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おもちとおはぎと鳥の神様  作者: だがしやこひな
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クロボ村の巫女

クロボ村の巫女


「にぃに、このあいだきたところだね」

ダカシの町から徒歩で半日、クロボ村にたどり着く。先日はコガンさん遭難という緊急事態だったので、身体強化+高速化+風加速などという無茶をやったが、あまり目立つことをやって、万一にでもおもちたちの正体がバレたりしたら大事なので、最近は出来るだけ目立たない事を心がけるようにしている。

南西の森はダカシの町からは遠いので、一週間くらいはクロボ村に宿をとってベースキャンプとするつもりだ。

コガンさんもついてきたそうな顔をしていたが、

「休んでいる間に依頼が溜まっていてな。生活もあるし稼がにゃならん。今のお前たちなら南西の森あたりなら問題ないと思うが、西の山には入るんじゃねぇぞ!」

と、ここでも釘を刺されてしまった。そんなに危なっかしく見える・・・のかなぁ。


「うわぁ!シカがいるよ。ちょっとつかまえてくる」

おもちがウズウズしている。

「待て待て、染め物用の素材集めに来てるのに、シカとか狩ったらリュックサックに入り切らなくなるから」

とおもちを引き止める。多少の容量拡張がついているとはいえ、僕の持っているリュックサックは無限に物が入る訳ではないのだ。

ここはダカシの町から南西の森。クロボ村からは南にある。

南の森と比べると全体に樹高が高く、鬱蒼としたイメージだ。川が流れていて谷間が見える。どうやら先日コガンさんが遭難した場所の川とつながっているらしい。

それから大型の獣を多く見かけるようになった。南の森ではまれにしか見かけることのない、シカとかイノシシの姿を多く見かける。クマやオオカミが出ることがあるそうなので、注意が必要だ。

「今日は様子見に来ただけだから、晩飯用にウサギ一匹だけだぞ。あと遠くには行っちゃ駄目だぞ」

僕がそう言うと、おもちは喜んで森の中に入っていく。

すぐに「おにく♪おにく♪おにくー♪」とおもちの歌が聞こえてきた。

笑顔で両手に一匹ずつ、ウサギの耳を掴んで引きずってくる。一匹だけと言ったのに・・・この猛禽文鳥め!

おはぎと僕の二人でウサギを解体して、クロボ村の宿に戻ることにした。


クロボ村の南の入口近くで、気になるものを見つけた。

「これ・・・鳥居にみえるんだが・・・?」

その鳥居らしきものには「大鳥神社」と書かれている。

その鳥居らしきものをくぐって階段を上る。そこには、木造の神社とおぼしき建物があった。

そしてその建物の前に白い羽織に赤い袴の・・・巫女さんが、箒で境内を掃除していた。

「何か・・・当神社に御用ですか?」

鳶色で長い髪の巫女さんはにっこり笑って、おしとやかに、すごく可愛い声で話しかけてきた。

癒やし系美人で巨乳の巫女さんかぁ・・・。などと考えてたら、おはぎにお尻をつねられた。

「にいさま、なんか顔がいやらしいです」

なんでおはぎには分かるんだろう。超能力かな?

「まあ、ご兄妹で仲がよろしいんですね」

手を口元に当てて、コロコロ笑う巫女さん。清楚だなぁ・・・。

「もしかしたら、鳥の神様からお告げのあったタクミさん・・・ですか?可愛らしい男の子と伺っておりましたけど」

小首をかしげて僕を見つめる巫女さん。

すると僕の後ろにいる、おもちに気がついたようだ。

「アレ、ちっちゃい嬢ちゃん、アタシと似たような格好しているけど、巫女コスプレ?」

おもちを見て、いきなり言葉遣いが変わった巫女さんが、そう問いかける。

ん、コスプレってこの人もしかして・・・

「あ、あはは、バレちゃった?アタシもアンタたちとおんじ世界から来たんだよ!」


その清楚でおしとやかだった巫女さんは、社殿の中であぐらをかいていた。

「いやー!一応巫女らしく振る舞おうとしてるんだけど、前世じゃレディースだったものだから、つい地が出ちゃうんだよね。あ、アタシの名前はユーコ」

そう言いながら、手を後ろに回して頭を掻く。

見た目と声と、態度と言葉遣いのギャップが半端ないです。ユーコさん、残念!

「それにしてもタクミ君美少年だよね。マッチョで渋いオジサマ相手に鬼畜に攻めだったりすると・・・ああっ!妄想が捗りそう・・・ハァハァ」

おーい!もしかして腐ってませんか?この巫女さん。

「ねえにいさま、鬼畜とか攻めって一体・・・?」とおはぎが聞いてくる。

おはぎ、それは知らなくていいことです。間違っても染まらないでください。

「まぁ冗談はさておいて」

冗談だったんかい!と心のなかでツッコミを入れる。

「この世界では人は死ぬと魂は天にある鳥の神様の元へ行き、記憶その他一切を消されて、地上に戻って来るという循環を繰り返しているんだけど、その循環の一部は他の世界にもつながっていてね。中にはアタシやタクミ君みたいに、前世の記憶を持ったままこっちの世界に来ちゃう人がいるみたい。もしかしたらアタシたち以外の、向こうの人とも出会うかもしれないわね」

真面目な顔で僕の顔を見つめるユーコさん。

「タクミ君がここに来るという、鳥の神様からの神託があってね。アタシこれでも巫女だから」

「鳥の神様からの伝言よ。『プレゼントを渡すから受け取って欲しい』ってね」

そう言って、ユーコさんは軽くウインクした。

「話は変わるんだけど、タクミ君ちょっと・・・」と言って僕を招き寄せた。

ユーコさんは小声で話しかけてくる。

「君たち、ここから南・・・ダカシから南西の森に入ってるんだよね。オークとゴブリンを見かけたという噂があるから、森の奥には入らないほうがいいよ」


クロボ村の宿屋「山女亭」

ここも冒険者組合御用達の宿だ。

おかみさんにお願いして、おもちが狩ったウサギで作ってもらった晩飯を食べている。

「にぃに、ウサギおいしいね」

すっかり肉食文鳥になってしまったおもち。

焼いて照り焼きっぽいソースで仕上げたウサギ肉とタンドリーウサギ。

コーンとウサギ肉のスープに、山菜を使ったサラダ。

照り焼きっぽいのがあるということは、この世界には醤油的な物があるのだろうか?今度調べてみよう。

疲れたので風呂に入って布団に入る。おもちが懐いてくるのはいいんだが、気がつくとへそを出して寝てるので、そっと布団をかけてやる。おはぎは隣の布団で静かに寝息をたてている。

そういえばあの腐った巫女さんが、鳥の神様からプレゼントとか言ってたな。

おもちとおはぎを鑑定してみる。

おもちに「文鳥倉庫」、おはぎに「文鳥迷宮」という技能が追加されていた。

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