第11話「猫」
「ついてこい」
「ツイテツイテ」
2人の小人は猫の背中から飛び立ち、カプセルの外に出ていく。
慌てて猫を乗り越えカプセルの外に出ると、ポツポツと等間隔に蝋燭の灯された長い廊下が続く。
蝋燭の明るさだけでは、廊下を十分に照らせず、だだっ広く続く薄暗い闇に不気味な印象を受ける。
「あれ…あの2人は…どこ行った…」
きょろきょろと小人を探し見回すが、一瞬にして見失ったようだ。
このまま逃げられるのでは…とも思ったが、1人でこの薄暗い廊下を進むのは怖すぎる。
うーんと考えあぐねていると、顔をファサッと何かに撫でられる。
「……!」
ビビりすぎて声にならない悲鳴をあげる。振り向くと、カプセルでぐっすり寝ていた大きな猫が起き上がって私の傍にいた。
猫は私をジッと見る。かわいい。猫ってまばたきをするのが愛情表現だっけ…と過去の記憶を引っ張り出し、ゆっくりまばたきをする。
すると、猫はまばたきをし返してくれた。
そのまま猫は廊下を進む。待って、猫もいってしまったら、こんな薄暗いところに独りぼっちだ。追いかけようとすると、猫は止まり振り向いた。そしてまた私をジッと見つめる。
「背中乗るか?」
「は?!え?喋った!うそ!」
「うるさいねん。案内したるから背中のり」
「しかも関西弁。何で…?何で猫が関西弁?」
「ええやん、猫だって関西弁のひとつやふたつ知っててもおかしくないやろ」
「いや、おかしいやろ」
思わず猫相手に関西弁でノリツッコミをしてしまう。
ほれほれと急かされ、モフっと猫の背中に乗る。
猫の後頭部のかわいらしさに捕まっていることも忘れて、ニコニコしてしまう。
「お前さん、アーベイルに見初められたらしいなー、これから初夜ちゃうかー?」
猫は、ぐははと笑いながら歩く。
「猫、あんた可愛い顔して言っていること下品ね」
「すまんすまん、外からお客が来んのも久々で楽しいねん。あとワシの名はボスや。よろしくな」
「ボス?かーわいい!ボス猫ってことね!大きいしボスって名前似合ってるわ」
ボスは、ええ名前やろ?と誇らしげだった。
私は話やすさ120点のボスに聞く。
「ねえ、アーベイル様って何者なの?」
「アーベイルはここの家の当主やで。お前さんここがどこだか分かってないんか?」
「知らないわ。いきなり目と口を塞がれて気づいたらボスの腹枕で寝ていたのよ」
「なんやそれ。誘拐やんけ。可哀想にな」
ボスは少しだけ歩みをのスピードをゆるめ、首だけ振り向き目をキュッと細めて私を見た。
「怖かったわよ…」
誘拐なんて自分自身が遭うとは思わなかったから、思い出してブルっと身震いする。思ったよりもトラウマになっているかもしれない。
ボスも家の当主がすまんな…と謝ってくれた。
「ここはな、アーベイルの家なんよ。通称、冷血城って呼ばれてるんやで。一度入ったら、戻ってきた人はいない…なんてな」
ニャッハッハと笑うボスに、このまま帰れなかったらどうしよう…と冷や汗が出てくる。
「ちなみにアーベイル、表情も愛嬌も性格も冷たいから冷血城って呼ばれてるらしいで、単純やなー」
「どうしようボス…私も二度と出られないのかしら?」
「出られるんちゃうか?知らんけど」
「ちょっと!真剣に聞いているのに!もう!」
適当にボスにいなされ、この先の心配が募っていくのだった。
いいなー。。。モフっと猫の背中に乗りたい。。
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