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第十九話 ロマンスにマッスルは要らない。





「……ん」


 気が付けば目の前に見知らぬ天井。


「……言わないぞ。知らない天井だなんて言うと思うなよ……」


 茫洋と呟く。

 どうやらベッドに寝転がっているようだ。起きているのだが意識がはっきりしない。

 消毒液の匂い。緩やかな風。窓際で揺れるカーテンの音。

 何でこんな所に居るのだろう。

 霞みがかったように頼りない意識の中で、ぼんやりと記憶の紐を手繰り寄せる。


 そう、確か――




 ぶっ倒れた後担ぎ込まれた病室にて、寝惚け頭の一幕である。









ロマンスにマッスルは要らない








 初めに脳裏に浮かんだのは一人の女。

 その満面の笑み。


 の、下。いや首じゃない。もうちょと下。


「……だぼだぼのタンクトップを押し上げる、特盛り……!」


 あ、何か意識が覚醒してキタぞ。

 燃え上がる俺のリビドー。迸るパッション。


「ゆるゆる……たゆたゆ」


 ゆるゆるの、それも大柄男性向けのタンクトップを特盛りに被せたら……向かう所敵無しの奔放さが様々な三次元空間的自由度でたゆんたゆんと……。


「ち、チラ……チラ……!」


 しがみ付くと素敵にたわみ潰れる魅惑の果実。何も補助する様な物を身に付けていないのにつんと上向く恐ろっぱい。

 身動きする度にチラリズム全開で横から谷間からむ、むはーーーーーーーーーー!


「おっぱーーーーーーーー!!」


 跳ね起きた。

 そして死にたくなった。

 どういう寝起きの叫びだおっぱーって。どんだけおっぱいしたいんだ俺は。


「おぷ、おぱ……でか……でっぱい……!!」


 いかん日本語が喋れない……!

 ちなみに、デカイ+おっぱい=でっぱい、だ。ファイナルアンサー連打。みのさんに焦らす暇も与えない。

 異論は認めない。


 ――いいか、重要なのはイメージだ。

 俺の胸元くらいまでしかないロリロリ系美少女に核クラスの破壊力をお持ちになられる超強力魅力まき散らし兵器が二つ搭載されている……ッ。

 しかもその恰好はダボダボで色々アウアウな角度と柔らかさと大きさロリ……ッ!

 これはッ、悶えざるをッ、得・な・いロリ……ッッッ!!


 うん、俺が何に煩悶しているか良く分って頂けると思うロリ。おっぱい。

 ……ロリに巨乳は、反則だと是非学会で発表したい。

 いや、学会で発表するにはそれを裏打ち出来るだけの綿密な研究が必要なのだ。ということは……研究という名目で……!


「……主殿?」


「ぬうおぁぁぁぁぁぁぁ!? 見んといて! 後生やから見んといてーー!」


 しまった人が居ないか確認するの忘れてた興奮で!

 声がしたのは扉の方だ。誰かが入って来たのに全く気付かなかった。

 ババッとベッドの上で顔を隠し、指の間から誰が来たのか覗き見る。


 目に入るのは磨き上げた真珠の様にきめ細やかな白い肌。

 微かな風にたなびく金糸の長髪。

 甘やかにほの赤く色づく頬。

 驚きに見開かれているのは大きな宝玉をそのまま嵌め込んだかの様な美しい碧の瞳だ。

 子供っぽい顔立ちの中ではっきりと女を主張する桜色の小さな唇。

 体に沿ったシルエットの、ピンクのワンピースからすらりと伸びた手足は細く。

 胸元を押し上げる魅惑の双丘も、きゅっと締まった腰のラインから続く脚線も艶やかなバランスを保っている。

 小さな体にダメージ限界突破、はち切れんばかりの色気を纏った女――レティシアはくしゃっとその小さな顔を歪め、


「あ・る・じ・ど・のーーーーーーーーーーー!!」


「あ、よりによってレデゅぐ!!」


 勢い良く俺に突撃。

 俺の胸元に大陸間弾道ミサイルよろしく飛び込み頭突きを敢行したのである。

 当然、ベッドの上で起き上がっていた俺は堪え切れず。


 ゴチン! ベッド上部の金具で見事に頭を打った。頭の中に星が散り、声も出せずに悶える悶える。

 じんわりと涙が浮かんだ。


「い・あ・お・お・お・お・う……!」


「主殿! 主殿! 主殿ー! ようやく目を覚ましたのか! 我の、我のことは覚えているのかーー!?」


 グリグリグリ! 小動物の如く頭を擦りつけ、精一杯の力で俺の体にしがみ付くレティシア。

 無事そうな姿を見て、俺は安堵の溜息を吐いた。

 だが、冷静になった俺はここで重要なことを一つ思い出す。

 ここ多分病院。つまりここ病室。そして俺は勿論けが人。そう、いきなり動いたツケが、一気にやってきたのだ。


 どういうことかと言うと。



 痛い。超シリアスにマジ痛い。

 特にレティシアに掴まれてるそこは銃弾が掠った所でぇぇぇぇぇぇ!


「……いきなり何しやがるんですかレティシアさんそこは止めて怪我してる所なのぉぉぉぉぉ!」


「あ、す、すまぬ主殿!?」


「マテそこはそこで違う怪我ががががが……!」


「ぬあ!?」


 掴む場所を変えるんじゃなくて、頼むから手を離して下さい。

 紅葉の如き小さな手でも、全力で握られれば当然痛い。

 どうやら全身どこもかしこも痛めているらしく、レティシアが掴む所掴む所痛いのだ。お陰で怪我自体は完治してないのは良ぅく分った。

 電源を落とすように倒れてから、そんなに時間は経っていないのだろう。


 一応病院であることをギリギリ思考の隅から引っ張り出し、驚異の小声叫びでレティシアに手を離してくれるよう伝える。

 マッスルレティシアとの生活の中で体得した特技がこんな所で役立つとは。何て不毛なんだ。


 離せ! 離しませぬ! のアホみたいな遣り取りをした後、レティシアは手を離さない代わりに俺の上にこのまま乗っかっておくことで妥協した。

 ……う、嬉しくなんてないよ。本当だよ?


「……まぁ、とにかく。あれからどうなったんだ?」


「ちょっと待つのだ主殿!」


 ずい、と突き出された小さな手の平に言葉を止める。

 うむ、と大きく頷いたレティシアはずりずりと俺の胸下まで掛かっている掛け布団を下げ。


「ぅわふー」


 ぽふ、と抱きついて来た。

 怪我に障らぬ様に気を払っているのか、添えられた手は酷く優しい。

 俺の頬に擦り付けられる頬。シャンプーの匂い。レティシア自身のやけに甘い香り。

 薄い入院服とワンピース越しに、レティシアの柔らかく、暖かい体の感触を感じる。


「……」


 俺はその抱擁を冷静に受け止めた。顔には菩薩の如き慈悲深い笑みを浮かべ、ゆっくりと手を動かしてレティシアを抱きしめ返す。

 不安だったのだろう、何せ俺は目の前でぶっ倒れたのだ。あやす様にレティシアの背を撫で、髪の毛を指で梳く。

 嘘だすまん。

 残念にもこの長きに渡る二十年、生まれ落ちてより二十年、清い体を保ってきた俺にはそんなの難易度が高すぎるイベントである。

 一瞬で頬と言わず首までが真赤に染まり、心臓の音がガンガンと煩く鐘を高速連打。

 何か言おうと口を開けば、出てくるのは音にもならない動揺だけである。


「うー……主殿、主殿の匂いだ」


「あ、あお、あの……!?」


 男として情けなさ過ぎる裏返り声(オットセイ似)で、汗をだらだら流しながら何とかそれだけ言葉にした。


「うるさい黙るのだ主殿は我にも撫子殿にも久美子殿にもたくさん心配掛けたのだぞ! す、少しくらいその……じゅ、充電させてくれても罰は当たらぬだろう……」


 耳許で囁く様に呟かれ、レティシアの吐息が耳朶を撫ぜる。ぞくぞくと背筋に電流が走って、ひょ!? と短く悲鳴を上げる。

 言葉にしてはならない気持ちよさに身を捩った。


「……ま、まあ我も鬼ではないのでこれくらいで許して差し上げよう! ぬは! ぬははは!」


 ガバリと起き上がり、多分俺に劣らず真赤に染まったレティシアの顔を見て、思わずぷっと笑いが漏れる。

 緊張していた体が、心地よく弛緩する。顔を見合わせて、恥ずかしさを誤魔化す様に笑い合った。

 腕を伸ばし、その柔らかな頬をぶよっと突つく。


「顔赤いぞー」


「あ、主殿こそ!?」


「はっはっは」


 笑い、話題を切り替える。そうでもしないと正直恥ずかしいのだ。

 頬の熱さはまだ取れない。きっと、しばらくこの胸の高鳴りはこのままだろう。


「んで、事の顛末は?」


「……うむ」


 レティシアは、数度呼吸を落ち着けてから俺が倒れた後のことを語りだす。


「主殿が倒れた後、とにかく急いでここに運び込んだのだ。後のことはひとまずおじい様に任せることにして、我と撫子と久美子は付添いで一緒に病院までやって来た。それが昨日のことだから、主殿はほぼ一日寝ていたことになるな。あ、我を誘拐した連中のことは、もう心配せずとも良いぞ。何せおじい様が直々に『ぬはは! 片腹痛いわ! 後片付けをしてやろうぬははは!』と仰っていたから。多分、今日辺り事情を説明しに来るのではないかなぁ」


「……レティシアのおじいちゃんって何者なんですか」


 気になる。凄い気になる。普通の御爺ちゃんは壁を突き破って登場したりしない。

 絶対身長二メートル越えてたぞあの爺さん。


「さぁ?」


 ぐり、と首を傾げるレティシア。いやいや。


「さぁって……」


「とある過激派武装集団を一人で壊滅させたとか、内乱を単身で治めたとか、暴走機関車を体当たりで止めたとか、ハイジャックされた飛行機を取り返して自爆テロを未然に防いだとか、そういうのは聞いておるぞ」


 ……。


「どう考えても覇王様ですありがとう御座いました」


「?」


「いや……いいんだ、続けておくれ」


「後、何であのタイミングで撫子殿達とおじい様が現れたかは……」


「かは?」


「撫子殿から聞いたのだが……ぬぅ、どうやら、主殿が出発した後居ても立っても居られなくてお金や人脈に物を言わせて追跡させて助けに行こうとしたら偶々おじい様の耳にそれが入ったらしくておじい様は何というかそういう争いを治めるのが非常に得意な方なので付いて来てもらったと! そういう訳だ分ったか主殿お汁粉飲むか!?」


「頼むから普通に喋れ。後お前今どっからお汁粉出したんですかしかもホット……!」


 シット! 眉間を揉む。ついでに眼窩から米噛み、耳の所にあるツボまでぐにぐにとマッサージした。

 うろ覚えの知識なのでプラシーボかもしれないが、血流が良くなって頭がすっきりした気分になる。


「……怪我とかしたら、どうするつもりだったんだよ二人とも……」


「結果的に無事だったのだ。良いではないか良いではないか! ……2人とも、主殿の事が心配だったのだ」


「それは痛いくらい分っております」


 ガリガリと頭を掻く。怪我が無いなら良かった。とりあえず全員無事。言うことなし。

 ほっと大きく息を吐く。


「……そうだ。見よ主殿! ぬは! んん……ふむん! ぬぅ……!」


「……何、やってるんですか」


 俺はげんなりと呟いた。俺の腹の上にぺたりと座りこんで白い歯を光らせ、腕を曲げ体を逸らし様々にポージングをキメるレティシア。

 なりがやっと普通になったので見た目的にはアホの子にしか見えないのだが。


 モンスターカードレティシアの特殊効果発動。

 ロリロリシアを攻撃表示で召喚に成功した時、ムキムキレティシアを特殊召喚出来る。

 ムキムキレティシアの召喚に成功した場合、相手プレイヤーは無意味かつ理不尽にLPに二千のダメージを受ける。

 ずっとレティシアのターン!


 まぁ具体的に言えば。

 この数か月というもの何度も何度も何度も見せつけられたキモグロマッスルポージングが自動的に俺の脳内で再生されてしまうのだ。

 コラージュだ。俺の脳は勝手に、目の前の女の首から下をプロもびっくりな精度で摩り替え、盛大に精神的大自爆している。


 力んだせいかうっすら汗を浮かべたレティシアは、やや恍惚とした表情でパチリとウインクを飛ばす。


「主殿に、今の我の心境を伝えてお・る・の・だ……!」


「いやいや何だそれはそもそも筋肉言語は使えませんから!!」


 え、という感じでレティシアが俺を見る。次いでぎゅむむと疑わしげに眉を顰め、ええーと不満げに口を尖らせた。

 そのままの体勢でしばし考え込み、慌てた動きでポーズを変える。


「何」


「主殿は、特殊な筋肉の持ち主だから!」


「だから何」


「このポーズは平仮名の『む』!」


 ぐぐ、と細い腕を曲げたサイドチェスト。ぷるぷる力む度にぷるんぷるん胸元の兵器が揺れる。

 健康的な成人男子的に非常に煩悩爆発画像な訳だが、何というか恥ずかしい。

 ので。


「わ、分んねぇよ無理やり教えようとすんなぁぁぁ! しっしっ!」


 サイドチェストの体勢を維持したままぐいぐい迫ってくるレティシアを、必死になって手で押しやる。

 可愛らしい頬っぺたが残念に潰れ、「はういろの……!」と、とても面白い顔になった。ぶちゃいくだ。

 ついでなので、あそーれ。


「ひは!」


「たーてたーてよーこよーこまぁーる書いてちょーーーん」


「ひょーーーーーーん!」


 プクプクと柔らかな頬っぺたを思うさま両手の指先で摘まみこねくり回す。やばいちょっと楽しい。

 じたばた暴れながらしばらくじゃれ合っていると、不意にズキリと右腕に痛みが走る。思わず眉根を寄せた。


「……主殿?」


「いや、ちょっと痛んで……そういえば俺の体、どうなってんの?」


「ぬあー……肩とかわき腹が抉れてて所々青痣があるけど、内臓は平気だとお医者さんは言っておったぞ。ただ、脚など含めて数か所、特に右腕はそのぅ、微細な罅が沢山入っておると」


「じゃあもっと固定するもんじゃないのか?」


 右腕を見る。外見的にはほとんどいつもと変わらない俺の腕。

 精々ぐるぐると体中に包帯を巻いてある位で物々しいギプス等は見当たらない。首を捻る。


「あの……筋肉が」


「うん?」


 レティシアは口をへの字に曲げる。


「主殿の筋肉が、ギプスが必要ない位がっちり骨を支えていると」


「Really?」


 マジで?


「うむ、流石主殿というべきか……あ、痛み止めの効果があるから今は余り痛くないと思うけど調子に乗ると地獄見るわよざまぁって、お医者様言っておったぞ!」


 どんな医者なんだそれ絶対藪だろ。


「更にちなみに、ここは久美子殿の診療所だ! 入院してるのは主殿だけ!」


「えぇぇぇぇぇ!? 何で!?」


「治療費がっぽり取れるから……っていうのは嘘で、色々もみ消したりするから警察とかに余り怪しまれないように頼まれたのだ。おじい様に!」


 どうだ凄いだろう、と言わんばかりに垂涎物の胸をばいんと張るレティシア。いやいや本当に何者なんだあの爺さんは。

 ふと視線を感じて扉の方に視線を向ける。


「おほ、おほほほほほ……! しっかり銭は落として行きなさいよ……!」


「ふお……!」


 妖怪肥満年増が。いやカウントダウン三十路が扉から顔半分だけ覗かせてこちらを見ていた。

 一人で何か盛り上がっているレティシアには彼女の小声トークは聞こえないらしい。ぴらぴらとはためく白衣がホラー過ぎる。

 ん? ぱくぱくと音を出さずに何か呟いている。

 ……か、ね、づ、る……。

 とりあえず目を逸らした。

 あんなものを見ていたら、治るものも治らない。


「ていうかここ診療所だろ……病院行かなくて大丈夫なの俺? 凄い不安で胸が一杯なんですが! ここの病院食コレステロール値高そう!」


「いや、ここは久美子殿の道楽で最新機器が揃ってたりするから、特に問題はないと。兎に角主殿の体は今、我にもびっくりな状態で自然ギプス状態なので、完治するまでいくら掛かるか良く分からないそうだぞ! その内治ると言っておった! 良かったな主殿! ぬはは!」


「もうちょっと考えて喋ろうな、うん」


 患者にざまぁ、とか言っちゃう医者はお茶目通り越して藪ですがな。


「お兄さま!?」


 視線を再度扉に。いつの間に消えたのか、久美子の姿はそこには無い。

 代わりに義妹の姿がそこにある。


「ハイホー撫子」


 よ、と何でも無い様に片手を上げて挨拶。

 泣き笑いのように流麗な顔をくしゃりと一瞬歪めて、ぐっと唇を噛んだ撫子が俺の視線の先で俯いた。


「……撫子?」


「心配、したんですのよ……!」


 顔を上げ、堪え切れぬ様に涙をぽろぽろと零しながら呟く撫子。

 拳をぎゅっと握りしめ、小刻みに震える妹の姿に思わずもらい泣きしそうになる。

 そうだ、撫子はあんなにも俺のことを心配してくれていたじゃないか。


 ――不意に目頭が熱くなり、


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん! びぃええええええええ!」


「何でここでレティシアが泣くの!? それにベタな泣き方ですね!」


 思い切り突っ込んだ。返せ。俺の感動を返せ。


「レティシア……」


 お、いいぞ撫子。言ってやれ。言ってやれ。


「感動しましたわ!」


「どこに!?」


「な゛でじごどの゛ぉ〜〜〜〜」


「レティシアっ!」


 俺の上から華麗に飛び降りたレティシアと、扉からこちらに駆け寄って来た撫子がガッシ! と抱きしめ合う。

 何だか置いてけぼりである。


「え……どうしようこれ」


「お兄さま! 何でこの感動が分からないんですの!? 何かお言いなさい!」


「そうだそうだ! 主殿は鈍いぞ! 何か思う所はないのか言ったらどうなのだ!」


 べったり抱き合ったまま、うわんうわん泣いていた二人が鼻を啜りながら俺に振り向く。

 飛んでくるのは口撃だ。二人分なので二連撃。

 クリティカルヒットである。


「え、あの……」


 戸惑った声を上げる俺。


「うるさいですの!」


「うるさいぞ主殿!」


「……ご、ごめんなさい」


 迫力に押されて思わず頭を下げる。満足気に頷く二人。

 それきり完全に二人だけの世界に入ってしまった撫子とレティシアを暫し呆然と眺め、俺は溜息を吐いた。

 まぁいい。ここで二人が抱き合ってるのを眺めていよう。ムフ、ムフフフ。

 枕の位置を動かし、両名の居る方向が楽に見える様に調整。

 きゃっきゃうふふと戯れる妖精二人の姿に鼻の下を伸ばす。


 しかし俺の平穏は長くは続かない定めにあるらしい。

 そんな平和な病室に、突如爆撃機のエンジン音にも勝る大音声が飛び込んできたのだ。


「ぬはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!! 邪魔するぞ!!」


「何ですの……?」


「……な、長ぇよ笑い声……」


「ぬ……この声は!?」


 びっくりした様子で離れたレティシア達と、何とか突っ込みを入れることに成功した俺。

 共に辺りを見回すが、野太い笑い声を上げる様な人影は見当たらない。


 視線を振る。

 そういえば声は外から響いてきた。なので一応窓の外にも目を向けると。


「そぉい!! 待たせたな若者よ! 息災か!?」


 全開に開け放された窓の縁、そこに下からぬっと手が掛かり、一瞬で大熊の如き巨漢の老人が飛び込んで来た。

 ごろごろと床を転がり、俺の寝ているベッドの傍ですっくと立ち上がる。

 たなびくマントに岩を掘り出したかの様な分厚い巨躯。銀にも見える白の短髪と鈍く光る眼光でこちらを射るその老人に俺は心当たりがあり過ぎた。

 というか普通、こんな存在感の塊みたいな人を見たら一生忘れないと思う。幼い子供からすればトラウマものだ。


「え、ええまぁ」


 答えることが出来たのは、一重にレティシアの筋肉とか撫子の踏みによって精神的耐久力がカンストするまで鍛えられていたからに他ならない。

 勿論、本音では『これが息災に見えるか体中痛いです! 眼科行け!』などと思っていることは内緒だ。そんなこと言えない。

 このお爺さんはこの世の物ならざる圧倒的なプレッシャーを撒き散らしているのだ。

 精神的に堪えることが出来ても、肉体的に何かされたら耐えられないこと必至。

 これ以上怪我は増やしたくない。


「おじい様! どうなったのだ?」


 やはり血筋か。物怖じもせず気さくに爺さんに近づくレティシア。

 そういえば、コイツの口調はまんま爺さんのパクリっぽいな。御爺ちゃん子なのか。

 場違いかもしれないが、そんなことを思う。


「うむ……もう心配要らぬぞ孫よ。彼奴等めは我輩がしま……ゴフン、説教しておいたでな! ……もう、二度と会うこともあるまいて」


「流石おじい様だ!」


 いやいや、この爺さん今しま……って言ったよね? よね!?

 俺の予測変換機能によると、『しま……』の後に『つ』が来そうなんですがそこんとこ如何なんだろうか。

 どうせ聞いても答えは貰えないだろうから、仕方のないことかもしれないが。


 ……それより、もう二度と会うこともない、か。ハゲの顔が一瞬頭を過ぎる。


「あの……」


「おお少年よ! お主には礼をせねばならぬな!!」


「はい?」


 ぐわ! 目をかっぴらいた爺さんが俺を見る。

 俺はベッドの上でたじろいだ。お礼はお礼でも、お礼参りとかだと物理的に地獄に行ってしまうエンドだ。


「聞けば、お主のせいで孫が巻き込まれたそうではないか!!」


 生唾を飲み込んだ。そういやそうだ。否定しようがない。

 これは死亡フラグかもしらん。

 ぐぐ、と血管の浮いた丸太の如き腕を掲げた爺さんは、


「ぬはは! 豪気なことよ! 短き人生、少しは修羅の道も味わっておかぬとな! それにお主、単騎で敵陣に突入して孫を救出したとか! 見所があるぞ、我輩が鍛えてやろうか!?」


「おごごごごご! あああありがたきしあわせぇぇぇぇ! でも勘弁してくだだだだ!」


「ぬは! ぬはははははははあ! 聞こえぬ! 聞こえぬぞ若人よ!!」


「おお! 弟子を取らぬので有名なおじい様が!」


 うお、そう来たか。というかどういう一族なんだ修羅って。

 巨腕でがっくんがっくん揺さぶられながらそんなことを考える。

 ブレにブレる視界の中、未だ驚きに固まったままの撫子の姿を捉えて少しほっとする。良かった、常識人は俺一人じゃない。


 でもとにかく、誰か止めてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。


「……ぬ、少しやり過ぎたか。許せ若人よ! 孫娘を危険な目に合わせた償いとでも思ってくれい。これで手打ちだ!」


「う、うぷ。い、いえすみません」


 六十秒程続けて高速シェイキングされ、ぱっと手を離された。へなへなとベッドに倒れ込む。どんな地獄の責苦なんだこれは。

 込み上げる吐き気をぐっと飲み込んで何とかもう一度頭を下げる。というより俯く。項垂れるの方が適切かもしれない。


「ふふ……ふあはははははははははは! ではな若人よ! 縁があれば再び見えることもあるであろうてぃ!!」


「……」


 コメントしづらい語尾を残して、嵐の如き老人は去って行った。窓から。

 ふと、窓の外の景色が気になって撫子に目を向ける。

 ハゲについて、爺さんは詳しいことは語らなかった。それが、全てなのだろう。

 考えを切り替えるしかない。


 もう、会うことはないのだ。


「なぁ、ここって何階?」


 はて、と言うように顎に手を当てた撫子は小首をかしげ。


「一階ですの……」


 そう答える。

 いやしかし、それなら一つ疑問が残る。


「……何で、窓の下から現れて窓の下へ消えて行ったんだろう」


「さぁ……」


 二人揃って米噛みを抑え、うーむを唸っていると、窓の外をキラキラした目で見ていたレティシアが振りかえる。


「おじい様は、地面を転がるのが大好きだからな! ふはは!」


 俺は疲れを感じて溜息を吐く。ん? と小首を傾げたレティシアがこちらに一歩分歩み寄る。


「お前ん所の家族って、いや……もう何も言うまい。気にするな」


「?」


 尋常じゃないのは良ぅく分ったから。忘れよう出来るだけ早く。

 脳裏でぬはは笑いを延々リピートする驚異的老人の姿を、頭を振ることで振り払う。


 ぎしりと音が一つ。

 見れば、レティシアが性懲りもなく俺の転がっているベッドに乗り上げて来ていた。

 目が合うとにぱ、と笑顔になる。

 不覚にもドキドキするのは禁則事項である。何せ、今のレティシアは文句なしの美少女だ。

 これまでの文句付け放題バージョンのレティシアなら、違う意味でドキドキするばかりだったのに。生命と精神の危険的な意味で。


 そーいえば。


「レティシア」


「うむ?」


「俺のせいで誘拐されて怖かったろ? すまなかった。後、今まで何か助けてくれてた、って撫子から聞いた。ありがとう」


「……」


 ぽかん、と鳩が豆鉄砲食らったかのように口と目を見開いて呆然と俺を見るレティシア。

 ベッドの上に居るので恰好は付かないが、なるべく誠意が伝わるように視線を伏せて礼の代わりにする。


「ふふ」


 空気を微かに揺らす笑い声に顔を上げる。

 視線の先、俺の腹の上に陣取ったレティシアが見たことのない微笑みを浮かべていた。

 何とは言えないが気恥ずかしくなり、視線を逸らす。

 その先に居た撫子と目が合った。仕方ないな、とでも言う様な笑みを浮かべた撫子は、貸しですの、と声に出さず呟き肩を竦めて静かに部屋を出て行った。

 ごゆっくり、とでも言うようにひらひらと振られる繊手に苦笑を返す。

 出来た妹だと思う。告白の返事を保留する様な兄には勿体ない。


 後で、謝らなければ。


 一度目を瞑る。俺にはレティシアにもう一つだけ、言いたいことがあった。

 伏せた瞼の裏に、レティシアが現れてからの数ヶ月間の思い出が過ぎる。

 右ストレートと犬モドキ。ベジタリアンだとか言う叫び。無理やり家に転がり込んできたこと。

 吐いていた嘘と明らかになった苗字佐藤。久美子に襲われた時のこと。撫子との邂逅。変なテーマソング。今回の事件。

 色々なイベントがあって、その度に普通じゃ味わえない経験をして来た。

 どれも楽しくて、良い思い出だ。俺一人で生活していたら、こんな思いを得ることは無かった。


 それに、レティシアと強制的ノンドキドキ同居生活を送る中で色んなことも知った。

 右利きであること。好物は野菜スティック。意外と小食。可愛い系のファッションが好きなこと。若干の露出癖。ぐうたらなこと。

 髪を掻き上げる時、必ず逆側の手を使うこと。字を書かせると結構綺麗なこと。お箸の握り方が少し変なこと。寝起きは結構悪いこと。


 上げ出したら切りがない。自分の気持ちを自覚したことで今までの幸いを思い、自然と口の端が緩むのを感じながら目を開けた。

 不思議そうに、でも柔らかな笑顔のままこちらを見ているレティシアの碧の瞳をじっと覗き込む。

 俺の顔は赤くなっているだろうか? 心臓の音が煩くて他に何も聞こえない。今、俺はレティシアのことしか分らない。


 微かにその頬が染まっているのに気付くと、胸の中に安堵が落ち、代わりに滑るように声が出た。


「レティシア――好きだ」


 狭い静かな病室に、俺の声はゆったりと広がった。

 こちらを見つめるまま、何の反応も示さないレティシアに疑問を感じ首を傾げる。


 そういえば、今まで聞いたことは一度もなかった。レティシアは、俺のことをどう思っているのだろう?


「……もう一度」


 桜色の愛らしい唇が僅かに動き、囁く様に声を落とす。

 すぐに口を開こうとして、知らず緊張で唇が渇いていたことに気付く。

 落ち着いているつもりだったが、どうやらちゃんと焦っているらしい。自覚した途端に体がカチコチになった。

 そんな自分に苦笑してゆっくり唇を舐める。


 今度は、言葉をしっかりと意識して選ぶ。

 構えていないと緊張で呼吸が詰まってしまいそうだ。喉もからからに乾いていて、掠れた声を吐きそうになる。


「俺はレティシアのことが好きだ。だから、付き合って欲しい」


 そぅっと、レティシアの手を取る。抵抗はされなかった。

 それが切欠になったのだろうか。目を弓なりに、笑みを更に色濃くしたレティシアは一筋だけ涙を零す。

 つっと形の良い頬を伝って行く涙に目を取られていると、ぎゅ、と手を握りしめられた。


「……奇遇だな、主殿……私も実は……太郎のことが、好き」


 いつもの物々しい口調とは違った、ふわふわと柔らかな、お菓子の様な『女の子』の言葉。

 その言葉が脳みそに沁み渡る前に、レティシアは勢い良く倒れ込んできた。

 小さな体の全部を擲ってしがみついてくる。

 反射的に小さな体を抱きしめ、そして俺もレティシアに抱きしめられる。

 それを感じ、強くその背中に手を回した。大きく大きく、息を吐く。

 抱きしめた体は本当に小さく、ひたすらに熱い。


「良か、ったぁ〜」


 依然心臓は忙しなく動き回っているし、きっと顔も赤い。それでも、今はとにかく幸いを感じていた。


「我も……良かった。好かれる筈ないと、思っていたからな」


 顔は見えない。だが唯一露になった耳が真赤に染まっているのを見て、大きく吐く息を首元に感じて、くすくす笑いが漏れる。

 何だ、良かった。恥ずかしいのも緊張してたのも、レティシアだって一緒なのか。


「まぁ、何でか分からんけどさ。好きになったんだからいいんじゃないか。理由なんていくらでも見つかる物さ。兎に角今は幸せ。他に何かいるのか?」


「うむ、それもそうだ。……えへ」


 ぐりぐりと頭を擦り付けられるのに甘んじながら、んー、とレティシアの体をより強く抱きよせる。

 くすぐったそうな声を上げるのを無視して、俺はすりすりと彼女に頬ずりをした。


「いやしかし、命懸けて何チャラとか良く恋愛モノのお話であるけども」


「うむー?」


「まさか、リアルに命かけて筋肉姫を助けに行くたーね。はっずかしー」


「でも、嬉しかったぞ。それが全てなのだ」


「……それもそうだな」


 恥ずかし紛れに言った言葉は、真っ赤な顔を上げたレティシアの言葉に受け止められる。

 俺から見ても幸せそうなその顔を見ると、背中がムズムズする。

 顔を見合せてお互い、照れを誤魔化すようににへらと笑った。

 そのまま、お互いの間に沈黙が満ちる。


「レティシア……」


「……たろう」


 舌足らずなレティシアの声。蕩けた視線を絡ませ合って、俺はそっと彼女の頬に手を当てた。

 引き寄せる。

 抵抗なく徐々に近づいて行くお互いの顔。

 レティシアの澄んだ瞳の中に、俺の姿が見える位近づいた所で――レティシアはそっと目を閉じた。


 高鳴る心臓に煩さと恥ずかしさを等分に感じながら、俺も目を瞑り、そっと彼女の唇に――


「若いって早いのね……ほらそこよ! ぶちゅっとぶちゅううううううううっとぉ!」


「お、お、お、お兄さまがレティシアとその、そんな、は、破廉恥を許す訳には……っ! でもお兄さまキチンと告白したし羨ましい……じゃなくて……! うぅぅ」


「ふぁーーーーーーーーーぉう!」


「ぬあぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 ――重ならず、二人して慌てて顔を離す。

 焦っているのは分かるけど手! 手で鼻を潰さないで……!


「わああ! わあ! ああああ2人共何でそこに居るのだ!!」


「何でってアンタ、私は患者の様子を見に来ただけよぉうふふ! そしたら若い男女が盛ってイチャイチャしてるから? 面白いしたまたまちょっと覗いてたのよおほほほほほほほほほほほほほ」


「な、なぐ、なぎゅ……!?」


 マトモに言葉を話せないレティシアの下、腰に手を回したままの俺の鼻はどんどん高さを減らして行く。俺のぷりちーなお鼻がががが。


「お兄さま!? 悔しいですけどかなりリードされてますけれど撫子はまだ負けた訳じゃありませんの! 不倫愛人サヨナラ逆転ホームラン! さ、最後にお兄さまを勝ち取るのは撫子ですからね!」


 撫子は盛大な問題発言を叫んで見事な黒髪を翻し、凄まじい勢いで走り去っていく。

 顔が真赤だったのは、非常にアレなシーンを見た羞恥からか、それとも別の理由か。

 タタタタ、という軽い足音が微かに耳に届いた。はて、それにしても何か変な言葉だった……愛人……愛人!?


 わたわたと意味も無くレティシアから手を離し、振る。

 脳髄に過負荷が掛かって一瞬何も考えられなくなり、


「ぬあ! ぬあああああ! あ、あああ主殿! こうなったら開き直る……!」


 何を思いついたのか。

 何事か叫んでむにゅむにゅ呟くレティシアに反応を返せなかった。

 カッっと目を見開いたレティシアは、全身に力を込め。


「ぬぅん……! 魔法発動、筋肉よ!!」


 可愛らしい声で叫んだ。

 ずしりと一気に増した重量に目を瞬かせ、恐る恐るその姿を見上げる。

 胸があるはずの位置、顔がある筈の位置を視線はあっさり通り越え。


「あ・る・じ・ど・の……! 愛しておるぞ……!!」


「ぎゃあああああああ!? その姿で言われても嬉しくありません重い重い重い物理的に重いその筋肉で迫らないで……!」


 可愛らしい体のラインに沿ったワンピースは、今や常識外のムチムチ筋肉で内側から爆発的大膨張。精神攻撃力がダイナマイト。

 凹凸(筋肉的な意味で)付き過ぎな筋肉美を思う様周囲に撒き散らす。

 ちんまりと俺の上に乗って居たはずのレティシアは今、ビジュアル的に非常に残念な筋肉姫としてご降臨なされていた。


 俺の、いやさ男のロマンである魅惑の双丘は見る影もなく、違う意味で豊満な大胸筋はレティシアの動きに合わせてうねりうねり。

 巨木を捻り合わせたような、見るからに屈強で分厚い三角筋や僧帽筋、上腕二頭筋がワンピースの袖を引き裂かんばかりにみっちりと漲り大充実。

 頭身が狂ったせいで、どこからどう見ても可愛らしさの欠片もない際どい衣装(張り裂ける的な意味で)に大変身だ。

 覇王も凄かったがこちらはやはり桁違いだ。その圧倒的キモさ。隔絶したグロさ。

 転がっているせいで良く見えないが、足も同様だろう。初登場時のキモ恐ろしいキャミソール姿を思い出して冷や汗が噴き出た。

 それに。


 丸太ん棒も何のそのと言わんばかりに盛りあがった露出肌は、緊張か羞恥のせいで浮いた汗でヌラヌラ、照り光っている……!

 大分慣れた慣れたと思っていたが、可愛い姿とのリアルな対比が俺を地獄を越えて冥界に叩き落としていた。


 愛とか恋とかそういうあまじょっぱい感じのアレコレとは別問題で、これは耐えられない。耐えられない。

 大切なことだから二回言った。


「さぁさぁ我と愛と感動のファースト接吻を交わそうぞ……! ぬぅ!」


「ひぃぃぃぃ! お願いだから正気に戻って下さい筋肉は要りません! このままだと二人の甘い記憶じゃなくてトラウマですー! やめやめや俺を押さえつける……う、奪われゆ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」


 ゆ〜〜、ゆ〜〜、ゆ〜〜……。

 他を寄せ付けない神がかり的精神的ブラクラに無敵超変身した、レティシア。

 真赤な顔で開き直った彼女に迫られた俺の、情けない叫び声が昼下がりの病院に空しく反響して消えて行く。






「若いわねぇ……あ゛ぁー、私も相手見つかんないかしら。三十路かぁ」


「お兄さま一体どうなさって……!? 何やってんですのお兄さまの不埒物ォォォォォォ!!」


「ちょ、ま……ぐぼ! 踏み、踏まれ……助けて! 色々たーすーけーてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 扉の傍に腰を下ろし、宙空を眺める久美子の呟きと、ダッシュで病室に駆け込みジャンピングフットスタンプをキメた撫子の怒声。


 そしてやっぱり、俺の濁った断末魔が爽やかな夏の空を突き抜けて行った。






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