第2話「記憶」
白くてふわふわの羽が舞う空間にわたしだけが立っている。壁や天井の存在を感じない。
眠りにつく直前のような、心地良さ。眠ってしまいそう…。
「キミには、まだチャンスがある」
どこかから急に声が聞こえ、ビクッと閉じかけていたまぶたが驚きでひらく。
同時に、映画館のシアターのような画面が目の前にあらわれた。
画面には笑顔で電車に飛び込む女の姿が映される。
うわ…ちょっ…なにこれ…思わず目を背けると、また声が聞こえてきた。
「これはキミだよ。でも覚えてないでしょ?」
飛び込む女の姿が何度も何度も繰り返された。
「キミには記憶がない。だから選べるの」
さっきまで心地よかった空気はいつの間にか一変していた。額からジワリ、と脂汗が出る。
飛び込む女…この女をわたしは知らない。この女が自分?
「重度のストレスから記憶が飛んでるのよ。会社に行ったのは覚えてる?」
あれ、わたし何してたんだっけ。家を出て会社に着いたところまでは覚えている。というか自分が何者かもわからない。なんだろう、この感覚…。
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