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第四十五話 アイキャンスピークイングリッシュ……?

 ネリリアン国は、すっかり異世界日本人の日本語が浸透している。公用語のネリリアン語も使えるけど。


 召喚された勇者候補たちは、言語は全て日本語に聞こえる耳を持っているらしい。裏ステータスでは当たり前のことのようにそう表記されている。


「あたしを無視してなにステータスとにらめっこしてるのよ!」


 またミミネの不意打ちを食らうわけにはいかない! これ以上、金的を狙うのは許さないぞ!


 俺は身をひるがえして怒鳴る。


「ミミネ! いい加減にしやがれ! 今はそれどころじゃない! エイゴって何だ!」


 俺は、自身の無学、無知を呪った。ミミネの蹴りをしゃがんでかわす。


「エロ鑑定士! あたしじゃなくて、あの頭三つの蛇のパンツをのぞこうっていうの?」


 ミミネが足でヒュドラを示す。


「はいはい。ステータス画面をパンツって言うのは、そろそろ飽きるからやめときな」


「そうよ、ミミネちゃん。ギャグは正気に戻ってから飛ばしてね」


 ステフ、冗談きついな。っていうか、ミミネ、いつになったら『従者の呪い』が解けるのやら。望み薄だな、こりゃ。


 ステフが俺に目くばせする。お、頼もしいね。ちょっとちょっとー。その、にこっとした笑顔。そんなの見たら、幼馴染としての俺たちの境界線――踏み越えたくなっちゃうだろ。


「私がミミネちゃんを止めとくね。魔術師集団がいなかったら、たぶん楽勝」


「あ、ああ」


 早く、ステフも女湯に入れてやりたい。長い毛で覆われたふさふさの尾。すらっとした生足。


 細い手指と、それに似合わず頑丈で美しい狼の(かぎ)(づめ)。背中まである長い髪とか……ため息が出るな。


 シャンプーは任せろ! あ、これはまずいな。俺もいっしょに入る前提でものごとを考えてしまった。ま、まず風呂上がりの髪を乾かすところから、手伝おうか。


「ちょっと、クラン。ヒュドラ!」


「わ、分かってるって」


 俺は鼻の下が伸びてしまっていたので、固く唇を結びなおす。でも、駄目だ。目の前の敵は俺に難題を突きつけている! 俺は頭をかきむしる。


「エイゴって何いいいいいいいいいいいい?」


「落ちついて下さいクランさん! 俺が教えます」


 コウタ、エイゴのことを知っているのか?


「その大蛇、英語で倒せるんですか?」


「説得って形でできるはずだ」


 すると、コウタが俺の知らない、聞いたこともない言語でつらつらとヒュドラに話しかけた。


 ギャウアア!


 ヒュドラの右の頭の()()()。頭突きだが、あれを食らうと頭蓋骨に穴が空くぞ!


「クランさん! 通じてません! ぎゃああああああ」


 俺はコウタを引っつかんで押し倒す。


「分かったあれだ。『異種族間対話能力』がないから通じないんだ。だから俺が話すしかない。俺にエイゴとやらを教えろ!」


「分かりました! えー、まず自己紹介から。マイネームイズ、クラン。はいどうぞ!」


 俺は復唱する。ヒュドラに向かって。


「まいねーむいずクラン」


 ヒュドラの動きがぴたりと止まる。すると、真ん中の頭が首を下した。俺の目の高さまで視線を合わせるように降りてくる。


 び、びびるな。これは強烈な睨めっこ。


 ヒュドラの口の大きさは俺の頭を一飲みできる。もし、噛みつかれたりしたら、この距離でかわすことは不可能。会話に失敗したときが、俺の命のつきるとき……うん、俺の首がもげる。


 や、やだ。そんな。エログロホラー。俺はエロだけで満足なんだよ。俺まだ死亡フラグ立ってないだろ!


 ギャウギャ?


Can(キャン) you(ユー) speak(スピーク) English(イングリッシュ)?』


「コウタ! なんて言ってるんだこいつ?」


「俺にはヒュドラの声はギャアアアアアアアアにしか聞こえませんよ。クランさん、聞こえたとおりに発音して下さい!」


「え、っと。きゃんゆーすぴーくいんぐり?」


「『I can speak English enough to be an interprete.と答えてあげて下さい!」


「アイキャンスピークイングリッシュ……? え、何だっけ? ってかちょっと長くないかそれ? どういう意味だよ」


「英語は通訳ができるぐらいに話せます。です!」


「通訳ができるぐらいは余計だろ! そんなにべらべら話せるかよ!」


 ギャウア?


『あ、あんさん英語話せるんかいな!』


 え、ヒュドラが、急になまり出した。どこの方言?


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