
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白い 白い …ここはどこだ?

『俺』は『何』だ?どうして『ここ』にいる?

白くて何も見えない。いや、『視えて』いるのかすらわからない。

自分の存在があるかないのかすら…

その時、どこかで聞いたことのある声が囁いた。


『聞こえる?遠藤鏡。

 返事なさい、この豚が。』


ああ、そうだ思い出した。膨大な記憶という情報が一気に戻ってきた。

俺は「遠藤鏡」で、レデストワールドに連れてこられて、おかしなゲームに巻き込まれて…死んだんだ。

そしてこの声は、あの城の大広間で聞いた…生意気な女の声。

何だよ。そう言おうとしたが声が出ない。

当たり前だ。死んだんだから。だが相手は理解したようだった。


『ようやく気づいたみたいね。もう舞台から去って当然の奴に出番を与えたのだから感謝なさい。

 …貴方に問うわ。貴方は、今回の物語の結末に満足してる?

 川崎慎の思いは報われず、最悪の結末を迎えたこんなお話…』


…満足できるわけないだろ。


『やっぱりね。よかったわ、貴方が馬鹿で。』


…うぜぇ奴。


『あら、川崎奈々が川崎慎を殺すきっかけとして利用されただけの間抜けな奴に言われたくないわね。

 まあ、あたくし優しいから我慢してあげるわ。』


……。で、何の用だよ。


『確かに、本題がまだだったわね。

 間抜けな貴方にチャンスをあげるわ…あたくしと取引しない?』


取引?


『そう、取引。

 あたくしが貴方と川崎奈々にもう一度チャンスをあげるわ。』


そんなことできるのか?


『できるかどうかじゃないわ、するのよ。

 そのかわり…』


そのかわり?


『あたくしに名前をつけてくれない?』


名前?無いのか?


『もとはあったのよ。でもね、『グレーテル』に奪われてしまったの。

 それに、登場人物には名前が必要でしょう?』


わけがわからない。


『まあ、とにかく…貴方はあたくしに名前をつける。

 あたくしは貴方達にもう一度チャンスを与える…残念だけどすぐには無理よ。少し時間はかかるわ。

 でも、必ずやってみせる。どう?悪い話じゃないと思うわ。』


……。…川崎慎は?


『そこまで無茶言わないでくれない?登場人物が多すぎても話がうまく回らないわ。』


……。


『どうする?』


…わかった。その取引、やってやるよ。

奈々と…元の世界に戻れるかもしれないなら。


『ふふ…やっぱり貴方は馬鹿ね。でも根性はある。

 諦めのいい賢いのよりはずっといいわ。

 じゃあ…取引成立ね。』


…ああ。名前を付けりゃいいんだよな?


『ええ。ちょうだい、素敵な名前…』




考えこんだ。だが何かに名前なんて付けたことがないからなんて付ければいいかよくわからない。

考えた末に出てきたのは一つの花の名前だった。





……あやめ。


『あやめ…か。古臭い名前ね。

 まあいいわ。有り難く受け取っておくわよ。』


これで、本当にもう一度チャンス…くれるんだろうな?


『ええ、勿論。

 数ゲーム待ちなさい。私がゲームに参加できるようになった時に、必ず果たしてみせるわ。

 それまで待っていてちょうだい。いいわね?』


すっぽかすなよ。


『勿論よ。

 それと、川崎奈々のチェーンソー、借りていくわよ。伏線くらいには使えそうだわ。』


そう言うと、「あやめ」の声は遠ざかってどこかへ消えていった。

そして再び、「遠藤鏡」の意識も記憶もどこかへ紛れて消えていった。



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