第十四話 恋愛鑑定(追放者サイド)
勇者候補は前回の約三十名、今回の三十。合わせて六十名近くを宮廷で養っている。
ここは、宿でもなければ、魔法学園でもない! お泊り会など断じて許されない!
「彼らのステータスを鑑定できるものは」
「いません」
あっさり答えるな! 誰か、誰かいるだろう。
自ら、胸をぽんと叩けば出てくるステータス画面。表だけのステータスで不十分だったことなど今までないはずだ。
なのに、クランの言う裏ステータスがなければ、満足に勇者候補たちが旅立てないとはね。
今、こうしている間にも魔王はダンジョンで何かたくらんでいるに違いない。ギルドのクエスト消化率も下がっている。
「騎士団は派遣しているのか」
「騎士団は我々の管理下にありませんよ、パエラ様」
「いや、国王も非常事態には、騎士団派遣もやむなしと考えて下さるだろう」
私はドリアンをちらと見やる。私の片思いの相手は私と目が合うと、すぐになんのことかさとった。ドリアンは騎士団員との交流がある。
私も騎士団長と軍務をともにしたことはあるが。ドリアンの友人は騎士団員の次期、騎士団長候補ともうわさされる人物だ。
会議はうやむやなままに終わらせた。ドリアンに頼るしかない。アルフレッド国王の直接の命令が下されなければ、騎士団と召喚士で職務をともにすることはできないのだ。
ドリアンを廊下に呼び出した。
「この俺に何かできることはありますか?」
ドリアンの方から私にたずねてくれるなんて。嬉しい。
「騎士団の件だ。その、お前に、いや、あなたに頼みたい」
私のほほが赤らむのが分かった。
「クエストの未消化問題ですね! 分かりましたパエラ様」
「いや、様づけはもういい」
「え?」
もういっそ、告白してしまおうかと思った。
「こんなときになんだが、私はお前を前からずっと」
だめだ、こんなときだからこそ言えない。職務放棄とみなされて私は軽蔑されるだろう。
この恋は片思いで終わるのか。
クラン・アメルメ・ルシリヴァン、あの若造がいれば話が変わるのだろうか。
ステータス画面が見たい。ドリアンが私のことを今、どう思っているのか知りたい。
そのためには、彼の胸を押すしか――。ステータス画面を見るためだけに、押すのは――。
また、脳裏にクランがよぎった。あの男は、ステータス画面を見て、生意気に勇者候補生たちにいばっていただけだ。
宮廷鑑定士をクビにしたことについては、誰からもおとがめはない。財政赤字だったから正しい行いをした。私も、周囲もそれを確信している。
今さら戻れなど、こちらから言えるはずがない。
だ、だが恋愛占鑑定士としてなら呼び戻しても……問題ないわよね。




