一話 『朱』
寝床が硬いからか、眠りが浅く日の出よりも前に目が覚めた。窓を開けると香ばしい、いい香りがする。その匂いにつられて部屋を出るとその匂いは一階の厨房からだ。
階段を駆け降り、カウンター裏の厨房をそっと覗いてみる。すると割烹着姿のみぃさんがいた。
「おはようございます」
「あら、おはよう。昨日の……えっと名前は」
「アミです」
「アミちゃんね。随分早起きね。あ、もしかして寝床が硬くてあまり眠れないかしら?」
「いえ、そんな」
「それに朝晩はよく冷えるし、羽織るものの一つくらい、欲しいわよね」
女の子に冷えは天敵だもの。とみぃさん。
「さてと、アミちゃん」
「はい?」
「暇なら食料調達に付き合ってくれない?」
「はい、行きます!」
私の返事にみぃさんは割烹着を脱ぎ紅石のついた長い杖を手に取った。
外に行くなら武器を持っていらっしゃい、そう言われて部屋に置いたままの木製の鈍器を腰につける。それからパンプスじゃ歩きにくいからと、革製の靴を貸してもらった。
「どこに行くんですか?」
「外よ」
「え! そ、外って街の外ですか?」
「そうよ」
表情ひとつ変えずそう答えるみぃさん。
「でも外は危ないんじゃ……」
「大丈夫よ。でも、私の側から離れないでね」
昨日まるから聞いたように門には見慣れない装備で固めた人たちが数人焚き火を囲むように座っていた。
「あ、みぃちゃん。今日も食料調達?」
「そうよ」
「お供しますよ」
「あら、ありがとう。コトさん」
盾を背負った一人がみぃさんの隣に立つ。
「君は?」
「アミちゃんよ。昨日来たばかりだから色々教えてあげてね」
「よろしくお願いします」
「ん、よろしく。俺はコトブキ。コトって呼んで」
「はい、わかりました」
「いつもはこの近くにたくさんいるんだけど、今日はあんまりかしら」
そう自己紹介をしている間にみぃさんが一人でとことこと進んでいってしまう。しかも近くには大きな猪が一匹、ものすごい勢いでみぃさんに向かって突っ込もうとしているではないか。
「みぃさん!」
続きはまた明日投稿します。
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