第三十一話 熊鍋
青熊は、ステフの足に噛みつこうとする。
「真裂蹴り!」
ドウッ!
鈍い音。
ステフはつかまれている方の足で蹴った。足首をバネに使う。少しの動作で強烈な蹴りを放つステフの技。あれを食らうと、敵の身体は裂ける。
「え……」
裂けてない。蹴りは入ったけど。衝撃を吸収されたような鈍い音だったし。ステータスを早く見ないと。
グルルルルルル! ガア!
「ああああああ」
ステフが投げられる。だめだ、届かない。
「ダーリン任せて!」
ミミネが飛び出して頭の宝箱を開ける。ステフの身体を受け止めた。ミミックも役に立つことあるもんだな。
「ミミネちゃんありがとう」
「いいのよん。あなたの蹴りも素敵ね。ダーリン、早くあいつのパンツを見なさい!」
「ステータス画面を見なさいって言ってくれよ! そこは」
スィン。
【名 前】 ドナルド
【種 族】 青熊
【性 別】 オス
【レベル】 800
【体 力】 1000
【攻撃力】 1600
【防御力】 1000
【魔 力】 600
【速 さ】 900
【固有スキル】『剛毛』斬撃系統の攻撃、無効。
「なるほどコウタの斧も、効かないな。あとは、殴るか蹴るか」
このメンツで相性がいいのは、ステフと、俺と、ミミネ? ミミネは任せてと言っているけど、ほんとにだいじょうぶなのか?
ついでに、裏ステータスも。
ペラリ。
【魔 法】 なし
【特 技】 切創付与、大切創付与、噛みつき、剛腕パンチ、剛腕キック
【弱 点】 後ろのボタン
深層心理……厚苦しい。
願望……早く脱ぎたい。
過去……いつまでさかのぼりますか? 年数を選択して下さい。
グルルルルルガ!
コウタに殴りかかってきた青熊。斧を盾にして防ぐコウタ。過去をさかのぼってまで、見ているひまはない。それに――。
「弱点は後ろのボタンだ!」
「ボタンって何ですか?」
「知るかよ!」
青熊、宮廷のメインディッシュで出てきたときは、熊鍋になってた。
あれが俺と青熊の初対面。肉が柔らかくて美味しいことしか、知らないんだから。
あのときのステータス画面には、【味】塩コショウ、レモン汁がよく合うって表示されてたんだからな。
「これ、食ったら美味いんだよな! 倒したら腹いっぱい食べるぞ」
「任せてダーリン!」
ミミネがすさまじい脚力で飛ぶ。青熊の背後に回って、背中をめっためたに蹴る。
「テヤヤヤヤヤ!」
目にもとまらぬ素早い蹴り。
ドドドドドド!
蹴りの入った音もすごい。でも、青熊は押されているだけに見える。
ピンポン!
蹴りの一つが、変な音を出した。
「押したわ! 背中のボタン!」
「マジかぁ!」
俺も宮廷鑑定士を続けて三年。世の中には、まだまだ意味不明で、未知のステータス画面があるもんなんだな。
グルルガアアアアア!
青熊が倒れる。背中からプシューと煙が出てくる。
中から小さな熊が出てきた。小人サイズ。青熊の頭部ぐらいの大きさしかない。
暑苦しそうに、やれやれといった様子で自分の手のひらで顔をあおいでいる。
「そいつが本体だ! 殺せえええ!」
「分かったわダーリン! テヤア!」
青熊の本体は、面食らった顔をしたが、ミミネのハイヒールが顔に食い込み、絶命した。
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