第21話「アーベイルの過去」
錠剤のケースを手に取って広間へ戻る。
私がレオナと話している間に、あらかた片付けは終わっていた。
「ランセルとロラス、そろそろ帰ろうか」
2人に声をかける。
アーベイルは広間の壁際で2人の小人リックとミックと書類を覗き込み、何か話していた。
そろそろ帰るから、と城主に声をかけるため、アーベイルに近づく。
「アーベイル様、私達、帰ります。令嬢狩りも活躍できなくてごめんなさい…」
「そうか。いや気にするな。弟のフォローをありがとう。また狩りの時は手伝ってほしい」
狩り、と聞いて胸がつまる。
「ところでマスカット、何でお前がそれを持ってるんだ?」
私が持っていた錠剤入れをアーベイルが指差す。
「えっ、あ、これ、さっお手洗いに落ちてて…参加者の忘れ物かな?」
レオナにもらったとは言えず、しどろもどろに答える。
「預かっておく」
アーベイルに錠剤ケースを無理やりひったくられそうになる。
「あ…」
公爵令嬢をモンスター化させる重要な証拠、みすみす失うわけにはいかない。
小さなケースを両手でギュッと握り、取られないようにガードする。
「あの…ね、アーベイル様、これ公爵令嬢がモンスター化する原因のひとつで…」
「知ってる。だから預かると言ってるんだ」
「え!何で知ってるの…誰がこれを配ってるとか、作ってるとかも知ってる?」
「そんなことはいいから渡せ」
「そんなことって!配ってる人とか売ってる人が分かれば、公爵令嬢達の手に渡ることもなくて、モンスター化も防げるかもしれないのに!」
私は、大きな声でアーベイルに伝える。アーベイルは五月蝿そうに眉をひそめていた。
「俺達の…妹もそれが原因で狩られている」
アーベイルは、ロラスをちらっと見ながら言った。
雲行きが…
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