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第6話「はじめてのこうしゃくれいじょうがり!」

「西アコウ城ってどうやって行くのかしら?」

魔法が普通に使える世界なら、瞬間移動的な何かで行けるのではなかろうか?

社畜時代、苦行だった通勤時間を思い出し、私は期待してランセルを見る。


「お馬さんです」

「え?え?走る馬?」

魔法がこれだけ発達しているのに、車とか電車とかは消えてしまったのだろうか?


ランセルがこっちこっちと、私とロラスを家の外に連れ出す。


外には、手入れが行き届いた黒くツヤツヤした毛並み、たてがみが風になびき、大きな尻尾をゆらゆらとのんびり振って、体高は160センチぐらいぐらいはあるだろうか、まつげの長い美しい馬がこちらを見ていた。


「きれい…」

思わずつぶやくと、ロラスが馬の(あぶみ)に足をかけ、ササっと馬に乗る。


「僕の馬なのさ。素敵だろう?」

美しい黒い馬と長身で銀髪がよく映えるロラスの組み合わせに、思わず眩しくなる。


「外面はいいのに、変態なのが惜しいわね…」

思わずそんな本音も漏れてしまう。


「マスカットも僕と一緒に乗るかい?」

手綱を握っていない方の手が差し出された。


「お姉ちゃんと僕はこっちだよ」

振り向くとランセルが2匹の馬が繋がれている馬車を用意していた。

御者は黒いモヤがかかった人型の何かで、見えて大丈夫なものか、心配になってしまう。

そんな私に気づいてか、ランセルが「馬車の運転は僕の自動運転魔法でやってくれるから、道中は寝てても大丈夫だからね」と教えてくれた。


ロラスは選ばれなくて残念としょんぼりしているが、乗馬をしたこともない私にとって、いきなりの乗馬はハードルが高い。それに1匹の馬に2人も乗って大丈夫だろうか…とかそんな心配ばかりしてしまう。


「ロラス、今度乗馬を教えてね」

寂しそうなロラスに声をかけると、みるみる笑顔になっていく。…なんて素直で可愛いのだろう…違う、こんな顔して私に紐ビキニ着せようとした輩だ、忘れないようにしなければ…。うーん、感情がぐちゃぐちゃになるな。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


西アコウの城下町は、すっかり廃れきっていた。

並んでいる出店はどこもやっておらず、店の骨組みを覆う布がボロボロになって風にたなびいている。


「本当にこんなところに公爵令嬢っているのかしら?」

令嬢ってお茶会とかダンスパーティーとか社交の場にいるイメージが強いけど…。


「マスカット、ここでお茶にしようか」

ロラスがボロボロの出店に入って、てきぱきと色鮮やかなクッキーやケーキを並べ始める。

お茶はランセルが用意してくれた。

ボロボロの出店に似合わないぐらい豪華なティーセットが並び、こんなに用意してもらえる私ってやっぱり公爵令嬢に転生したのでは?と錯覚してしまう。


「いただきまーす」と美味しそうなクッキーに手を伸ばそうとすると、ランセルに制止された。


「お姉ちゃん、狩りなのに自分が食べてどうするの!」

「マスカット、いくら愛しの僕が用意したティーセットだからって、これに手を出してはならないよ」


「ご、ごめん…でも皆で食べるんじゃなくって?」


何を言っているんだこの人、というようにランセルとロラスは顔を見合わせる。


「マスカット、まだ寝ぼけているのかい?とりあえずステッキだけはしっかり持っておくんだよ」

「お姉ちゃん…あとでクッキーあげるから今は待ってね」


なぜなの!と頭の中がフリーズしていると、ガサっと後ろで物音がした。


「きた…!」とロラスとランセルがつぶやく。


振り向くと、美しいドレスを身にまとった何かがそこにいた。

ドレスの刺繍は、完成にどれだけの時間がかかるか分からないほど細かく丁寧だった。

しかし、砂や泥で裾は汚れており、せっかくの美しさが見劣ってしまう。


ドレスを身にまとっているのは、緑色の肌にボツボツと赤い斑点が浮き出て、焦点の合っていない目をした何かであった。目と鼻と口はかろうじて分かるが、ぼこぼこと肉が盛り上がった人間とも呼べない何かに、後ずさりをしてしまう。


「マスカット!早くステッキを!」

ロラスの声にハッとなり、手にしたステッキを一振りした。


ステッキから光が出て、一瞬で何かは消える。


「何なの…あれ…」

まだ胸がバクバク鳴っている。思ったよりも公爵令嬢狩りは本格的で過酷なのかもしれない。

というか、今のは公爵令嬢ではないのではないか?あれは…なんていうか…


「マスカット!!大丈夫だったかい?」

私の思考を遮るように心配そうな顔をしたロラスが駆け寄ってくる。


「お姉ちゃん、寝不足なの?」

今は可愛い顔をした弟を見ても、心が休まらない。


「ねえ、あれは何?」

意を決して聞いた私に2人は声を揃えて答えた。


「公爵令嬢だよ」

\\不穏な空気//

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

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