第三十九話 泣けてこないか?
魔術師のリーダーの男はフードを取る。召喚の間で召喚士をしているドリアンの顔があらわになる。
「そうだ、クラン。まさか、ここで会うとは。新しい仕事は上手くいっているのか? まさか、占い師以外の仕事に就くとは思わなかったな」
さっきと、声が変わった。
今まで俺に気づかれないように、変声魔法を使っていたようだ。
っけ、バカにすんなよ。鑑定士だって戦闘ぐらいできるんだ。ギルドの一つや二つ、加入してやる。複数ギルドの加入は違法だけど。
【名 前】 ドリアン
【種 族】 人間
【レベル】 800
【体 力】 800
【攻撃力】 700
【防御力】 680
【魔 力】 1000
【速 さ】 1100
【固有スキル】『従者の呪い』
「え、こいつが『従者の呪い』を? 銀羽コウモリを操っていたのは、お前か!」
俺の指摘にドリアンは、わざとらしくおどろいてみせた。俺がステータスにくわしいことは一番よく知っているくせに。
「これはこれは、宮廷鑑定士にはすべてお見とおしというわけか。ステータスを盗み見ることに、抵抗はないのか? 俺には人のプライバシーを侵す行為に思えるが」
「お前が俺に説教かよ」
「いかがわしく、汚い行いだ」
「でも、俺がいなくなってからパエラ様も困ってたんじゃないかな。俺に戻って来て欲しそうだったぞ。てっきり今ごろはお前がパエラ様に、こき使われてると思ったのにな」
ドリアン、すました顔をしているが眉がぴくぴく動いてるぞ。新入りだけど、出世欲は人一倍強いもんなお前。
「俺はパエラとは上手くやっている」
「でも、部下には変わりないだろ。パエラ様はこの魔術師軍団が、獄炎ダンジョンに来ていること知ってるのか? 見たことないメンツばっかりだし」
「ははは。パエラは今、勇者候補たちの面倒を見る羽目になっていて、手いっぱいだ」
「そうだろうな。俺がいなくて困ってるだろうな。ざまあみろ。って、そこ、お前も笑っちゃっていいんだ?」
「俺は元々、パエラとは対等な関係を築いてきたつもりだ」
「ふーん。まあ、俺はどうでもいいんだけどさ。銀羽コウモリの件、白竜神ギルドの冒険者を殺した件。ちゃんと説明してくれよ」
「お前はここで死ぬのだ。話す必要はない」
「いやいやいや、気になるって。俺はパエラのこと嫌いだけどさ。お前だって、パエラを裏切ってるじゃん。町を銀羽コウモリでパニックに陥れて。目的は何だ!」
ドリアンは口の端をゆがめて薄ら笑うだけ。
「いいさ、裏ステ裏ステ! ステータスが見放題の俺に、弱点を暴かれて後悔するがいい!」
ペラリ。
【弱 点】 プライドを傷つけられること。
う、うん。まあ男はみんなそうだろう。プライド、プライドっと。プライドねぇ。まあ、後で考えるか――。魔法も見ておく。
【魔 法】 100件以上あるのですべて表示できません。一般的な上級魔法は全て使用可。
つ、ついに記載しきれないレベルになったか。検索をかければいけそうだけど。時間がかかる。大抵の呪文は使えると思った方がいい。強敵だ。
【特 技】 変声。
これは、さっきやっていたな。
深層心理……俺が魔王の跡を継ぐ。
願望……ダンジョンに眠る秘湯さえ見つかれば、俺は最強の存在になれる。
過去……いつまでさかのぼりますか? 年数を選択して下さい。
「魔王の跡を継ぐだって!? 今の魔王はどこにいるんだ? それに、お前までなぜ温泉を探しているんだ!」
ドリアンは突然、高笑いをはじめた。
「ははははは! 魔王はもういない。誰も姿を見たことがない。おそらくもう死んでいる。俺は、獄炎ダンジョンの最下層まで到達し、ダンジョンを庭のように毎日歩き、見てきた。つまり、俺が実質、魔王の後継者だ!」
「うっそだー。魔王の部下の弱点がコショウって、泣けてこないか?」
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