第三十二話 先が思いやられる(追放者サイド)
宮廷。昼下がり。庭園の噴水がきれいね。温かい日の光を浴びながら、紅茶をすする。
『川で暗殺者のような身なりをした男の死体が上がった』との字面を発見した。え、マジなの?
宰相が発行する、宮廷の内部の文書だ。羊皮紙には、不審な事件の一覧が載っている。そのうちの一つの小さな記事で誰も気にもしていない。
「クランの捕獲に失敗したわね。暗殺者トキムネ」
彼は異世界人にあこがれて異世界のニホンジンの名前を名乗っていた。似合わないからやめときなさいとこれから言うつもりだったのに、あとの祭りね。
「透視スキルさえあれば、私の恋愛占いは成就するのに」
ドリアンはここ数日、見かけていない。召喚した勇者候補たちをほったらかしにしてどこに行ったのか。まさか私以外の女とデートでもしているのかしら? 気が気じゃないわ。
「パエラ様! 今日は戦闘訓練ですね!」
私の思考を邪魔するのは、勇者候補生たち約、五十九名。増えたわ。増えすぎたわ。
「あっちで、もう男子たちが決闘してます。私も魔法の練習してきます!」
誰も、自分でクエストを受注して旅立ってくれないんだもの。ギルドも出入り禁止だしね。
私は召喚士をクビになるわけにはいかない! じゃないと、ドリアンとは会えなくなってしまう!
そのためには、召喚した五十九名を何としても、冒険者として旅立たせないといけない!
まず裏ステータス画面を見ることができない私は、一人一人に面接と適性試験を行ってテストをしたわ。五十九名に適性と思われる武器を渡したのは、昨日やっとよ。
やっとここまで来たわ。
この子たちを養うため、給食代として私のお給料から食費も天引きされるわ。来月のお給料から。私のお給料! 五十九名分の食費で、どうなっちゃうの!
「いや、まだよ。クランを捕獲するチャンスはまだあるわ。最悪、この勇者候補たち五十九名を差し向けてでも捕まえてあげるわ」
「パエラ様、あっちでけが人が出てます。魔法使い候補の女の子が、剣士の男の子を焼いちゃって」
「……先が思いやられるわね」
透視スキル。案外、持ってる人間って少ないのよね。
勇者候補が五十九名もいて、誰もできないぐらいだし。
どうして召喚士は、召喚で現れる人間を選べないのかしら……。
どいつもこいつも無能ばかり!
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