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おもちとおはぎと鳥の神様  作者: だがしやこひな
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帰宅

帰宅


「白理法:快癒」

大怪我をしたコガンさんの体の中で、最も怪我の重い足の大腿部を優先的に治療していく。続いて他の部分の傷を順番に塞いでいく。ほぼすべての傷を塞ぐことが出来たが、怪我をしてから時間が経っており、血を流しすぎたため体力までは回復出来ず、今だコガンさんは意識が戻らないままだ。

僕たちだけではコガンさんをここから運び出すのが不可能だったったので、コガンさんを捜索している他の猟師の人達に手伝ってもらうことにした。

「おはぎ、音が出る理法を数発空に放ってくれないか?」

「はい、にいさま!火理法:爆音」

おはぎは手を上に上げて理法を放つ。

空中で花火大会開始を知らせる爆発音みたいな音が炸裂して、それに気がついた猟師の人たちが来てくれた。

そしてその猟師の人たちに手助けしてもらい、コガンさんを無事馬車に乗せて、ダカシの町まで帰ることが出来た。


冒険者組合に戻って真っ先に、受付のカンナさんから思いっきり怒られた。

危険な西の山に、新米冒険者が無断で入ったこと。

妹たちを巻き込んだこと。

最悪、二次遭難や死の危険があったこと・・・云々。

「でも、あなたたちが行ってくれなかったら、コガンさんは恐らく助からなかったわ。ありがとう、タクミ君、おもちちゃん、おはぎちゃん」

そう言いながらカンナさんは、僕たち三人を抱きしめた。

ヨロイグマの討伐に関しては、僕たちが補佐してコガンさんが相打ち覚悟で倒した・・・ということにした。

ちなみにヨロイグマを倒して手に入れた金貨は、捜索に参加した猟師の皆さんと分配して、素材に関しては倒したコガンさんと僕たちがもらっていいということになった。


続いてコガンさんの家まで見舞いに行った。

サーヤおばさんは何度も何度も僕たちにお礼を言った。みんなのおかげであの人が帰ってきたと。

僕たちは照れながら、サーヤおばさんにヨロイグマの肝を渡す。

鑑定で調べてみたところ、この肝は薬にも栄養食にもなるらしい。特に血を増やす効果があるらしいので、血を失ったコガンさんにはうってつけだ。

「ところであの人、タクミ君だけにちょっと来て欲しいって言ってるの」

なんとなく理由がわかったので、コガンさんに会いたがるおもちとおはぎに、ここでちょっとまってもらった。

寝室に入ると、コガンさんが横になっていた。

「すまんな、まだちょっと体を動かすのがきつくてな」

思っていたより元気そうだ。

「お前たちが俺を見つけてくれたそうだな?迷惑をかけた。ところでおもちとおはぎなんだが・・・」

ヤバい!やはり二人の正体がバレている。

「いや、気を失っている時にどうやら天の使いの鳥が来たらしくてな。鳥の神様から『お前がまだこっちに来るのは早い』と、言付けを頼まれたらしい。二羽のかわいい小鳥だったぞ」

そう言いながら、豪快に笑った。

どうやらおもちとおはぎの正体に関しては、黙っていてくれるらしい。

「俺の体が治ったら、鍛えてやるからまた家に来い。おもちとおはぎも連れてくるんだぞ。サーヤが寂しがるからな」

そう言いながらコガンさんは、照れくさそうに向こうを向いた。


「にぃに、おっきなクナイがあるよ」

「にいさま、この弓素敵です!」

ここはダカシの町で武器と防具を扱っている店。

「ヨロイグマの素材は全てお前らのモンだ。俺は何もしてないからな。それで武器と防具の強化でもしておけ」

コガンさんにそうアドバイスされたので、それに従うことにした。

「いらっしゃい!随分とかわいらしいお客さんだね」

鼻の下にひげをはやした、愛想のいい店主に声をかけられる。

「あの、この素材で僕とこの子達の武器と防具を作って欲しいんですが」

そう言ってリュックサックから、ヨロイグマの毛皮と爪と牙を取り出す。

「おやこれは凄いものを持ち込んだね。君たちが倒したのかい?」

「いえこれば僕たちの師匠が・・・」

そう言ってごまかす。

「それで師匠に、これでお前たちの武器防具を作ってこいと言われまして」

このへんは本当の話だ。

「それはいい師匠だね。それでどういった武器が欲しいのかな?」

クナイの前にいるおもちを連れてきて、

「この子にヨロイグマの爪で、手鉤のようなものは作れませんか?体技と暗器の技能持ちです」

「ちいさいのに凄いね。それで他には?」

こんどはおはぎを連れてきて、

「この子にヨロイグマの牙で杖を作って欲しいんです。攻撃系の理法が使えます」

「分かりました。後は皮を使った防具でいいかな?」

「はい、この皮で3人分の防具をお願いします」

「この大きさの皮なら・・・君に皮鎧を作って、お嬢さん方には毛皮のマントが作れるかな?」

ちなみに制作費だが、コガンさんが師匠だと明かすと大幅値引きしてくれた。コガンさん感謝!

僕とおもちとおはぎ、それぞれの身長や手の大きさ、足のサイズなど採寸する。

武器と防具の工房に発注するので、十日ほど経ったら取りに来て欲しいとのことだ。

予算が余ったので、おはぎ用に狩弓を一式と、弓を一束購入する。

これで戦闘時のバリエーションが増える。


さて迷宮の魔物であるヨロイグマが、なぜあんな場所にいたかという事だ。

話によると深い森の中や人跡未踏の山の中には、まだ未発見の迷宮が隠れているらしい。

これはあくまで推察だが、おそらく今回のヨロイグマは、その中から迷い出てきたのでは無いかと思われる。

ということは、今後もこのような事件が発生する可能性があるということだ。

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