第9話「誘拐」
狩りの要請は、それからすぐだった。
「お姉ちゃん!司令塔から連絡きた!えっと...あ!近い!隣町のサムサに出動だって!」
「サムサってこの前ランセルが令嬢に絡まれたお店がある町よね?」
「そうだよ!ロラスにも伝えないとだ。僕、色々準備しなきゃだし、お姉ちゃんロラス呼んできて。今の時間なら剣の稽古場にいるんじゃないかな?」
ランセルからの頼みなんて珍しくて、思わず張り切ってしまう。
「任せて!!お姉ちゃんがすぐロラス連れてくるからね!」
元気な姉像を可愛い弟に見せつけたが、ランセルは分かった分かった、早く行っておいでと、私に手を振る。塩対応の弟も悪くない。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
任せて!!なーんて張り切って外に出てきたが、早速後悔し始めた。
ロラスが見当たらない。稽古場もいないし、どこ行ったんだろう。この世界にスマホはないのかしら?
ロラスを探しに歩いていると、ドンッと衝撃があり、口と目元を塞がれ、羽交い締めにされる。
いきなりの出来事に息が詰まる。
ステッキは...家だ。こんな時に持ってないとは、私もダメだな。ステッキを携帯せず、ランセルに毎度毎度怒られていたことが思い起こされ、冷静になる。
相手は確実に2人以上だ。私は丸腰だが、相手は武器を持っているかもしれない。
抵抗はしたかったが、周りが見えない恐怖で動けずにいた。
「このまま大人しくしろ」
無機質な声が耳元で響く。
相手の姿を見てしまったら、確実に殺される気がした。
ドンッと、どこかに放り込まれる。
口元を塞ぐものは無くなったが、喋ろうとすると言葉にならず、口がモゴモゴしてしまう。顎の筋肉が麻痺して喋れない。これでは助けを呼べない。何かの魔術だろうか?
目元はまだ暗く、周囲は伺えなかった。
耳だけは聞こえており、ガタッと辺りが揺れた。
私は何かに乗っているようだ。
「こいつを眠らせておけ」
先程の無機質な声が、誰かに指示した瞬間、私の意識は飛んだ。
ロラス助けて~!!
羽交い締めにされたらバンザーイで抜け出せるらしいです。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
【ブックマークに追加】や【☆☆☆☆☆】欄でお気軽に評価頂けたら励みになります!
感想もお待ちしています!
褒められて伸びるタイプです~!お読みいただきありがとうございます。