第四話 白竜神ギルド
「温泉気持ちよかったですよ。クランさん、あれ? 服で入ったんですか? ちょっとぬれてますよ」
「なんでもない」
「口、切れてますけど」
「ほっとけ」
食べ歩きしている町人とちょっと、けんかしたからな。
ギルドは東西南北に四つある。それぞれ、毒槍ギルド、魔幻ギルド、白竜神ギルド、鳥蛇ギルド。
冒険者パーティーは毎日、目まぐるしく組まれているので、正直どこに所属してもいい。だけど、宮廷鑑定士をクビになったという汚名は、下町でうわさ話になっていた。
そりゃそうか。俺、宮廷のおごそかな、黒いローブをそのまま着てきたままだったし。
宮廷の中にいるときは、胸をはれるけど。クビになった今は……。
おい、そこの道で井戸端会議してるおばさん!
ぼそぼそしゃべって指さしてくるな! これが、俺の定年退職金の代わりですよっと。
でも、明日には脱がないとな。さすがに。兵士に捕まりそうだ。
南の白竜神ギルドについた。木造で、大きな階段がある二階建て。
上は、宿も経営している。となりには食堂と、キッチン。クエスト達成で手に入れたモンスターをすぐにさばけるように置かれた鉄板。
十人ほどで囲んでバーベキューできる大きさだ。奥には情報交換できる酒場。
今日は受付嬢はお休みか。ギルドのカウンターは、外からでも見える。
すぐに受注できるようになっているからな。ギルドマスターのなまめかしいレアさんもいないし。残念。代わりに受付にいたのは、普段は酒場の店主をしている、がたいのいい大男ランドルフ。
「はぁ? 宮廷のぼっちゃんが、うちの白竜神ギルドになんのようだ。あっちで働かせてもらってたんだろ? いい給料なこって。うちらは毎日命がけで働いてるってのに。泣きついて、やといなおしてもらったらどうだ」
「あぁ? 俺はご新規様だぞ。わざわざ加入しに来てやってんのに、門前ばらいすんのかよ」
「帰った帰った。うちは、今日、召喚されたばかりの新人の冒険者様で、いっぱいだからよ」
それって、俺が召喚の間で会った三十名か。
「お、俺入りそこなってませんか? クラン鑑定士さん。なんで誰も俺に声かけてくれなかったんだろう」と、コウタが泣きだした。
「めそめそすんな。俺だってショックだ」
ギルド直結、直営の酒場では今朝がた見かけた、異世界人の若者であふれかえっている。
「いや、まだいけるな。新米ばっかだ。【強制ステータスオープン】【ステータスカード回収】」
スィン。ヒュン。
ステータスオープンと同時に、手のひらを広げる。視認範囲にいる酒場全員のステータスを、カードサイズにして回収する。これぞ、盗み見の真骨頂!
「めぼしい奴はいるかな?」
「おお、さすがクラン鑑定士さん。ステータスのカード化と、回収もできるんですね。ちょっと回収するには、せこい気もしますが」
「ははは♪」
俺はステータスカードをトランプのようにして広げる。順番に見ていこうか。
「ほら、みんなレベル二桁台。まあ、レベルは誰でも何とかなるけど、ひどいな。脚力あるやつに弓を買わせてるし、魔力ある奴にトンファーとか。腕力ない奴に斧とか。この装備。笑っちゃうよな」
「それってクラン鑑定士さんがいなかったから、こうなちゃったんですか?」
「当然。攻撃力としてしか見てないからな。裏ステータスを見ないと、攻撃力の内訳がわからない」
全員のカードに目をとおした。このメンツじゃ使いものにならないことは分かった。
ついでに、今俺を門前ばらいしたランドルフも見ておこうか。
レベル10、裏ステは過去、戦闘経験なし。って。あの筋肉マッチョで戦闘経験なしか。
こいつの願望……召喚士ドリアンに好かれたい。
こいつホモじゃん!
ランドルフだけステータスカードを抜き取って。あとはみんなに返してやる。といっても、抜き取られたことも、返されたことも誰一人として気づかないが。
俺は受付に舞いもどる。
「おい、ランドルフ。最高のパーティーを組みたいって思ってるんだ。手を貸せ」
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