第7話「疑問」
帰り道の馬車の中で、本を読むランセルに声をかける。
「公爵令嬢って気高く美しいイメージだったけど、さっきのってやっぱり…」
「さっきの?もう何体も見てきたのにどうかした?」
全部言ってしまおうか、と思った。実は私はこの世界に来たばかりで何も知らない、教えてほしい。過去のマスカットの記憶は何もない。ランセルに全て話した方が楽なのかもしれない。あわよくばこの公爵令嬢狩りから降りられるかもしれない…。
「ちょっと寝た方がいいかもね」
ほら、とランセルが大きめの毛布を引っ張り出してくれた。
私は横になりながら、さっき見た公爵令嬢と呼ばれる何かを思い出す。
美しいドレスを着ているにも関わらず、あの風貌、モンスターや怪物まがいと呼ばれてもおかしくない。
「あの公爵令嬢、人を襲ってしまうんだ。美味しそうなお菓子やケーキが並んだり、賑やかで楽しそうなお茶会やダンスパーティーとかに出現して、参加者を喰い散らかしてしまう」
トントン、と弟にあやされながら、私は目を閉じた。
「モンスターなの?」
「分からない。でもあの公爵令嬢は危ないから倒すように、とだけ言われてる」
「誰に?」
「公爵令嬢狩りの司令塔だよ」
お姉ちゃんも1回だけ会ったことあるよ!と、ランセルは温かいタオルを私の首元に巻いてくれた。
「司令塔からは、令嬢狩りの予算も出るし、魔力も貰えるんだよ」
「でもステッキの魔力はロラスが込めたって」
「ほら、自らの魔力は、狩りなどの攻撃時のみ使用を許される。それ以外での使用は許可しないって。魔法律で決まってるでしょ」
面倒だけど守らないと処刑だからね…とランセルは遠くを見つめる。
なるほど、ランセルの自動運転魔法は借りたってことね。それに私がステッキを使えるのは攻撃時のみ…。屋根を壊しちゃったのはノーカンかしら…じゃなきゃ処刑ね、転生していきなり処刑の危機…。
「僕達も公爵令嬢狩りサボると処刑されちゃうから、お姉ちゃんも令嬢を前に怖気付いちゃいけないよ」
この間も、1人処刑されたって聞いた…と長いまつ毛を伏せてランセルは俯く。
この世界、何か間違えるとすぐ処刑ね…と思わず遠い目になる。
「分かった、ありがとう、ランセル。今日は心配かけちゃってごめんね…」
ずっと心配そうな顔をしていたランセルはようやく可愛い顔でニッコリ笑ってくれた。
ギャグが…ギャグが足りない…!!
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