第10話「アーベイル」
ひそひそと人の声が聞こえ、意識が戻り始める。
「こい...がほ...とに...」
「ホント...」
そうだ、私は捕まったんだ。
どれぐらい時間が経ったのだろう。
懐かしい夢も見た気がする。
同僚と2人で、笑顔で働いている。
過去の記憶なのか、願望なのかは分からなかった。
それに...とランセルとロラス、2人の顔を思い出す。きっと私のことを探しているだろう。無事に令嬢狩りも終わっているならいいけど。確かロラスも狩りができたはず。
そんなことを考えているとまた意識が飛びそうになる。やばい。捕まっている状況なのに、何だか居心地が良くて、また寝そうになっている。
ふわふわっとした物に包まれて、暖かい。私を包んでいる何かは呼吸をするように規則的に動いている。
このまま欲に従って寝てしまおうか...とも思ったが、捕まってる状況は打破せねばと、薄ら目を開ける。口を大きく開け、顎の麻痺も治っていることを知る。
目の前には美しい夜景が広がっていた。数々の建物が光り輝いている。
夜景のバックを彩る空は、地平線に薄い紫色、上空に昇るにつれて真っ黒になるグラデーションになっていた。黄金色の惑星も空に浮いていて、この世界の空の美しさに思わず息をのむ。
辺りは全面ガラス張りで、丸いカプセルの中にいるようだ。
手足も枷などはついておらず、自由だった。
フーっと息遣いが聞こえ、左を向く。
ネコ?猫だ。頗る大きい猫が寝ている。
「か、可愛い~~」思わず小さく声を出してしまった。
猫はカプセルの丸さに沿うように、体を丸めて眠っていた。体長10メートルはあるだろうか。耳から長い毛が生えていて、見た目はメインクーンのようだった。
私は猫の横腹辺りで眠っていて、ふわふわなものは猫のお腹の毛だった。
「起きたようだな」
「オキタ、オキタ」
頭上から2つの声が聞こえる。
目線を上げると、小人が猫の背中辺りに座っていた。青と赤の小さな帽子を被った2人の小人は、透明な小さい羽がついている。
「お前はアーベイル様の女になる」
「ヨメ、ヨメ」
「アーベイル様?の女?」
いきなりすぎる。誰かも知らないし。
猫は可愛いけど、ランセルとロラスに迷惑をかけていることを思い出し、胸が痛くなる。
「とりあえず帰られせてもらえないかしら?そのアーベイル様も私のこと知らないでしょうし、いきなり女とか言ってくる失礼な人にはあまり興味を持てないのよ...」
言ったはいいが、そういえば捕まってて、立場上逆らうのは良くないか...と少し後悔する。
「これを見ろ」
「ミロ、ミロ」
2語しか繰り返さない青い帽子を被った小人が私の目の前の空間に、画面を映し出す。
映し出された男が言う。
「マスカット、今日からお前は俺の女だ、覚えておくように」
男の髪色は、空を彩るグラデーションのように濃い紫や漆黒が混ざっており、美しかった。
切れ長の目は左右非対称のいわゆる雌雄眼と呼ばれる部類で、冷たい印象を受けたが、魅力的で妙な色気を醸し出す。
「では、のちほど」
プツンと画面が消える。
思ったよりもタイプで、見惚れてしまった自分は、ちゃっかりしているだろうか。
でっかい猫に包まれたいです。
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褒められて伸びるタイプです~!お読みいただきありがとうございます。




