一話②
恐怖から目を背けた。次の瞬間、凄い爆音と共に熱風が吹き荒れる。
「み、ぃさん」
あまりの勢いに両腕で顔を抑え膝をつかなければ飛ばされてしまいそうだ。風が止むと今度は周囲は熱風と共に何かが焼き焦げたような酷い匂いがたちこめる。二人の安否を気にして目を開けて驚いた。二人は焼けた野原でケタケタと談笑している
「いつもありがとうね。一人じゃ運ぶのが大変で、いつも助かるわ」
「いやぁ、こんなの朝飯前ですよ。それに、みぃちゃんのご飯は最高ですから」
そんな穏やかな会話がこの場で出来るのか、と驚きながらもこの世界ではこれが日常なのだろうか。私は改めて転生した世界で今、生きていることを痛感した。
「アミちゃん大丈夫? 服が汚れちゃったわね」
「いえ、このくらい大丈夫です」
「そう? 帰ったら宿の裏に井戸があるからお顔洗ってご飯にしましょう」
「はい」
顔を煤で黒くしても尚美しい。私もこんな強くて美しい女性になりたい。
朝食後、まるとカイトとカシパンの四人で集まり、二つの計画を立てた。
まずは外へ出て簡単な動物を狩りながら木や薬草を集め、それらで装備を整えること。そしてもう一つはもう数人、人を集めて新しいギルドを立ち上げ住宅地の居住権を得ること。
初対面の時はどうなるかと思ったが、想像以上にパーティーのチームワークは良かった。
大剣持ちのカイトは運動神経が誰よりも優れており、自分より大きな敵にも怯まず戦える強さがある。
魔法使いのカシパンは頭の回転が速く見た目からは考えられないくらい足も速い。戦闘においてはカイトほどではないが厨二臭い台詞と共に繰り出される魔法はどの一撃よりも強い。
そして縦持ち剣士のまる。判断力に優れていて、私たちパーティーの頼れるリーダーだ。
「今日はいつもの場所よりもう少し奥に行ってみようと思う。いつものところはもう殆ど薬草も生えてないし最近猪も見なくなっちゃったからね」
まるの提案にうんうんと頷くカシパン。私も了承する。しかし珍しくカイトが渋い顔をしているのが気になった。
「どうかした、カイト」
「んや、なんでもねー」
「そう? それならいいんだけど」
「ん。なんっていうか今日は嫌な感じがして」
「嫌な感じ?」
「外が妙に静かっていうか、なんていうか」
まだ一週間ほどの付き合いだが、こんなカイトを見るのははじめてだ。
「どうしたの?」
そこに出発の準備を終えたまるがカシパンと共にやってきた。
「んや、なんでもねーよ」
「あ、わかった。カイト、怖いんだ」
クスクスと笑うまる。
「大丈夫ですよ。僕たちのヒーラーは優秀ですから」
そう言ってまるは私の頭をくしゃくしゃと撫で回す。
「あ、ありがとう。まる」
しかし、私たちはこの時、自分たちなら大丈夫、どんな敵でもやれる。そう己の力を過信し、この世界を甘く見ていた。