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異世界恋愛・短編

神様、辞めました〜竜神の愛し子に冤罪をかけ投獄するような人間なんてもう知らない・短編

作者: まほりろ





【本日付けで神を辞めることにした】





王太子アビー・シュトースと聖女カーラ・ノルデン公爵令嬢の結婚式当日。


二人が教会での誓いの儀式を終え、教会の扉を開け外に一歩踏み出したとき、国中の壁や窓に不吉な文字が浮かび上がった。


フラワーシャワーを撒き、王太子と王太子妃の結婚を祝おうとしていた参列者は、突然現れた文字に驚きを隠せず固まっている。


王太子は突然現れた不吉な文字に動揺を隠せない。


王太子妃は「せっかくの結婚式が台無しよ」と言い眉をひそめた。


次の瞬間轟音(ごうおん)とともに教会にあった竜神ウィルペアトの像が壊れ、周囲は騒然となった。


竜神ウィルペアトの像の倒壊は教会だけにとどまらず、王宮・王都の広場・貴族の館などに設置されたモニュメントやレリーフ、各家々の軒先に設置された小さな像にいたるまで、竜神ウィルペアトと名のつくすべての物が音を立てて崩れ落ちた。


竜神ウィルペアト……二百年前、荒れた大地が続き凶悪なモンスターが闊歩(かっぽ)し、飢えとモンスターの襲撃に(おび)えて暮らしていた当時のシュトース国を救った竜人。


人々はウィルペアトを竜神として崇め、この地に留まることを望んだ。


竜神ウィルペアトは民の願いを聞き届け、シュトース国に留まることを決めた。


竜神ウィルペアトは国境に壁を築きモンスターの侵入を防いだ、壁は結界の役目を果たしており、国内にいたモンスターは弱体化した。


さらにウィルペアトは干からびて作物の育たない土地に雨を降らせ、大地を潤し、豊穣(ほうじょう)をもたらした。


そしてか弱い人間の体を強化し、生活が便利になるように魔法の力を授けた。


それによりシュトース国の民は剣を簡単に扱えるようになり、高度な魔法を扱えるようになった。


畑には小麦が実り、果樹園には桃やりんごや梨などの果物がたわわに実った。


国民は平民に至るまで三食食事をとることが普通となった。


またシュトース国で取れた野菜や果物は味がよく、高値で売れた。


シュトース国の畑で育てた薬草は、高い効果を発揮することを知られ、薬草は高額で取引された。


シュトース国の川や泉の水さえ、その水で調合すると薬の効能が上がるとされ高値がついた。


体強化の効果により、木こりはたやすく木を切り倒せるようになり、猟師はモンスターや動物を簡単に狩れるようになった。


竜神ウィルペアトの加護を受け、シュトース国は見違えるように豊かになり、民は安寧な生活を手に入れた。


荒れ果てた大地にモンスターが闊歩(かっぽ)し、痩せた大地がどこまでも続き、ひえやあわを主食とし、モンスターに(おび)えながらほそぼそと暮らしていたシュトース国は過去のものとなり、人々の竜神ウィルペアトへの信仰心と感謝の心は徐々に薄れていった……。










二百年に渡りシュトース国に数々の恩恵をもたらしてきた竜神ウィルペアト。


その竜神ウィルペアトが長きに渡る沈黙を破り、【本日付けで神を辞めることにした】と全国民にメッセージを発した。


しかもこの国の未来を担う王太子と、現役聖女であり竜神ウィルペアトから特別に加護を受けた【竜の愛し子】であるカーラ・ノルデンとの結婚式の直後にだ。


国民の動揺は計り知れない。


「皆のもの落ち着け! これは先代の聖女ブルーナの嫌がらせに違いない! ブルーナはカーラの異母姉でありながら長年に渡りカーラを虐げてきた! あの悪女ならこのぐらいの嫌がらせを平気でするだろう! あの女には投獄するだけでは罰が足りなかったようだ! 俺の手で諸悪の根源であるブルーナの首を()ねる! なので皆、安心してくれ!」


王太子が列席者に向けて芝居がかった口調で話したが、人々は落ち着きを取り戻すどころか、余計に混乱するだけだった。





【追伸、私は神を辞め愛に生きることにした。私の愛した相手は先代の聖女のブルーナだ。


ブルーナほど美しい心を持った女性に私は出会ったことがない。


そう、君たちが偽聖女の汚名を着せ罵倒し石を投げつけ投獄したあのブルーナだよ。


彼女は本物の【竜の愛し子】だったのに……誰も気づかなかったね。君たちがブルーナをいらないというのなら私がもらうよ】





王太子の言葉はまたもや壁や窓に映し出された文字によって打ち消された。


シュトース国では魔力の高い女性を選び、竜神ウィルペアトに祈りを(ささ)げる聖女とする習わしがある。


聖女の中でも背中に竜の模様が浮かび上がった者は【竜の愛し子】と呼ばれ、竜神ウィルペアトの加護を強く受けていると言われ、人々の畏敬(いけい)の対象だった。


三カ月前カーラは背に竜の模様が浮かび上がったことで、【竜の愛し子】と認定され、王太子の婚約者の地位を得た。


ブルーナは【竜の愛し子】であるカーラを虐げていた罪で、王太子に婚約破棄され偽者の聖女として断罪された。


なのに壁に映し出された謎の文字には、竜神ウィルペアトが加護を与えた本物の【竜の愛し子】は、王太子が偽聖女として断罪したブルーナだと記されている。


その事実は人々を戦慄(せんりつ)させるのに充分な効果を発揮した。


人々はこれからどうしたらいいんだと不安を漏らし、一人一人の呟きは初めは小さなものだったが、やがてさざめきとなって広がり、教会は騒然となった。


王太子が「こんなものはまやかしだ!」と喚くが、誰も聞く耳を持たない。


王太子の結婚式に招かれた貴族たちは、王太子が三カ月前のパーティーで本物の【竜の愛し子】であるブルーナにしたことを思い出し、顔を青ざめさせた。


「嘘っ、お姉様が竜神と一緒だなんて……そんなの……ずるいわ!」


人々が青ざめる中、カーラだけは眉間にシワを寄せ異母姉への恨み言を吐いていた。


『こんなときまで姉がずるいだなんだの言っているのか? 今は竜神ウィルペアトの加護が消えた一大事だというのに! 元はといえばカーラがブルーナの悪口を俺に吹き込んだから……!』


王太子は自身の隣で姉を呪う言葉を吐き続けるカーラに辟易(へきえき)し、婚約者選びを間違ったことを後悔していた。


王太子と王太子妃のパレードを見るために大通りに集まっていた民衆は、先日偽聖女として素足で連行されていくブルーナに、石を投げたことを激しく悔やんでいた。


「まさかあの方が【竜の愛し子】様だったなんて……! 俺たちはなんてことをしてしまったんだ……!」


人々はそう漏らし、その場で膝をつき竜神ウィルペアトに許しを請うが、神からの返信はなかった。




☆☆☆☆☆




八年前、先々代の聖女エッダ・ノルデンが亡くなった。


彼女は歴代の聖女の中でもとりわけ高い魔力を持ち、神秘的な黒い髪と瞳を持つ容姿端麗な女性だった。


エッダが亡くなった一カ月後、次の聖女を選ぶ儀式が行われた。


魔力の高い未婚の女性が神殿に集められた。


その中でもひときわ魔力が高かったのがエッダの親戚にあたる二人の娘、亡き正妻の娘ブルーナ・ノルデンと、後妻の娘カーラ・ノルデンだった。


ブルーナの方が多少魔力が高く、なによりエッダと同じ黒髪と黒い瞳の持ち主だったため、民からの信仰を得やすいだろうという教会側の思惑から、姉のブルーナが聖女に選ばれた。


そして時を置かずブルーナは王太子の婚約者となった。


面白くないのはブルーナの腹違いの妹のカーラだ。ほんのわずかな魔力の差で聖女の地位と王太子の婚約者の座を姉に奪われたのだから。


カーラの母親であるノルデン公爵夫人は、王妃と仲が良かった。ノルデン公爵夫人は王妃の元におもむきブルーナの悪口を吹き込んだ。


その悪口のほとんどはノルデン公爵夫人の作り話だったが、ブルーナの容姿を毛嫌いしていた王妃はノルデン公爵夫人の話を利用しようと考えた。


王妃にとってことの真偽などどうでもよかった、むしろブルーナが悪女であった方が都合が良かったのだ。


王妃がブルーナを嫌う理由、それは王妃の学生時代にさかのぼる。


十九年前、先々代の聖女エッダは現国王(当時王太子)の婚約者だった。エーデル候爵家の令嬢だった現王妃が当時王太子だった現国王を寝取ったのだ。


婚約者を奪われたエッダは、独身を貫き、生涯神に仕えることを誓った。


王妃はエッダにそっくりのブルーナが新しい聖女に決まり、息子の婚約者になったことを快く思っていなかった。


ブルーナを見るたびにエッダを思い出し、「王妃の座につくのはお前ではない」とエッダに責められているような気分になるからだ。


カーラもエッダの親戚だが、カーラは母方の血を強く受け継いでいるため、エッダにはまったく似ていなかった。


エッダは黒髪黒眼だったが、カーラの髪と瞳の色は桃色。


そのため王妃は、カーラを王太子の婚約者にしようとするノルデン公爵夫人の計画に賛同した。


王妃はノルデン公爵夫人と共謀しブルーナを聖女の地位から引きずり下ろし、王太子との婚約を破棄する方法を考えた。


二人は王太子妃教育を厳しくすれば、ブルーナは王太子妃の座を諦めるだろうと企てた。


王妃は王宮に王太子妃教育に上がったブルーナに厳しい家庭教師をつけ、誰もが音を上げる過酷な教育を施した。


さらにブルーナを王妃のお茶会に呼び、細かいことを注意し真綿で首を絞めるようにチクチクと攻撃した。


それでもブルーナは弱音一つ吐かず、王太子妃の教育に耐えた。


王妃とノルデン公爵夫人は次に、ブルーナにパーティーに身に着けていくドレスやアクセサリーを与えず、ブルーナに恥をかかせ、ブルーナは王太子妃としてふさわしくないと各方面に訴えようと画策した。 


王妃とノルデン公爵夫人はブルーナに聖女を辞めさせる方法も考えた。二人はブルーナが教会にお祈りに向かうときの馬車を、公爵家でも王家でも出さなければよいという結論に達した。


聖女の教会での祈りは毎朝三時に行われる、そのためブルーナは家を二時半には出なければならない。


二時半といえば夜明け前、真っ暗な街を少女が一人で歩いて教会に行けるわけがない。王妃とノルデン公爵夫人は馬車を出さなければ、ブルーナは教会に行くのをあきらめるしかない、と踏んでいた。


聖女の務めを果たさなければ、ブルーナは教会からの信用を落とす、そうなれば聖女を辞めざるを得ない。


だがブルーナは二頭立ての立派な馬車に乗り、教会の祈りにも、王太子妃の教育にも遅れずに現れた。


王家主催のお茶会やパーティーには、真新しいドレスを身にまとい、高価なアクセサリーを身に着けて参加した。


王妃とノルデン公爵夫人は、計画がうまくいかないことに腹を立て、教会がブルーナに馬車やドレスを用意しているのだろうと推測した。


教会はブルーナを象徴にして金儲けをしているのだから、そのぐらいの面倒を見るだろうと。


王妃は見方を変え、ブルーナを聖女の地位から引きずり下ろすのではなく、カーラを聖女として認めさせる方法はないか考えた。それがのちに偽物の【竜の愛し子】を仕立て上げる計画につながっていく。


一方王太子は、カラスのように真っ黒な髪のブルーナを初めて会ったときから気味悪く思っていた。


王太子は王妃にぞんざいに扱われるブルーナを見て、ブルーナはいじめてもいい対象だと認識し、ブルーナにつらく当たった。


王太子はノルデン公爵夫人に連れられ王妃のお茶会に参加していた、桃色の髪の愛らしい少女カーラに心惹かれていく。


ブルーナが厳しい王太子妃教育に耐えている最中、王太子とカーラは愛を深めていった。


王宮では王妃と王太子に邪険にされ、家では継母や使用人にそしられ、ブルーナの心は徐々にすり減っていった。


それでもブルーナはけなげに王太子の婚約者の務めも、聖女の務めも果たしていた。


王宮や貴族の茶会で王妃やノルデン公爵夫人がブルーナの悪口を広めるので、ブルーナの評価は貴族の間では下がり続け、ブルーナは徐々に貴族の社会で孤立していった。




☆☆☆☆☆





そして三カ月前に開かれた王室主催のパーティーで事件が起きた。王太子は招待客が見ている中で、ブルーナとの婚約破棄を突きつけたのだ。


「ブルーナ・ノルデン、貴様との婚約を破棄する! 理由は貴様が長年に渡り母親違いの妹カーラをいじめていたからだ!


さらに貴様はカーラの食事に虫を入れ、カーラの布団にサソリを隠し、カーラを噴水に突き飛ばし、カーラを階段の踊り場から突き落とした! 貴様のような悪女は王太子の婚約者にふさわしくない!」


王太子の言葉に会場は騒然となった。男は汚い物を見る目でブルーナを睨み、婦人たちは冷ややかな目でブルーナを見て扇で口元を隠しヒソヒソと話している。


王太子の横には淡いピンクのドレスをまとったカーラがおり、泣きそうな顔で王太子の腕を握っていた。


「お姉様、いまならまだ間に合います、罪を認め謝罪して下さい。私はお姉様が兵士にとらわれる姿など見たくないのです」


悲しげに眉を下げ瞳を潤ませながら、姉を気遣うカーラの姿に、会場にいた招待客は心を奪われた。


お茶会で王妃とノルデン公爵夫人からブルーナの悪口を吹き込まれていた貴族は、ブルーナ・ノルデンなら腹違いの妹を陰で虐めることぐらいやりかねないと思い、王太子とカーラの言葉を全く疑わなかった。


むしろブルーナの素行の悪さが公になり、ブルーナが処罰されたことに歓喜していた。


だがブルーナの生活をよく知る者なら、ブルーナがカーラをいじめることが不可能なことが分かっただろう。


ブルーナは早朝日の昇る前に家を出て教会で祈りを(ささ)げ、教会を出た後は王宮に行き王太子妃の教育を受け、昼間は学校に通い、放課後はまた王宮で王太子妃の教育を受け、深夜に帰宅する。なので同じ家に住んでいても、ブルーナがカーラと顔を合わせることなどほとんどなかったのだ。


王太子は悪女からか弱い少女を守るヒーローのような扱いを受け、得意になっていた。


「会場に集まった高位貴族の諸君に聞いてもらいたいことがある。もちろん貴様もよく聞くんだぞブルーナ!」


王太子が芝居がかった口調で話し、ブルーナを指差しキッと睨みつけた。


「先日カーラのもとに竜神ウィルペアト様が降臨した!」


会場内が一気にざわついた。


「竜神ウィルペアト様はカーラにこう告げた。『そなたほど心が清く見目麗しい少女は国中を探しても他にいない。そなたこそ私の加護を授けるのにふさわしい。よってそなたを今日から【竜の愛し子】に指名する』とな!」


会場内は喧騒に包まれた。聖女の中でも特別に竜神ウィルペアトに愛されたものには、背中に竜の模様が現れる。その者は【竜の愛し子】と呼ばれ、崇拝されてきた。


しかしここ百年ほど【竜の愛し子】は現れておらず、【竜の愛し子】など伝説かおとぎ話だろうと思われていた。


「竜神ウィルペアト様のお告げを受けた翌日、カーラの背に竜神ウィルペアトの模様があることに、カーラの着替えを手伝った使用人が気づいた! 俺はカーラからその話を聞き母である王妃殿下に報告した!


王妃殿下は教会のシスターとともに、速やかにカーラの背に浮かび上がった竜の模様を調査した!


その結果、カーラの背に浮かび上がった竜の模様は間違いなく本物で、カーラが【竜の愛し子】であることが判明した!」


会場内はどよめきに包まれ、招待客の視線は一斉にカーラに集まった。


カーラの身につけているドレスは背中が開いていないので、直接竜の模様を見ることは出来ない。だが王妃が調査し教会が本物と認め、王太子が公の場で発表しているのだからカーラは本物の【竜の愛し子】に間違いないのだろう、という結論に達した。


「あのお方が【竜の愛し子】」「なんと神々しい」「美しく清らかなカーラ様こそが【竜の愛し子】にふさわしい」


周囲はカーラに羨望(せんぼう)のまなざしを向け、称賛の声を送った。


シュトース国には【竜の愛し子】の模様が浮かび上がる者が現れたとき、その模様が本物か偽物かの調査を王妃と教会の高位のシスターが行うという制度があった。


王妃は自分の息のかかったシスターを呼び、教会から古文書を持ち出させ、あらかじめ竜の模様について調べていた。


王妃は古文書を元に、仲間の魔術師に依頼し、カーラの背に竜の模様を刻ませたのだ。


自分たちで刻んだ模様を自分たちで調査するのだから、本物という結果しか出るはずがない。


その上本物の【竜の愛し子】はここ百年現れていない。本物が現れなければ、カーラが偽物だとバレる心配もない。王妃の(はかりごと)はここまで完璧だった。


ブルーナを支持している僧侶が後で文句を言ってくるかもしれないが、男に高位貴族の女性の肌を確認する術などない。


唯一その権利がある男は【竜の愛し子】の婚約者になる王太子のみ。息子が母親を裏切るはずがない。王妃にはこのたくらみが絶対にバレない自信があった。


一部の熱狂的なブルーナ信者の僧侶以外は、かつての聖女エッダと同じ神秘的な黒髪と黒い瞳を持つブルーナを、寄付金集めの道具にしているだけ。


【竜の愛し子】の証を持つカーラと、エッダに似ているだけのブルーナ。教会がどちらをより重要視するか、王妃には容易に想像できた。


このように偽物の【竜の愛し子】を作り出す不届き者が現れたのは、竜神ウィルペアトの加護を得て二百年という長すぎる平和が続いたためでもある。


長く続いた安全で豊かな生活に、シュトース国の民は慣れ過ぎた。


安寧な暮らしが当たり前になり過ぎて、竜神ウィルペアトへ感謝する心が人々から薄れていたのだ。


「【竜の愛し子】であるカーラこそが聖女にふさわしい! そして本物の聖女であるカーラと王太子である俺との婚約を今ここに発表する!」


王太子はカーラの腰に手を回し、カーラはほほ笑みを浮かべ王太子に寄り添った。


会場からは拍手喝采が起こる。


王太子は拍手の音を気分よく聞いたあと、真顔に戻りブルーナをねめつけた。


「ブルーナ・ノルデン! 貴様は【竜の愛し子】であるカーラを虐め、その身を害そうとした! 貴様のような悪女に聖女の地位はふさわしくない! よってブルーナから聖女の地位を剥奪し、偽聖女として断罪する! すでに教会からブルーナの聖女の地位を剥奪する許可は得ている!」


王太子の話を彼の背後で聞いていたノルデン公爵はスッと手を挙げ、「ブルーナをノルデン公爵家から除籍します!」と告げた。


「本来ならこのような悪女を出したノルデン公爵家も処罰すべきだが、ノルデン公爵家は【竜の愛し子】であるカーラの生家でもある。よってブルーナを除籍したことで罪一等を減じ、ノルデン公爵家へのお(とが)めなしとする!」


「寛大なご配慮、痛み入ります殿下」


ノルデン公爵は王太子に向かいうやうやしく頭を下げた。


「偽物の聖女ブルーナは北の牢獄(ろうごく)に送る!」


北の牢獄(ろうごく)は城から歩いて半日の場所にあった。


王太子がブルーナに処罰を言い渡すと、王太子の傍らに控えていた衛兵がブルーナを拘束し、口に猿轡をし、両腕を後ろ手に縛り上げた。


兵士に連行されパーティー会場を後にするブルーナの背に、人々は料理を投げつけた。


「いいざまね」「エッダ様のご親戚の聖女だからといって、調子に乗りすぎた罰があたったのよ」「社交界から消えてくれて清々するわ」「薄汚い姿ね、まるで浮浪者みたい」


パーティー会場にいた貴族たちは口々にブルーナをののしり、声を上げてクスクスと笑った。


ブルーナは弁明することすら許されず、会場から連行された。


その晩ブルーナは城の地下の牢屋に入れられ、ベッドどころか茣蓙(ござ)すらない固く冷たい床の上に横になった。


翌日の早朝、牢屋の冷たい床で寝ていたブルーナは衛兵に叩き起こされた。


衛兵はブルーナから靴を取り上げ、汚れたドレスを着たブルーナを乱暴に牢屋から連れ出した。


靴を取り上げられたブルーナは、北の牢獄(ろうごく)まで素足のまま歩いて向かうことになった。


数人の衛兵に連行され、北の塔に向かうブルーナは通りに出ると多くの民に囲まれた。


民衆はブルーナに「竜神ウィルペアト様の加護を得た聖女様をいじめるとはとんでもない娘だ!」「【竜の愛し子】を虐げた悪女には死罪こそふさわしい!」「くたばれ偽聖女!」罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせ石や卵を投げつけた。


民衆が王宮のパーティーで起きたことを、なぜこんなに早く知っていたのか? それは王妃とノルデン公爵夫人がわざとうわさを流し民を誘導したからだ。








それから三カ月が経過し、人々はブルーナのことをすっかり忘れ、王太子と【竜の愛し子】であるカーラの結婚式に浮き立っていた。


教会の鐘が鳴り響き、人々が王太子と王太子妃を乗せた馬車が道を通るのは今か今かと待ちかまえているとき、竜神ウィルペアトが【本日付けで神を辞めることにした】という短いメッセージを残し国を去ったことを知り、人々は慌てふためいた。


自分たちが罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせ、石や食べ物を投げつけた相手が本物の【竜の愛し子】だったとは、夢にも思わなかったのだ。


人々は膝を突き、竜神ウィルペアトに許しを請うた。しかし彼らの罪は許されることはなかった。





☆☆☆☆☆





息子の結婚式に列席していた国王は、竜神ウィルペアトの術により壁に映し出された文面を読み、頭を抱えた。


国王は教会から王妃と王太子と王太子妃と(わず)かな護衛を連れ、急ぎ王宮に戻った。


街で暴動が起きても、教会では身の守りようがないからだ。


国王は信頼のおける女性の魔術師にカーラの背中に現れた竜の模様について調査させた。


ブルーナが本物の【竜の愛し子】だというのなら、カーラの背にある竜の模様は偽物ということになる。しかし偽物という確証がない。なので信頼のおける部下に調べさせたのだ。


カーラを調べた魔術師は「王太子妃の背中には確かに竜の模様がありました。しかし今はその模様が消えかけております。何者かが神殿の資料を元に術をかけたものと思われます」と国王に報告した。


「そうか、やはり偽物であったか」


国王は力なく呟いた。国王はカーラを【竜の愛し子】に仕立て上げた人物が誰か分かっていた。


こんな芸当が出来、カーラを【竜の愛し子】に仕立てることで利益を得るものは一人、王妃しかいない。


八年前新たな聖女を選ぶとき、教会からブルーナを強く推薦された。


教会がブルーナを推すのは、ブルーナがエッダによく似た容姿でエッダと同じ黒い髪と黒い瞳を持っているからだと、国王は察した。


国王はエッダとの婚約を破棄した負い目もあり、教会側の要求を呑んだ。


王妃にしてみれば夫の元婚約者にそっくりな娘を、息子の婚約者にされたのだ、良い気分はしない。だが国王はそのことに気づいていなかった。


「あのとき形だけでも、王妃にブルーナを王太子の婚約者にする了承を取るべきであったな」


国王にはそのことより気にかかることがあった。


「先ほどそなたはカーラの背にある竜の模様が消えかけていると言ったが、なにゆえだ?」


国王には王妃がわずか三カ月で術が薄れるような、レベルの低い魔道士を起用したことが()に落ちなかった。


「模様が消えかけているのは、術者の魔力が弱まっているからだと思われます」


「魔力が弱まっているだと?」


「私を含め城中の魔術師の魔力が弱くなっております」


魔術師の言葉に国王は目を見開いた。


竜神ウィルペアトの加護の力で魔力を得て国が発展した。シュトース国の民なら誰もが知っていることだ。


だが大半の人間は、教会が寄付金を集めるために大げさに話していることだと思っていた。国王もその一人だ。


でなければ先々代の聖女エッダとの婚約中に侯爵令嬢と浮気をし、浮気相手との間に子供を作り、聖女との婚約を一方的に破棄するなど罰当たりなことができるはずがない。


王妃と結婚して約二十年、なんの神罰も下ることがなかったので国王は慢心していた。


現在のシュトース国の繁栄は竜神ウィルペアトの加護によるものではなく、全て人間が自らの力で築き上げたものだと(おご)っていたのだ。


『それが今になってこんな仕打ちを受けるとはな……』


国王は短時間でどっと老け込んだように見えた。


「魔力が弱くなっているとはどういうことだ?」


「申し上げた通りの意味です。竜神ウィルペアト様の像が壊れてから、私を含め王宮に所属する魔術師は簡単な魔法しか使えなくなりました。市井の魔術師にも同じ現象が現れているでしょう。今使える魔法もいつ使えなくなるか分かりません」


国王は魔道士の話を聞き愕然(がくぜん)とした。


結界の役目を果たしていた国境の壁が崩壊し、国外のモンスターが国内に侵入。


国内のモンスターが凶暴化し村々を襲い、討伐に向かった冒険者や兵士が剣が重くてまともに戦えず、魔術師はろくな魔法が使えず、あっさりと敗北したという報告を受け、国王が苦悩することになるのはこの三日後のこと。




☆☆☆☆☆




王太子の結婚式から三日が過ぎた。


結界の役目を果たしていた国境の壁が崩壊し、国外のモンスターが国内に侵入、王国にもともといたモンスターの凶暴化。


国内の井戸や川の水位が下がり、畑の作物は枯れ、食料を備蓄していた倉庫がモンスターの襲撃を受け、各地で食料や医療品が不足。


モンスターと戦う魔術師や剣士の弱体化。


炎魔術師は小さな火の玉しか出せなくなり、水魔術師は水鉄砲並の威力の水魔法しか使えなくなり、風魔術師はそよ風しか起こせなくなった。


剣士は長剣が重くてまともに振ることができず、やむを得ず食堂のナイフで戦っている。その上普段の十倍以上疲れやすく、すぐに息が上がってしまう。


伝書鳩によってもたらされる各地の被害報告に国王は苦慮していた。


「どうしてこうなった……?」


国王は眉間を押さえ深く息を吐いた。


だが国王にはどうしてこうなったのか心当たりがあった。


全ては三カ月前のブルーナの断罪劇から始まった。


いや根っこはもっと深い、国王が王太子時代に当時の聖女エッダとの婚約を一方的に破棄したとき、あの時からこの国の崩壊の序曲は始まっていたのだ。


それゆえ国王はカーラを【竜の愛し子】に仕立て上げた王妃も、ブルーナとの婚約を破棄し公の場でブルーナを断罪した王太子も、偽物の【竜の愛し子】であるカーラも、責めることができなかった。


国王は各地の被害状況の調査とは別に、ブルーナについても調べていた。


王妃とノルデン公爵夫人と偽物の【竜の愛し子】であるカーラが、本物の【竜の愛し子】であるブルーナに何をしてきたのか。なぜブルーナが本物の【竜の愛し子】だと、竜神ウィルペアトに告げられるまで誰も気づかなかったのかを。


「ノルデン公爵夫人は、前妻の子ブルーナ様が聖女に選ばれ、実子のカーラ様が聖女に選ばれなかったことに激しい怒りを覚え、友人である王妃殿下にブルーナ様の悪口を吹き込んでいたようです。


ブルーナ様の容姿が先々代の聖女エッダ様に似ているのが気に入らなかった王妃殿下は、ノルデン公爵夫人と一緒になってブルーナ様を虐待しておりました」


やはりなと思い国王は顔をしかめた。教会に推薦されてもブルーナを王太子の婚約者に指名するべきではなかったと、国王は深く後悔していた。


「王太子殿下とカーラ様は、ブルーナ様が王太子妃教育に明け暮れている間に仲を深めたようです。


カーラ様の背に偽物の竜の模様を施す(はかりごと)の首謀者は、王妃殿下とノルデン公爵夫人でした。


カーラ様は王太子妃の座と聖女の地位欲しさに、お二人のたくらみに協力したようです。


王太子殿下だけはカーラ様の背に現れた竜の模様が偽物だとは知らなかったようです」


「なぜブルーナの背に竜の模様があることに誰も気が付かなかったのだ?」


「それはブルーナ様には侍女がついておらず、湯浴みを一人でしていたためでしょう。


自分の背中は自分では見られませんから、ブルーナ様もご自分が【竜の愛し子】であることに気づいていなかったと思われます」


「そうかブルーナには侍女すらついていなかったのだな……」


国王はブルーナのことを思い出していた。


ブルーナはいつも悲しげな顔をしていた。だがブルーナは着るものやアクセサリーには困っているように見えなかったので、国王はブルーナがそこまで酷い扱いを受けているとは思っていなかった。


「北の牢獄(ろうごく)にブルーナはいたか?」


「いえおりませんでした。ブルーナ様が一度は入った形跡はあったのですが……」


「詳しく話してみよ」


「牢番は確かに最下層の一番奥の牢屋にブルーナ様を入れ、外から鍵をかけたそうです。


王妃殿下からブルーナ様には水も食料も与えるなと命じられていたので、牢番はブルーナ様を牢獄(ろうごく)に入れてから三カ月間、一度もブルーナ様を閉じ込めた牢を見にいかなかったそうです。


私が王命を持って北の牢獄(ろうごく)に行き、急いでブルーナ様を閉じ込めていたという牢屋を調べたのですが、そこはもぬけの殻でした。


外からきちんと鍵はかかっているのに、中に入れたはずのブルーナ様だけが消えていました」


「消えただと?」


「はい、牢屋にはホコリがたまっており、ブルーナ様が身につけていたものと思われる血のついたヴァトー・プリーツの切れ端だけが落ちていました」


「牢番は間違いなくブルーナを牢屋に入れたのだな?」


「はい鍵を三つかけ、鍵は牢番が首にかけ肌身離さず持っていたそうなので、牢番はブルーナ様が牢屋から逃げ出せるはずがないと申しておりました。


ブルーナ様が牢屋にいたことは間違いなく、北の牢獄(ろうごく)の監視は誰もブルーナ様を牢屋から出していないので、ブルーナ様は牢屋に入れられたあと、忽然(こつぜん)と姿を消したとしか思えません」


忽然(こつぜん)と姿を消したか……神ならばそのようなこともいとも容易くやってのけるのかもしれぬな」


「陛下?」


「いや何でもない、もう下がってよい」


「はっ!」


報告を終え(きびす)を返し部屋を出ていく配下を見送り、国王は深く息を吐いた。


「せめてブルーナを城から出す前に湯浴みをさせ着替えさせていれば……ブルーナの背に竜の模様があることに気づけたであろうに」


ブルーナが夜会で身につけていたドレスはローブ・ア・ラ・フランセーズ。


ローブ・ア・ラ・フランセーズは胸元は開いているが、背中は開いていない。


ドレスの上にヴァトー・プリーツを羽織っていたので絶対に背中は見えない。


「しかし……ドレスは一人では着れぬはず、ブルーナの着付けは誰がしていたのだ? 本当にブルーナには侍女が一人もついていなかったのか? もし侍女がついていたとして、その者はなぜブルーナの背に竜の模様があることを国に報告しなかった?」


国王は先ほど帰したばかりの配下を呼び戻し、ブルーナについて今一度調べさせることにした。




☆☆☆☆☆




――竜神ウィルペアト・サイド――




――三カ月前――



ブルーナが王太子に断罪された翌日、北の牢獄(ろうごく)


「ローブ・ア・ラ・フランセーズが卵やワインでどろどろだ。ヴァトー・プリーツに至っては途中で破れてもう機能を果たしていないね」


北の牢獄(ろうごく)に入れられたブルーナの元を、銀色の髪に紫の瞳の美しい青年が訪れていた。


彼の名はウィルペアト、人々が竜神と崇めし者。


ブルーナの足は裸足で歩かされたことにより擦り傷だらけで、民衆に石をぶつけられたことによりあちこちに痣が出来ていた。


ブルーナは精神的な疲労に加え、肉体的に負った傷と、牢屋の寒さが原因で熱を出していた。


牢屋にはベッドすらないので、ブルーナは体を丸め冷たい床に横たわっていた。


竜神ウィルペアトはブルーナに回復魔法を施し、浄化の魔法をかけ、服を新品のシュミューズ・ドレスに変えた。


竜神ウィルペアトは壊れ物を扱うようにそっとブルーナを抱き上げ、別の場所に転移した。


ブルーナの入れられた牢屋には見張りはいなかった。しかし仮に見張りがいたとしても普通の人間が、神であるウィルペアトの行動を妨げることは出来なかったであろう。


王妃は牢番にブルーナに食料も水も与えないように命じていた。そのため王命を受けた兵士がブルーナを入れた牢屋を調べに来るまで、牢番はブルーナが消えたことに気づかなかった。


ブルーナに最低限の水と食料を与えていれば、ブルーナがいなくなったことに即日気づけたというのに。




☆☆☆☆☆




竜神ウィルペアトは神殿の地下にある自身の部屋に、ブルーナをお姫様抱っこしたまま転移した。


真っ白な壁に覆われた何もない空間。


ここは神の領域、故に転移魔法の使える竜神ウィルペアト以外この部屋に入ることは不可能だ。


竜神ウィルペアトは魔法でベッドを作り出し、寝台にブルーナを寝かせ、ブルーナの体を覆うようにシーツをかけた。


「すまない、体の傷は治せても心の傷は治せない」


竜神ウィルペアトは眠っているブルーナの髪をそっとなでた。


ブルーナが目を覚ます気配はなく、弱々しく息をしているだけだった。


「ブルーナに【竜の愛し子】の模様を与えても誰も気づかなかった」


竜神ウィルペアトは、メイドもついてないブルーナを哀れに思い四人の精霊を送った。


水の精霊がシャワーの水を出し、火の精霊がシャワーの湯を温め、風の精霊がブルーナの長く美しい髪を乾かし、地の精霊がブルーナの髪をとかしブルーナの着替えを手伝った。


ブルーナが外に出かけるときは、地の精霊が馬車に、風と水の精霊が馬に、火の精霊が御者に姿を変えた。


パーティーやお茶会に着ていく服のないブルーナのために、竜神ウィルペアトはドレスや靴や宝石を贈った。


ブルーナを王太子の婚約者の地位から引きずり下ろしたい王妃と、カーラを婚約者にしたい王太子は、ブルーナのために割り当てられた王室の予算をカーラのために遣っていた。


公爵一家はブルーナを虐げるだけで、ブルーナの食事の用意すらしなかった。風と地の精霊が、ブルーナに果物などを差し入れ、水の精霊が食堂からパンやスープを調達し、火の精霊が温めてからブルーナに食べさせていた。


教会は聖女ブルーナを崇拝している風を装っていたが、その実先代の聖女エッダに似た神秘的な容姿のブルーナを、教会の看板にして寄付金集めの道具として利用していただけ。


教会はブルーナの身の回りのことには無頓着で、ブルーナの身につけているドレスやブルーナが使用している馬車は、王宮か公爵家が用意しているのだろうと考えていた。



王妃とノルデン公爵夫人は、教会がブルーナのドレスや馬車を用意していると思っていた。


それで誰もブルーナが綺麗なドレスに身を包み、豪華な馬車に乗っていることを疑問に思わなかったのだ。


ブルーナに使用人を付けていなかったので、ブルーナの背に竜の模様が現れ、ブルーナが【竜の愛し子】になったことに誰一人として気づくことが出来なかった。


ノルデン公爵夫人がブルーナに意地悪をせず、ブルーナに一人でも使用人をつけていれば、こんなことにはならなかったのに。


ブルーナが断罪されたパーティーの夜、竜神ウィルペアトと四人の精霊はほころびかけた国境の壁(結界)の修復に当たっていた。


「こんなことになるなら、四人の精霊を君の側から離さなければよかったよ」


竜神ウィルペアトは自身の行動に思慮がかけていた事を反省した。


この国の民を守るために作った国境の壁。だがこの国の民は竜神ウィルペアトが一番守りたかった存在、ブルーナを傷つけた。


人々はブルーナの名誉を傷つけ、誇りを踏みにじり、罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせ、石を投げつけたのだ。


「僕の手助けは無意味だったのか……ブルーナへの加護も、シュトース国への加護も」


竜神ウィルペアトは苦しげに眉根を寄せた。


竜神ウィルペアトがこの地に降り立って二百年、年月の経過とともに人々の信仰が薄れていることに彼は気づいていた。


シュトース国では二百年間豊作が続いたため、人々は飢えるという感覚を忘れ、食料を大切に扱う心を失った。


食べきれないほどの料理を作り、半分以上廃棄する生活に慣れきっていた。


また(おご)りは人を凶暴化させた。結界の力で体が小さくなり、力も魔力も弱まり無害と言えるほど弱体化したモンスターを、暇つぶしに襲い、一方的になぶり殺しにするものが現れたのだ。


二百年前竜神ウィルペアトがシュトース国の民を救ったのは、圧倒的な力を持つモンスターに、か弱き人たちが成すすべもなく甚振(いたぶ)られるのを見て、気の毒に思ったからだ。


だが今では逆に力を持った人間が、弱体化したモンスターを娯楽のために殺戮(さつりく)している。


竜神ウィルペアトはそのことに気づき、愕然(がくぜん)とした。


「僕がしたことは……人間という新たな怪物(モンスター)を作り出したに過ぎなかった……」


竜神ウィルペアトはもともとは神ではなく、竜人族という人よりも長寿で、優れた能力を持った種族の一人に過ぎなかった。


「僕は英雄と崇められ、神として(まつ)られ、おごってしまったのかもしれない……」


竜神ウィルペアトは自戒を込めてそう口にした。




☆☆☆☆☆





それから一週間経過しても、ブルーナは目を覚まさなかった。


竜神ウィルペアトは一日に一度魔法でブルーナの体を清め、ブルーナの身にまとっている衣服や、使用しているシーツを新品のものにかえた。


ブルーナは眠ったままだったが、時折うわ言を漏らすことがあった。


「民……民のために……祈りを、(ささ)げな…くては」ブルーナはうわ言でも民を気遣っていた。


「こんな目に遭わされても、民を慈しむ心を忘れないなんて、君の心根は清らかで思いやりに満ち(あふ)れ美しいのだね」


竜神ウィルペアトはブルーナの汚れなき心に惹かれていた。


「君が目を覚ましても民に会わせたくないよ。君はあんな目に遭っても人々に乞われれば、また彼らのために祈りを(ささ)げてしまいそうだから。民に祈られる対象の僕が、シュトース国の民に守るべき価値を見出せなくなっているというのにね」


竜神ウィルペアトはシュトース国の民に、ブルーナが祈りを(ささ)げるだけの価値があるとは思えなかった。


「今は民のことを忘れ、ゆっくりお休み」


竜神ウィルペアトは眠っているブルーナの髪を優しくなでた。


「…………いっそのこと、眠っている間に何もかも忘れてしまえばいいのに、つらいことも、苦しいことも、傷つけられたことも全て君の記憶から消えてしまえばいいのに」


竜神ウィルペアトが発した言葉は、言霊となり数カ月後、現象としてあらわれることになる。




☆☆☆☆☆




三カ月後、目を覚ましたブルーナは何もかも忘れていた。


「あの、ここは……? 私はいったい……

あなたは誰ですか?」


竜神ウィルペアトは自身が何気なく発した言葉が、呪文として効果を発揮し、ブルーナから記憶を奪ったことを知った。


「そうだね、まずは何から話そうか……」


竜神ウィルペアトはブルーナの髪をなで、穏やかにほほ笑んだ。


竜神ウィルペアトはブルーナに、自身の名を告げ、倒れていたブルーナを助けたとだけ告げた。


「君がどこの誰か分からないし、名前も知らない」


「そうですか……見ず知らずの方に助けていただいてなんとお礼を言ったらよいのか」


「気にしないで、ところで僕は今から旅に出るんだけど、よかったら君も一緒にどう?」


「えっ…?」


ブルーナは恩人の唐突な言葉に虚をつかれた。


そして自身のいる、ベッド以外に何もない真っ白な空間を見回し、背筋が寒くなった。


『こんな何もない空間に取り残されたくない!』


「あのご一緒してもよろしいのでしょうか?」


ブルーナは差し出された竜神ウィルペアトの手を取った。


「もちろん」


竜神ウィルペアトは人の良さそうな笑みを浮かべ、転移の魔法を唱えた。


竜神ウィルペアトがシュトース国を離れた瞬間、シュトース国を覆っていた結界の役目を果たしていた壁が崩壊し、人々の信仰の象徴であった竜神ウィルペアトの像やモニュメントやレリーフなどは、大きさの大小に関わらず全て崩れ落ちた。


そしてそれはシュトース国の地獄の始まりであった。




☆☆☆☆☆





――結界が消えた一カ月後――

 



「各国への援軍の要請はどうなっている?」


国王は疲れた顔で玉座に座っていた。水や使用人が満足に確保できず、何日も風呂に入れぬ日が続き、衣服も一週間同じものを身に着けていた。食事も一日二回に減らされ、出されるものはパン一つとゆでたじゃがいもだけだった。


ゆったりと湯船に浸かり、新品のパジャマを身にまとい、肌触りのよい清潔なシーツが敷かれたふかふかのベッドで寝たい。 


子牛の香草焼きステーキ、若鶏の丸焼き、ビーフシチュー、子牛のフィレ肉のポワレ、アボカドとエビのカクテルソース、オニオングラタンスープ、鴨肉のコンフィ、ムール貝の白ワイン蒸し、いちごの乗った生クリームのケーキ、アイスクリームを添えたチョコレートケーキ、木苺のソースのかかったチーズケーキが食べたい……国王は疲労が蓄積し現実逃避を始めていた。


各地でモンスターの猛攻は続き、結界に近い地方の領地からモンスターに侵略され機能しなくなっていた。


辛うじて残されている都市は、王都と王都に近い侯爵家以上の貴族の領地だけとなった。


「全て断られました。書状には【我が国の魔道士はろくな魔法も使えない能無し(ぞろ)い、貴国のお役には立てそうにありません】と記されておりました」


「そうか」


国王は玉座に肘を突き、大きく息を吐いた。


かつて自分たちが他国の魔道士をさげすみ吐いた言葉を、今になって返されたのだ。


「無理もない、今まで他国の救援要請を全て無視して来たのだからな」


『他国の窮地を見捨てるのは考えものです。自国が窮地に陥ったとき誰も助けてはくれませんよ』


かつて他国の王に言われたことを思い出し、国王は疲れた顔で頭を押さえた。


他国の王の負け惜しみだと思い、国王は耳を傾けなかった。


「シュトース国には他国からのモンスターの侵入を防ぎ、国内のモンスターを弱体化させる結界があるから大丈夫と高をくくってきた。竜神ウィルペアトの加護の名のもとに二百年あぐらをかいてきたつけが、今まわってきたというわけか」


なぜ自分の代に? というのが国王の正直な気持ちだった。


「余を始めこの国の者は市井の者まで、竜神ウィルペアトの加護を受けていない他国の魔道士や剣士を馬鹿にしてきたからな。ろくな魔法や剣術も使えない能無しばかりだと散々あざけってきた」


国王は眉間に出来たシワを指で伸ばしながら、再度大きな息を吐いた。


「隣国の国王はなんと言っている?」


「【兵士一人につき、兵士一人と同じ重さの金を出すなら考えてやる】そうです」


「そうか……」


竜神ウィルペアトの加護を受けた、シュトース国の地は清浄で、川や泉の水一つとっても他国のもととは比べものにならないくらい清らかだった。


シュトース国の水で溶いた薬は効き目が倍増すると言われ、不治の病を患っている王子がいる隣国の国王から水を譲って欲しい、もしくはシュトース国で王子を療養させてほしいという要請を受けた。


国王は隣国の王子の受け入れを拒否し、相手の足元を見て高額で水を売りつけた。隣国の国王に水コップ一杯と同じ重さの金を要求したのだ。


隣国の国王は水を高額で売りつけようとするシュトース国の王に、憤慨した。


結局、隣国の王子は病をこじらせ亡くなった。


国王はまたしても己が相手に放った言葉を、そっくりそのまま返される形となった。


「もっと他国の者にも心を配り思いやりを持って接しておくべきだった」


国王は他人の足元を見て、親切にしなかったことを後悔していた。


「王太子と王太子妃はどうしている」


「幽閉されている部屋で、お互いが相手に罪をなすりつけ、一日中罵り合っております」


「さようか……」


国王はあの二人をどうしようか考えていた。本物の【竜の愛し子】を陥れ、【竜の愛し子】を騙った愚かで浅ましい王太子と王太子妃。


二人を矢面に立たせ、断罪し、処刑し、民の怒りを鎮めることは容易い。


だがそうなれば、先々代の聖女エッダがいながら侯爵令嬢と浮気し、婚姻前に侯爵令嬢との間に子をなした己の責任も追求される。


「聖女を軽んじるのは王家の伝統なのか!」と人々は騒ぎ立て、国王を責めるだろう。


たとえ滅びを待つしかない国でも、国王は最後の瞬間まで王でいたかった、玉座にしがみついていたかった。


「この国はいずれ滅びる。王太子と王太子妃は最後の瞬間まで幽閉しておけ」


「御意」


「王妃はどうしている?」


「一日部屋に閉じこもっております。ドレスの上に別のドレスを羽織り、その上にまた別のドレスを羽織り、それに飽きたら部屋にあるアクセサリーを全て身につけ、全部自分のものだ、誰にも渡さないと呟いておられます」


「そうか、王妃の心は壊れてしまったようだな」


ドレスという言葉を聞き、国王は不意にブルーナのことを思い出した。


「婚約破棄されるまでブルーナの着替えを手伝っていた人間は分かったのか?」


「いえ依然不明のままです。王妃殿下とノルデン公爵夫人はブルーナ様を失脚させようとドレスや使用人の手配どころか、馬車や御者の手配すらしていなかったようです」


「では教会が手配していたのか? 教会はブルーナを気に入っていたからな」


「いえそれも違います。教会はブルーナ様が先々代の聖女エッダ様に似ていたため金儲けのために利用していただけです。教会はブルーナ様の身の回りのお世話は王家と公爵家がしていると思っていたようです」


「お互いがブルーナの世話は相手がしていると思っていたわけか。ますます分からなくなった。ブルーナのドレスや馬車の手配は誰がしていたのか……?」


国王は長く伸びたひげをなでた。


「いまさらそれが分かった所でどうにもならぬな、もうよい下がれ」


報告に上がっていた騎士は恭しく礼をし、(きびす)を返した。


「国王陛下……」


騎士は扉の前まで歩くと、後ろを振り返った。


「なんだ? まだ用があるのか?」


「いえ、お体を大切になさってください」


騎士はそう言って深く礼をすると、扉を開け部屋をあとにした。




☆☆☆☆☆




騎士が退室すると玉座の間は静寂に包まれた。


口うるさい側近も、王の護衛もこの日は見えなかった。


国王は疲れているから休憩でも取っているのだろうと、気にも止めなかった。


国王の頭は別の心配事で占められていた。


「ブルーナを傷つけた者はみな酷い死に方をした……なのに王太子と王太子妃と王妃が比較的軽い罰で済んでいるのはなぜだ?」


ブルーナが【竜の愛し子】だと分かったあと、ノルデン公爵は妻に毒を飲ませ、自らも妻と同じ毒を(あお)った。


公爵夫妻が飲んだ毒は即効性のものではなかったため、公爵夫妻は二週間熱と嘔吐(おうと)と発疹に苦しみ、もがき苦しみながら死んでいった。


パーティーでブルーナに料理を投げつけた貴族は、高熱を出しベッドから起き上がれなくなり、体中に発疹が出来、それが人に伝染るものだと分かり、家族や使用人に火(あぶ)りにされた。


ブルーナに石を投げつけた市井の者たちは、肉が腐る病にかかり、家族からも見放され、「災いの元凶!」と罵られ街から追い出された。王都の外はモンスターがうようよしている。病を発症した体で生き残ることは不可能だ。


ブルーナを金儲けの道具にしていた教会関係者は、起きているときは頭をナイフで刺されるような痛みに苛まれ、寝ているときは真綿で首を絞められるような苦しみに襲われ、多くの者が自ら命を絶った。


王太子と王太子妃は互いに罪をなすりつけ罵り合い、ときに取っ組み合いのけんかをしている。


王妃は持っている宝石を全て身につけ、ドレスの上にさらに別のドレスをまとい、「オーホッホッホッホッ! 全て私の物よ!! 誰にも渡さないわーー! ひーひっひっひっひっひっ! あーハッハッハッハッハッハ!」と気が狂ったように一日中笑っている。


「皆が死ぬような目に遭っている中、幽閉され罵り合うだけで済んでいる王太子と王太子妃、気が狂っただけで済んだ王妃、玉座に座っている余、四人だけなぜこんなに軽い罰で済んでいるのか……?」


王は独り言を呟き首をかしげた。


「まさか……!」


ある考えにたどり着き、国王は玉座から立ち上がった。


「われわれには罰はまだ下っていないのか? 今からもっと恐ろしい目に遭う……!?」


国王は自ら発した言葉に戦慄(せんりつ)した。


「嫌だ、嫌だ……! 肉が腐り落ちるのも、遅効性の毒で死ぬのも、高熱にうなされるのも、激しい頭痛に襲われ苦しむのも、真綿で首を絞められるのも全て嫌だっっ! 誰か、誰かおるか!!」


国王がいくら叫んでも、返事はなかった。


普段なら扉の外には衛兵が控えていて、国王が声を上げれば飛んでくるはずなのに、今日は衛兵の気配すら感じない。


そのとき城門の外から「「「うおおおおぉぉぉぉ!!」」」と、大地を揺るがすようなうなり声が聞こえてきた。


食糧難にあえぐ民衆が、王宮には食料があるはずだと、ナイフや鎌やフライパンを片手に押し寄せてきたのだ。


「いかん、このままでは、民になぶり殺しにされる……!」


国王は冷や汗をかいた。


「誰か! 誰かおらぬか! 毒杯を……毒杯を持て! 毒がないなら今すぐ剣で余の首を()ねよ!!」


国王は城中の扉を一つずつ開け、臣下を探したがメイドひとり見つからなかった。


みな暴動の気配を察し、金目のものと(わず)かな食料を持って逃げ出したのだ。


城に残っているのは国王と王妃と王太子と王太子妃となったカーラだけ。


偽物の【竜の愛し子】を仕立て、本物の【竜の愛し子】であるブルーナを断罪し、神の加護を失う原因を作った無能な王族は、臣下や使用人に見捨てられたのだ。


国王は王族の自害用の毒を探している所を民に見つかり、拘束された。


時を同じくして王妃も王太子も王太子妃も捕らえられた。


国王は自身が望んだとおり、死ぬ瞬間までこの国の王だった。


捕らえられた国王と王妃と王太子と王太子妃は、広場に連れて行かれ、群衆の見守る中で処刑という名のもとに、(むご)たらしく殺された。



☆☆☆☆☆




王族がいなくなったあとも、シュトース国の各地でモンスターが暴れまわっていた。


王族がいなくなったことで貴族や兵士の統率が取れなくなり、王族がいたときより治安は悪化した。


その間もモンスターは、人々を襲い、住居を破壊し、食料を食い荒らした。


人々は少ない食料を奪い合い、パン一つを巡って殺人が起こるまで治安は悪化した。


竜神ウィルペアトの加護を受け二百年の間平和に暮らしていた……いや二百年の間に傲慢になり怠惰な生活を送り、他国や他の生き物を虐げてきたシュトース国は、竜神ウィルペアトの加護を失ったあと三カ月と持たずにモンスターに滅ぼされた。




☆☆☆☆☆





水平線まで続く海、砂浜を淡い水色のルダンゴドの下に純白のシュミューズ・ドレスを身にまとった黒髪の少女が、パシャパシャと音を立てながら素足でかけていく。


「ウィルペアト様、早く早く、こちらに大きなカニがいるんです」


少女は羽飾りがついたボンネットを押さえながら振り返った。


「今いくよ」


ゆったりとした足取りでウィルペアトが少女のもとに向かう。


少女の周りには火、水、風、土を操る四体の精霊もいた。


かつて竜神と呼ばれたウィルペアトには、今しがたかつて自身が加護を与えていた国がモンスターにより滅ぼされたことが分かった。


だがウィルペアトは目の前にいる少女にそのことを告げる気はなかった。


「シュトース国が滅びたことなんて、あの子が一生知る必要のないことだよ」


ウィルペアトの吐いた言葉は波の音にかき消された。


二人がいるのはシュトース国からいくつも海を越えた大陸、シュトース国が滅びた事実が民のうわさに上ることもない遠い遠い国。


「ウィルペアト様、見てください星型の生き物がいます!」


少女は朱色の星型の体長三センチメートルほどの生き物のはしをつかみ、ウィルペアトに掲げて見せた。


「それはゴカクヒトデだね」


「綺麗ですね」


「そうだね、でも海に返してあげた方がいいかな」


「はーい」


少女はゴカクヒトデをそっと海に返し、ウィルペアトは少女の手に浄化の魔法をかけた。


「毒はないけど念のため」


少女はウィルペアトの過保護さがむず痒くて、くすりと笑った。


「行こうオニキス……そろそろ日が暮れるよ」


ウィルペアトはブルーナに新しい名を与え、ブルーナがかつてシュトース国の聖女であったことを伝えずに一緒に暮らしている。


「もう少しだけ、星空を見てからではいけませんか?」


「夜は冷えるからね」


「お願いします、あと少しだけ」


「仕方がないね、どうしてもというならこれを着て」


ウィルペアトは自身の上着を脱いで、オニキスの肩にかけた。


夕日が水辺線の彼方(かなた)に消え、月が浜辺にいる二人を照らす。


なんの変哲もない穏やかな日常が過ぎていく。


『心の赴くままに生きても許されるよね、僕はもう神ではないのだから……』


ウィルペアトは無闇(むやみ)に人間の国に干渉し、途中で国を捨て逃げ出した罪を問われ、竜人の国に帰ることを許されなかった。


ウィルペアトはそれでも構わなかった。今この時にオニキスの隣にいられることが幸せだったから。


浜辺に並んで座り星空を眺めながら、ウィルペアトはオニキスと過ごす時が永遠に続くことを願った。


ウィルペアトの願いは魔法となりオニキスの寿命に作用し、二人はこれより五百年の時をともに生きることになる。





――終わり――






最後までお読みくださりありがとうございます。

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[一言] 半端のないざまぁ感が好きです。応援しています
[一言] 九頭竜坂まほろん様 ご返信ありがとうございました 「設定は良かったんですけどね。それを活かすだけの腕が作者にないのです。申し訳ない」 と、返信頂きましたが、いえいえとんでもありません …
[良い点] 人ってこんなに愚かで残念なのですね あり得ないような大げさな感じでは無くて、あ〜ありそう、ってくらいの設定(俺は王子だ何しても良い←こういうありえない、のが出てくるの多いですよね、王子だか…
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