第3話「選択」
「無意識下に自分の灯火を消してしまった者は、次の世界を選べるの」
目の前に、声の主があらわれた。
身長は私よりもはるかに高く、やわらかな微笑みを浮かべた女性だった。
切れ長の目は青く光り、無駄な肉が一切ついていない引き締まったフェイスライン、女でも見惚れてしまうようなスタイルの良さに圧倒され、思わず居心地が悪くなる。
「ほら、ここから選んで」
1枚の紙が差し出される。
「待ってください。なにも理解できてない…この女はほんとうに私なの?」
飛び込み続ける女の映像を指さしながら聞いた。
「そうね…ちゃんと説明してあげたいけど、時間がないのよ」
女性は小首をかしげながら困ったように笑った。一つ一つの動作が妙に色っぽくドキドキしてしまう。
「とにかくキミは、新しい人生を始められるの。そして次の人生を選べる特権ももらえたのよ。だってキミの最後が無意識にやった電車の飛び込みだなんて…絶対に許されないことだもの」
チラっと飛び込みを繰り返す女の映像に目を向け、長いまつげを伏せる。
「私が飛び込み…」
でも、言われてみれば信じられないこともない。毎日毎日上司に怒鳴られ暴力を振るわれ、会社も辞めるに辞められない状況にあった。私が居なくなったら困る人はたくさんいた。だから辞められない。そうだ。何で忘れていたんだろう。会社や上司が大っ嫌いだった。
飛び込んだ私は、きっと救われたかったんだろう。
「選ぶでしょう?5つ人生があるわ、好きなの選んでいいわよ」
差し出された紙に目を向ける。
① コレクターからの熱い視線!世にも珍しい昆虫
② おやつ食べ放題!石油王の飼い猫
③ BLシーンに欠かせない!観葉植物
④ 爆モテ街道まっしぐら!イケメン騎士
⑤ 美人すぎると話題!公爵令嬢
何なの…このラインナップ…。さっきまでのセンチメンタルな気持ちは一気に吹っ飛んだ。
「ほら、早く選ばないと自動的に1番になってしまうわよ、あと5秒で選んで。5…4…」
「ま、まって!昆虫はパス!猫も捨てがたいし、イケメン騎士も良いけど…令嬢!令嬢で!!」
「令嬢、おすすめね。働かなくてすむわよ」
フフッと小さく女性は笑った。
同時に私の視界は真っ暗になった。
個人的には、おやつ食べ放題!石油王の飼い猫が最高だと思います笑
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次話はようやく転生へ…