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召喚されし帝国  作者: 特等
第1章ファシズムの転送
6/7

接触

第502SS猟兵大隊が、謎の陸地に対する潜入及び偵察任務を行なっている間、ドイツ本国ではとある特殊作戦が行われようとしていた。


首都:ベルリン


総統官邸


「ハイル・ヒトラー」


「来たか、ハイドリヒ」


総統官邸では、その特殊作戦の実行者である国家保安省長官であるラインハルト・ハイドリヒSS上級大将がヒトラーと謁見を持っていた。


ラインハルト・ハイドリヒ


第三帝国を文字通り、影から恐怖によって支配する、秘密警察ゲシュタポをはじめとした警察機関を掌握する親衛隊国家保安本部の長官であり、同組織を率いてヨーロッパ各地でユダヤ人を含めた、非ドイツとされた民族に対するジェノサイドを主導した人物である。


高い知能と人間性を極限まで捨てた様な合理主義的思考、そして何よりナチスの中でも特に冷徹かつ残忍な人物であり、その残忍さから金髪の野獣と渾名されているナチスの中でも群を抜いての危険人物である。


本来彼は1942年のプラハにて、亡命チェコ人イギリスのコマンド部隊に暗殺され、その生涯を終えたが、ヨーロッパが異世界へと飛ばされると言う異常事態に見舞われたと同時に、文字通りこの世に復活し、現在はその能力と異世界へ共に飛ばされたこのヨーロッパを完全にドイツの統制下に置く為には必要な人材であると、何故か党官房のボルマンがヒトラーに進言、その進言を聞いたヒトラーの判断で、SS上級大将へと昇進すると共に再度国家保安本部長官へと復職している。


「忙しいところを、呼び出してしまってすまなかったな」


「いいえ、とんでもありません総統閣下」


ヒトラーのその言葉にハイドリヒは、無機質にそう述べた。


「さてハイドリヒよ、君を呼び出したのは他でも無い、君に聞きたいことがあるからだ」


「聞きたい事、ですか?」


「あぁ…単刀直入に言おうハイドリヒ、今の我が大ドイツ帝国が領導するこのヨーロッパをどう思うかね?」


ヒトラーのその言葉を聞いたハイドリヒSS上級大将は瞬時に、ヒトラーが何を言いたいのかを理解した。


「私が思うに、連合軍の脅威が結果的に消滅したとは言え、このヨーロッパの大地には、未だに多くの寄生虫がおります」


「やはりそう思うか?」


「えぇ、ヨーロッパが我々の知らない世界へと飛ばされると言う異常事態と共に、連合国との戦争が終わり、更には理屈は今だに分かりませんが、ユダヤ人共も消え去るなど、良い方向には進んでいるでしょう。しかし、このヨーロッパの地にはレジスタンスやパルチザン共、さらにはポーランド人やセルビア人など、ユダヤ同様、この世から根絶せねばならない輩が多くおります。奴等寄生虫共を始末し、我々アーリア人の血を引くドイツ人により管理される事により、ようやく世界は恒久的な平和を手に入れられると考えます」 


「あぁ、その通りだハイドリヒ」


ハイドリヒSS上級大将の意見を聞いたヒトラーは添え述べると、少し間を置き、そしてハイドリヒSS上級大将の目の前に立ち、彼の目を見ながらこう述べた。


「私も君と同じ考えだ、そこでまずは、連合軍の支援をなくした、奴等レジスタンスにトドメを刺す。ハイドリヒ、鉄の心臓を持つ男よ、君のその手腕、再び奮って貰いたい」


「お望みとあらば…Mein Führer」


ヒトラーの命令に等しいその問いに、ハイドリヒSS上級大将は、ナチス式敬礼をし、静かにそう答えると、ヒトラーの部屋を後にした。


「総統閣下との会談は終わった様だな。ハイドリヒ長官」

 

ハイドリヒSS上級大将が、ヒトラーとの会談を終え、総統執務室から退出すると、入れ違う様に現れたヒトラーの元秘書でありナチス党官房長であるボルマンと偶然対面した。


「えぇ、総統閣下はヨーロッパの地に蛆虫の様に湧いているレジスタンス殲滅の為に、全力を尽くせとご命令を頂きました。私としても、ヨーロッパにアーリア人による恒久的な秩序構築の為に、微力を尽くさせていただく所存です」


「そ、そうか…うむ、それは心強い」


ハイドリヒSS上級大将の話を聞くボルマンは、ハイドリヒSS上級大将の、まるで氷の様に冷たく、そして全てを見通様し、邪魔者は全て刺し殺す様な目に圧倒され、恐怖を感じているのか額から脂汗をかいていた。


「それはそうとボルマン官房長、私の国家保安本部長官再就任の口添えを総統閣下にしていただき、ありがとうございます」


「な、なに…君以外にこの仕事を出来る人物は居ないからな、ヨーロッパの秩序回復と、我がドイツの事を考えれば当然の事だ、これからは忙しくなると思うが、我がドイツの為、存分に働いてくれ」


「勿論です…しかし、このヨーロッパから不浄を完全に取り除くには、さらに予算が必要となりますね…」


「私がなんとかしよう」


「ありがとうございますボルマン官房長、今後ともドイツの為、共に働きましょう」


「あっ、ああ…そうだな」


「ハイル・ヒトラー」


「は、ハイル・ヒトラー…」


ハイドリヒSS上級大将とボルマンの二人は、話を終えると互いに敬礼をし、ハイドリヒSS上級大将は、国家保安本部へと戻って行った。


「はぁ~」


そしてハイドリヒSS上級大将の姿が見えなくなると、ボルマンは息を吐き、汗に塗れた自分の顔をハンカチで拭った。


ここまで、ボルマンがハイドリヒSS上級大将に恐れをなすのは理由があった。


実はハイドリヒSS上級大将は、この世界にヨーロッパが転送する前から、ボルマンが党内資金を横領を含めた職権濫用によって、私腹を肥している証拠を握っており、今回の自身の上級大将昇格と国家保安本部長官の再就任を実現する為、ナチスの実力者の一人であったボルマンに彼自身の弱みをチラつかせ、半ば脅し近い形でヒトラーに取り計らってもらう様要請した。


膨大な権力に比例して、ボルマン自身には、宣伝大臣のゲッベルスや軍需大臣のシュペーア、親衛隊全国指導者のヒムラーなど、多くの政敵が存在している。


その為、もしハイドリヒSS上級大将の要請を拒否しなどすれば、たちまちその情報はそれらボルマンの政敵たちに対して公開され、情報を耳にした政敵達は、嬉々として一斉にボルマンに噛みつく事は容易に想像が出来た。


そうなればボルマンは、良くて党からの除名、悪ければゲシュタポに拘束、どちらにせよボルマンが破滅するのは目に見えていた。


(まぁいい、奴に利用されるのは癪だが、こちがら奴の要求に答えているかぎりは、手を出さない上に、手に入れた情報もこちらに流してくれるとの事だ。今はあの金髪な野獣を利用し、利用されてやるさ…しかし,いずれは…)


いつまでもいい様にはされないと決意を新たにすると、ボルマンはヒトラーのいる、総統執務室へと入室した。


「失礼します、総統閣下」 


「ボルマンか、何の様だ?」


「はっ、総統閣下…一週間後にベルリンで行われる枢軸国加盟国会議についてですが、スペインも同盟加盟を前提に、会議に参加する事との事です」


「そうか、フランコ将軍め、この期に及んでようやく重い腰を上げたか…」  


フランシス・フランコ将軍を頂点に、ナチス同様全体主義を政策として取るスペインが、ドイツを中心とした同盟である枢軸同盟への参加がほぼ確実であると言う、ボルマンの報告を話を聞きヒトラーはそう述べた。


「まぁ、しかしスペインはイタリア無き今、ヨーロッパでは、我が第三帝国に次ぐ大国だ。関係を良好にしていて損はない…スイスはどうだ?」


「今の所は、永世中立を貫く方針は変えないとの事です…」


「そうか…まぁスイス程度どうでも良い。兎に角今は枢軸同盟加盟国である、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、そして加盟が確実のスペインとの関係を強化する事が重要だ」


「その通りです総統閣下。そしていずれ近い内に、枢軸同盟を、我がドイツと総統閣下を中心とした、もっと強い同盟関係で団結する強力な軍事同盟へと発展させるべきでありますな」


「ふっ、分かっているでは無いかボルマン」


「恐れ入ります」


ヒトラーは、これからのドイツの歩み方を含めた、未来の展望を含めた自身の意見をボルマンに述べ、ヒトラーが何を言いたいのかを瞬時に理解したボリマンは媚びへつらう様にヒトラーにそう言った。


その頃


カロリング王国領内


「Fräulein、怪我はなかったか?」


「な、何者だ…その格好は?」


(盗賊…いや、統一された格好にこの規律の高さ…かれらは、兵士だ…ならば一体何処の、それにあの武器は…)


女の子は、自分にそう話かけて来たアドラーSS大尉、そしてその後ろに居るSSの兵士たちの姿を見てそう呟くと、未だに混乱している自らの頭をフル回転させ、彼らの服装や所作、規律の高さからどこぞの兵士であると気づいた。


一方のアドラーSS大尉もある事に気付いていた。


(彼女の言葉…フランス訛りがあるがドイツ語だな…少なくとも、コミュニケーションに、言葉の壁と言う支障は無さそうだな)


「どうします大尉?」


「この少女は重要な情報源だ。ひとまず保護して、スコルツェニー少佐と合流しよう」


史実において、ユダヤ人やスラブ人など、ナチスドイツの人種思想的に劣等民族とされた人間や、ナチスの思想にそぐわない人物は、大人子供関係なく殺して来た親衛隊だが、彼らとて人の子、命令であれば恐らく国の為、上官の命令と自らの良心にに言い訳をし、殺すだろうが、幸いにもそんな命令は出ておらず、何より彼女はこの道の世界で初めて出会った貴重な情報源。


その為、アドラーSS大尉は、彼女を連れ、スコルツェニーSS少佐率いる本体と合流する事を部下達に述べた。


すると


「助けてくれて感謝します!だけど急いで近くの村か街に行かなくては!でなければ私達の村が!」


少女は錯乱した様にアドラーSS大尉等にそう訴えると、御礼もほどほどに立ち上がり、その場から去ろうとした。


しかし、彼女は先ほどの恐怖と疲労からかその場に倒れそうになった。


するとアドラーSS大尉は咄嗟に倒れそうになった彼女の体を支えてあげ、ゆっくりと再び地面に座らせた。


「Fräulein、君の名前は?」


そしてアドラーSS大尉は、静かにその女の子に名前を聞いた。


「エマ…エクロット村駐屯部隊所属の兵士です」


「なるほど、この甲冑からなんとなく予想はついていたが、やはり兵士か…」


女の子改、エマ自身が着る甲冑を含めた格好や話し方から何となく兵士ではないかと気づいていたアドラーSS大尉は、そう徐につぶやいた。


「それじゃぁFräuleinエマ、ひとまず何があったのか、落ち着いて教えてくれないか?」


「実は…」


アドラーSS大尉にそう聞かれ、エマは未だに先ほどの怯え、そしてアドラーSS大尉達に対する困惑はあるものの、もうこの状況では話すしか無いと考え、ある程度落ち着いた様子で静かに語り出した。


「成る程、盗賊の大部隊が君の村を…」


「このご時世に盗賊とは…」


「恐らくこの世界は我々がかつていた世界よりも社会体制や治安体制がしっかりしていないのだろう…それに…」


「?」


「いや何でもない」


盗賊というワードにふとアドラーSS大尉は、ある事が頭に横切った。


それは、1941年自身が第1SS装甲師団所属の士官として、東部戦線に従軍した際に目撃した、アインザッツグルッペンや他のSS部隊によって引き起こされたスラブ人や、現地のユダヤ人に対する略奪や虐殺などの盗賊に等しい蛮行の数々と戦争犯罪であった。


アーリア人の楽園を作る為と言う大義の元、盗賊の様な事をやって来た我々SSも、その盗賊達の事を言えないなと言おうとしたが、ここにいる他の隊員達がゲシュタポの紐付きである可能性も考え、又そんな親衛隊の指揮官階級である自分もそんな事を言う資格はないと考え、アドラーSS大尉は話を濁した。


「まぁ兎も角だ、一度スコルツェニー少佐と合流する必要があるな」


アドラーSS大尉はそう呟くとすかさず、通信兵に命じて本隊を率いるスコルツェニーSS少佐に状況報告と本体との合流を求む旨の要請を連絡させた。


「大尉、司令部より通信です」


「何と言っている?」


「ハッ、保護した少女を連れて、司令部へと合流する様にとの事です」


部下からの報告を聞いたアドラーSS大尉は、再びエマの方を向いた。


「Fräuleinエマ」


「は、はい」


「ここにいては危険だろう、ひとまず我々と共に来ないか?」


そしてアドラーSS大尉は、エマに手を差し伸べるとそう言った。


数十分後


「…」


その後、アドラーSS大尉に連れられエマは、第502SS猟兵大隊の本隊と合流したが、エマは自分の目の前に広がる景色、装甲車や自動小銃など、ドイツ軍の最新兵器やその兵器で武装した、大勢の武装SS達の姿を見て、声を失っていた。


(これ程の大部隊…それにあれは鉄の獣…もしかしてこの人達)


だがエマは、言葉を失いながら頭の中にある事が横切りそう思った。


「さぁ、こっちだ」


「は、はい」


すると、そんなエマを、アドラーSS大尉はリードし、スコルツェニーSS少佐の元へと連れて行った。


「Heil Hitler、少佐例の保護した少女を連れて来た」


「ご苦労、アドラー大尉。はじめましてFräulein」


「は、はじめ…まして」


そして、連れて行かれた先にいたスコルツェニーSS少佐の姿を見たエマは、身長192㎝、顔の左頬につけられた傷と歴戦の勇姿を思わせる空気を醸し出すスコルツェニーSS少佐に、萎縮してしまった。


(なんと言う迫力…見ただけで分かるこの男のオーラ…これ程の手練れは我が国の騎士や凄腕の冒険者達の中でも滅多に見たことが無い…しかもこの人達の姿は…)


だが一方でエマは、スコルツェニーSS少佐やアドラーSS大尉、その他のSSや国防軍からの出向兵で編成された503SS猟兵大隊の兵士達ならば、本当に自分の村を救ってくれるかもしれないと希望を持っていた。

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人物説明



オットー・スコルツェニー


階級:SS少佐


実在した武装親衛隊の将校。


武装親衛隊の精鋭コマンド部隊である第503SS猟兵大隊を率い、ムッソリーニ救出を目的とした、グランサッソ銃撃など、様々な特殊に参加し、ヨーロッパ一危険な男と異名された軍人。



ラインハルト・ハイドリヒ


階級:SS上級大将


実在した親衛隊の高官で、親衛隊長官であるヒムラーに次ぐ権力を持つ、親衛隊の最高幹部の一人。


秘密警察ゲシュタポや親衛隊情報部を支配下に置き、ドイツ国内外での保安および諜報活動を行う巨大組織である、国家保安本部を設立し、ドイツを監視社会へと作り替えた、親衛隊の秘密警察の第一人者、そして、ユダヤ人の絶滅を狙った最終的解決の立案、ポーランドや東部戦線にて行われた虐殺作戦の実行部隊であるアインザッツグルッペンの総指揮など、ナチスが犯した虐殺作戦の最高責任者でもある危険人物であり、その冷酷さと親衛隊入隊当時の現場での凶暴な働きから、"金髪の野獣"の異名と共に、ドイツや諸外国に悪名を轟かせた人物。


1942年に、当時副総督として赴任していたチェコの首都であるプラハにて、イギリスが送り込んだ、亡命チェコ人兵士のコマンド兵によって暗殺されたが、ドイツが異世界へと転移したと同時に復活、現在はこれまでの功績と、ナチスの実力者の一人であるボルマンを、汚職の証拠をチラつかせる事による脅迫によって、親衛隊上級大将の階級を獲得、そして国家保安本部長官に再度就任し、以前以上の徹底したドイツおよび占領地の国民の管理と監視、レジスタンスやパルチザンに対する徹底した弾圧、他国に対する諜報活動に力を入れている。



マルティン・ボルマン


肩書:党官房


ナチスの最高幹部の一人。


元々はどこにでも居る普通の党員だったが、卓越した資金管理で頭角を表し、ヒトラーと会えるほどにまで出世した際は、ヒトラーに別荘や犬のブロンディをプレゼントする、菜食主義者のヒトラーの前では、食事をヒトラーに合わせ好物の肉の摂氏を控える、ヒトラーの言葉を一言一句逃さずメモするなど、徹底した諂いと媚び売りによってナチスの最高幹部まで上り詰めた人物。


戦争中は戦争指揮に忙しいヒトラーの代わりに党の統括を行う、ヒトラーに渡す情報を精査するなど、ナチ党を事実上、ヒトラーに代わり支配するほどの力を持って行ったが、ゲッベルスやシュペーアなど、他の大勢のナチス幹部や党員からは嫌われていた。

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