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第18話「冷血城での公爵令嬢パーティー」

パーティー会場は、城の入口を進み、すぐ奥にある広間だった。

ランセルとロラスは、最上階にあるアーベイルの部屋まで階段を上ってきたそうだが、アーベイルに「お前たち…わざわざ階段を使ったのか…昇降機あるぞ」と淡々と伝えられ、絶望していた。

私とランセルは、ボスの背中に乗せてもらい、ふわふわの毛を朝から堪能する。

「兄さん、いつの間に昇降機を造ったんだい…」

金色の網目状をした扉がカチャリと閉まり、昇降機は下がり始め、床が揺れる。


「マスカットを住まわせるために不便だろうと思ってね。造らせたのさ」

チラっと私の方を見て、切れ長の目をした色男は答える。


「ありがとう…アーベイル様…とっても便利」


「お前さん愛されとるなー」

茶化された照れ臭さに、もう!とボスの毛をわしゃわしゃする。


「こら!やめい!」

ボスが前足を床から離し、後ろ足だけで立ち上がろうとする。

私とランセルは、キャッキャっとボスの背中から振り落とされないようにしがみつく。


「あんまり騒ぐと昇降機が止まる」

ボソッと低いアーベイルの声に怒られ、私達は隅の方で小さく静かになる。


チーンという音とともに、網目状の扉が開き、目の前には薄暗い廊下が続いた。

蝋燭が所々に灯してある廊下を進むと、広間に出た。


既にパーティー会場の準備は済んでいた。


「アーベイル様、おはようございます」

「オハヨオハヨ」

2人の小人がアーベイルの顔周りを飛び回る。


「パーティーの準備、いつの間に…!まさかあなたたち小人さんが全部やったの?」


「お前!小人って失礼な!僕らにはリックとミックという名があるんだ!」

「アルアル!」

赤い帽子の小人がリックで、青い帽子がミックだそうだ。

どうやらパーティーの飾りつけから、食事やスイーツの準備、音楽隊の手配まですべて彼らがやってくれたらしい。働き者だ…。


昼12時を回った頃、洒落たスーツを着た男性達が色とりどりの華やかなドレスで着飾った公爵令嬢達をエスコートをして、続々と広間に集まってきた。


アーベイルは広間の奥、舞台のように一段高い所で玉座に腰かけ、隣にボスを従えている。金の塗装が施され、艶やかな形に彫りこまれた玉座で足を組み、令嬢達を冷たく見下ろしているさまは冷血城に住む王子に相応しく、憧憬の眼差しで熱っぽく令嬢たちに見つめられていた。


「本日はお集りいただき、感謝する。楽しんでくれ」

アーベイルがたった二言だけ、退屈そうに挨拶をし、パーティーは始まった。


トランペットの楽し気な音色とともに、ピアノが跳ねるように奏でられ、会場を盛り上げる。

参加しているご令嬢達も歓談に花を咲かせ、笑顔で溢れかえっていた。


ーーーガシャンッ!!!!

ーー逃げてっ!!ーーーキャー!!

突如、パーティー会場から令嬢達の悲鳴や机が倒れる音が聞こえた。

ピアノやバイオリン、フルートなどで奏でられていた心地の良い音楽もピタリと止まり、辺りは一気に令嬢達の叫び声でこだまする。


真っ赤なビネガーソースがかかった赤身肉や、薄いグリーンのゼリーに真っ白なクリームで飾りつけされたムース、淡いピンク色のワイン、リックとミックが用意した豪華な食事やスイーツは床に落ちた。鮮やかな陶器のティーセットも割れて欠片となって、辺りに散らばっている。令嬢たちが履いていたピンヒールも逃げるときに脱げてしまったのだろう、あちこちに置き去りになっていた。


人々が逃げる先の反対側を見ると、1人の令嬢がヨロッと立っていた。

狩りの対象となる、緑色の肌。赤い斑点の存在が遠くから見ても分かる。肉もボコボコと盛り上がっている。


あれっ、と思った。

倒すべき令嬢の身なりに見覚えがあった。


紅桔梗(べにききょう)の濃い紫色の布をベースに、細かな装飾が施された総レースのドレス、照明が当たると眩しいくらい金色に輝く華やかなピアスやネックレスで着飾ったご令嬢。ランセルが買い物をしていた時にお店でトラブルになった若い令嬢と瓜二つの格好であった。


「ランセル、あの令嬢…」

遠くの令嬢を見つめ、私は考え込む。


「お姉ちゃん、令嬢狩りの時間だね」

ランセルは以前出会った令嬢と瓜二つの格好に気づいているのかいないのか、私に向かって言った。


胃液がせりあがってくる感覚とともに、耳をふさがれるように周囲の音が聞こえなくなってくる。

先日までは、若く美しい女性だったはずだ。今じゃ会話をままならない緑色の哀れなモンスターとなって、公爵令嬢達を次々に襲っている。


「ランセル…あの公爵令嬢…前に会った、若い令嬢だ…」

口の中はカラカラになっていた。

西アコウ城で狩った令嬢を思い出す。絶対に認めなくなかった。違和感はその時からあったのに。


私はモンスターなんかではなく、れっきとした人間、本物の公爵令嬢を狩っていたのだ。


セミが窓ガラスに突撃する夏がやってきましたな…。

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