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第五十一話 ステータス画面の破壊

女装家の魔王を追って、洞窟を突き進む。途中、メタルスケルトンとか出てきたけど、ステフが殴り飛ばした。


骸骨のモンスターで、死霊のくせに、骨は鉄だから。固い固い。メタルだから、打撃技、ほとんど効かないんだけど、ステフの拳は燃えるからな。顔面の骨をくぼませるぐらい、余裕余裕。


込み入った恋愛事情のために一肌脱いでくれるなんて。もう、()れるしかないだろ!


 でも、俺の追いかけている少女が魔王だなんて、まだ一言も言ってないんだけどな。


「ねえ、ほんとに女の子が壁の向こうにいたの?」


「うん。裸で」


「で、服を届けるんだよね?」


「うん。俺、いくらでも脱いで、貸してあげるつもりだ」


「じゃあ私のマントも貸してあげるよ。きっとパンツ履いてないよね!」


「お前までパンツ言うな! ミミネの口ぐせが移ってるじゃん!」


 あいつのせいで、俺のステフが毒されている……。や、やだな。ステフまでミミネみたいにヤンデレになったら……。


 しかし、相手は魔王だ。もし、裸の少女のままこっちを攻撃してきたらどうする? 


 俺、見とれちゃうな!!! 興奮して死ぬかも。


 だって、裸の女を攻撃するとか、男として失格じゃん! せめて、ビキニアーマーとかつけといてくれないと。どこ攻撃したらいいのよ。まあビキニアーマーつけてくれてても、露出が激しかったら、どこをおさわりして欲しいのかなって考えて攻撃の手が止まるけどな。


 素っ裸でいてくれるんなら、仲間に欲しいよな。あ、もしかしてこれが魔王の作戦? 無防備でいたいけな少女になって、敵を油断させる? 


 え、いいじゃん。俺、そんな魔王にだったら負けても文句言わない。だって、向こうから豊満な胸で迫って来てくれるんだろ? 


 ま、まぁ全部俺の妄想だけどさ。中身は男なんだ、そんなお色気で俺を惑わすようなバカなまねを……ほんとうにしてくるだろうか?


 洞窟の奥、炎が灯って明るくなった。いや、溶岩だな。獄炎(エシュトア)ダンジョンらしくなってきたんじゃないの? 


 突然崖のようになっている。落ちたら焼けて死ぬ。ぼこぼこと音を立てて、煮えたぎってるな。


 魔王の足跡がないか、地面を鑑定してみる。手をかざす。うーん。足跡はないけど、土の成分は火山灰と、硫黄が混じってるな。硫黄の臭いもきつくなってるし、温泉は近そうだけど。


「あそこ、モンスターがいますよクランさん!」と、コウタがバカでかい大声を出す。


「バ、バカ。静かにしろあいつはまずい……」


 頭に炎のともった、骸骨兵の亡霊。がしゃがしゃと歩いてくる。声に敏感。見つかった! ファイアーデッドホロウだ。


 身長二メートル越え、太い長剣を引きずるようにして向かって来る。死んでいるくせに足が速い。だが、向こうだって剣の斬り上げはどっしりと重いはず。


「コウタ、ワンポイントアドバイス。斧で間に合わなかったら避けるのを優先しろよ」


「分かりまし……ぎゃあああああ」


 ファイアーデッドホロウの剣先がコウタをかすめた。


「うわ」


 横にいる俺まで巻き添えを食らうところだ。早い。あの長剣を引きずっているくせに、斬り上げるときにスピードが増した。最下層だもんな。レベルが高いんだろう。


「強制ステータスオープン」


 スィン。


 ブオン!


 剣が風を切る音。


 手でステータス画面をカード化してつかんだ瞬間を狙って来るなんて卑怯な! 


 あっぶなかった。腕引っ込めなかったら、ほんとにやばかった。


 ステータスカード、落としちゃった。バリーン。


 あーあ。知―らねっと。なーんてね。ステータス画面は、再度オープンできる。


 スィン。

 ブオン!


 ちょ、剣早すぎ。


 バリーン。


「ちょっ! 俺の趣味のステータスのぞきの邪魔すんな」


 ステータス画面、見る時間を与えないつもりか? 生意気だな。モンスターの分際で。ステータス画面をのぞき見するからこそ、俺の活躍の場があるんだろうが! バカ野郎! 


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