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第五十四話 変態は罪じゃない

「ごめんなさい。まさか、エロいだけの人だったなんて」


「ほんとにごめんね。鑑定士様、のぞきが趣味なだけの人って思わなかったから」


「まさか魔王様以外に変態がいるなんて思わなくて。熱かったでしょう?」


 そういって、俺を取り囲む裸少女たち。これは、ハーレム? 


 お、俺ってラッキー。


 服、焦げちゃったけど。あと、体力半分もってかれたわ。


 それが、すっごい連携プレイで。


 上級、火炎球(ファイヤーボール)の詠唱時間を稼ぐために、最初の茶髪ツインテが通常の火炎球(ファイヤーボール)してくるじゃん。


 そのあと、後ろのヴァンパイアの黒髪ポニテが中級の火炎球(ファイヤーボール)してきて。とどめに魔族の半竜の女が上級火炎球(ファイヤーボール)


 いくら俺でも、ハートごと焼けるわ。


 心も燃えつきたかと思った。ここにきて、俺のダンジョン攻略に陰りが見え始めたかと思ったがそうでもない。こうして胸が三つも迫って来てくれると、未来は明るいな! 


 どれもこれも、おいしそうで。


 ちょっと手を伸ばして、しぼってみてもいいですか? 


 だめ? 


 俺は残りの力を振り絞って右の少女。茶髪ツインテの胸に手を伸ばす。きりっと睨まれた。今のは幻かな? え、もう一度確認します。


 だめ?


 バシン。おぞましいハエめ! とでも言うような叩き潰すような力。


 痛った! 腕だって焼けてるんだぞ。なんで叩くんだよ。


 こ、この震える腕を見ろ。そして、俺の目を見てくれ。胸に恋焦がれてるだろう? 


 おさわりだめ? どうしても?


 し、仕方がない。真ん中のヴァンパイアちゃん。一番美白じゃん。人では白塗りしないとその肌の色は再現できない。美しいぞ。こんな肌は見たことがない。


 ダンジョンの熱気で、白い肌に汗のつぶが浮いている。その、はちきれんばかりの胸。よく見せてくれよ。指ががくがく震えてきた。


 グリッ! 毒キノコめ、刈り取ってくれる! というようなひねり具合。


 痛たたたたた! 指をねじ曲げられた。ちょ、こっちはすでに重症なんだよ!


「鑑定士様は大人しく寝て下さいね」


 言葉と裏腹だぞ! 


「だ、誰かスキルで『温もりの恩恵』持って……ない?」


 体温で、俺の体力を回復させてくれよぉ。なぁ、半竜ちゃん。


 人の素肌だけど、腰や背中にはドラゴンと同じうろこがびっしり。手の甲も緑だけど、ぷにぷにで柔らかいし。あったかい手。


 にぎり返してくれるの? 嬉しいな。


 グキ! その腐った根性ごと、へし折れろ! というような関節と逆方向へのねじり!


「おああぅ!」


 手首折れるだろうが。し、死ぬ。こんなこと続けられたら死ぬぞ。


 お、俺がなにした。なにしたか言ってみろ。半目で凝視して悪いか? プルプルのいただきを眺めて悪いか? 


「お、俺にも胸があるんだったら――自分でさわってるわ。女ども。愛してるぞぉ」


「うわぁきっしょ」


「救いようがないエロ鑑定士様ね。エロ様って呼ぼう♪」


「変態士」


 俺は、焼けたのどを押さえながら訴える。


「へ、変態は罪じゃないぞ。お、男の(さが)だ……」


ステフがちょうど、コウタといっしょに氷を持ってきてくれた。ほかの裸の少女たちが道案内を申し出てくれたらしい。


「うわー、氷、しみるー。もう、お前らには温もりは期待しないぞ」


 茶髪ツインテの女はふんと鼻を鳴らした。


「魔王より重症のエロ男だね」


「魔王、知ってるのか。てか、お前たちはどうして裸に?」


 に、睨まないでね。


 三人の女がじと目で見てくるが、ぼそっと半竜ちゃんがつぶやいた。


「温泉よ」


「え、ほんと? おお、胸一番でかいなぁ」


「この! ないものねだりめ!」


「うん。ないから欲しい」


「クラン真面目に聞いてあげてよ」と、ステフ。


 半竜ちゃんは、緑の瞳を細めてつぶやく。


「魔王様は、ダンジョン内で魔族、モンスター、人間問わず仲良く暮らしておられた」


「え。魔王が仲良く?」


「ところが、我らを突き放した。突然女たちを裸にさせたあげく。自身は女装。私たちは逃げ出すしか思いつかなかったわ。魔王様も裸になって、温泉を目指して今は行方不明なのよ」


「それって? すっごい。欲望に忠実だなぁ。温泉を見つけるより先に、脱ぐのはどうかと思うけど」


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