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亡国のおうじ  作者: 李舜臣
帝都革命編
1/5

祇園精舎の鐘の声-1


「皇帝陛下、お誕生日おめでとうございます。ご健勝そうで何よりです。」


「うむ、そなたも元気そうで何よりだ。此度の継承の儀でも、最期まで皇太子としての努めをしっかりとはたせ。」

厳かな雰囲気を身に纏い、他を寄せつけぬ圧力の中に親類に対するわずかな気安さをはらんだ、唯一無二の皇帝であり、我が父であるフレデリク・フォン・イリアス・ズールが私に言葉を返した。


皇帝陛下のことを父と言い、皇太子と言われていることから分かると思うが私は陛下の第一子であり第十五代イリアス帝国皇帝の跡目を継承する皇太子としてこの世に生を受けた。


 正式には今日父が帝位を継承するためまだ皇太子ではないのだが数年前から先代が体調を壊して、父が実質的な皇帝の役目をこなしてきたため、皇太子として扱われていた。


「もちろんでございます、本日は陛下の威厳を目に焼き付け、自らに顧みて昇華していきたく思っております。」


「はっはっ、息子にそこまで言われたら醜態を晒すわけにはいかんな。そうだろうステラゴーよ。」

 

 父上は上機嫌に笑いながら自身の後方に控える宰相ステラゴーに問いかける。


「誠に、アドランド様は齢十五とは思えぬ落ち着きと態度でありますね。」腹に一物も二物もかかえてそうな見た目の宰相が応える。


 この宰相は傑物であり、資料を見る限り先代までで失ってしまった民からの信頼や他国との軍事力の差を詰めることができている。特に軍事において我々の虎の子の魔法師団を再編成し、圧倒的な実力集団に引き立てて見せた。


「では、私はこれにて失礼致します。」あまりここに長居をしてもいられないので父上からの許可をいただいて皇帝の間を下がった。 


長い廊下を歩みながら今日することについて私は物思いにふける。


今、城下では我が国の栄光と発展を願い祭りが開かれている、皇帝の息子であり皇太子になるということは民のために尽くし帝国をこの世で最も強大な国とするために一生を捧げるということだ。民から失った、し

「あにうえー」

勢いよく小さな子が私に飛びこんできた。


「エル、ダメでしょ、それじゃ全然淑女らしくないわよ。ご機嫌ようお兄様」

その言葉を聞いて私に抱きついていたエルが私から離れて辿々しくスカートをつまみ

「ご機嫌ようおにいさま」と可愛らしい様で挨拶をする。


「ああ、二人とも元気そうだな」

この二人は陛下の二十五の子供の中で私と同じ母を持つニ人だ、エルは3歳でまだまだ幼く背伸びしてお姉さんがりたがるお年頃だ、対してカレンは8つになるためかお姉さんらしくなり、エルの面倒を良く見ている、二人とも黒髪赤目であり、陛下の金髪碧目とは違い母の形質を継いだ、陛下には十二の男児と十三の女児がいる、つまり私が生まれてからわずか十五年余りで二十四人もの子供をおつくりになった。

なんというかゲンキダナー 


「きょうは、ちちうえさまとおにいさまの、こうていにおなりになるです、おめでとうございますです」


 私の妹はすごいな、とても頭が良いようだ

私は思わずエルを抱き上げ優しく抱きしめた

「おにいさま、しゅくじょをいきなりもちあげたらめっですよ」頬を膨らませ指でバツをつくって私を叱るその姿がまた可愛くてやはり私の妹こそが世界一可愛いのではないかと思える。


「ふふ、エルはお兄様よりしっかりとしているわね」カレンが思わず口を緩めて微笑む


やっぱり俺の妹両方かわいい妹の前では私の語彙力も失われてしまう。


「そんなこと言わないでくれ、私は今日皇太子になるのだからしっかりとしないといけないからな」


「ええ、お兄様。お兄様の皇太子着任嬉しく思いますわ。今日はお兄様とお父様のかっこいい所をしっかりとこの目に焼き付けさせていただきますわ。」




数時間後――

パーパラパーパパパパーパラパー

皇家の楽華隊による演奏を持って皇帝の帝位継承の儀の始まりが知らされた

片膝をつき、敬礼の姿勢を取る父に現フレング教聖王リチャード・デメデロス18世が王冠を授ける

父上はゆっくりと立ち上がり、見るものを圧倒するような覇気をその身に纏い宣誓をする。


「余は3代続いた悪王とは違い国民のために尽くし、身命を賭してこの国を発展させることを誓う、我が父王は残虐のかぎりを尽くし守るべき民を傷つけ、道楽のかぎりを行なった、これは皇家の消えざる罪であり、晴らすべき悪である。――」


父上による宣誓は多くの民衆が惹きつけられてはいるが、民の不安はそう簡単に払えるものではないのだろう。多くは不安気な表情を浮かべ、期待の眼差しを向けるものこそ少数である。


父上が悪王と呼んだ過去3代の皇帝たちは、己が欲望のままに残虐の限りを尽くした。そのような代が三度も連続で位についたために帝国は過去に類を見ない程に疲弊しており、地方では重税と酷い干魃も相待って治安が悪化し、明日の生死すら油断出来ずに生まれた子も育てられないために捨てられる事態も頻出している。故に父上に向けられる視線は懐疑的であり恐れを多く含んでいるのだ。


「……民からしたらわからないものだからな」私は普段からあの人の仕事ぶりも人柄も分かっているから、皇帝にこれ以上ないというほど適していると分かるが。分からないものほど怖いものはない。


「以上が余の誓いである。」力強い言葉で発せられた誓いの言葉


――しかし、それは届かなかったとすぐに我々は知ることになる。


読んで頂きありがとうございました。

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