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第六十三話 結界術師、桜花の戦力を知る

                              第四章 桜花

                      第六十三話 結界術師、桜花の戦力を知る



 ナディス村へ入って、一直線に自分の家へと向かう。昼だと村の皆は仕事で山へ出かけているか、家の用事をしていることが多い。店という店がなく物々交換で生活しているため、買い物等でわざわざ外に出る必要がないのだ。

 仕事が終わった後、その日の収穫物を分けに行ったりする。夕方になる前には、仕事を終えて皆が帰って来る。村には外に灯りがないため、陽が落ちると真っ暗になるからだ。村の中央付近では学校に子供が集められ、授業を受けている。


「おおっ! クロウじゃないか」

「久しぶりです」


 二軒先の家に住んでいるおばさんだ。彼女は昔の俺を知っているので、ついつい昔の口調に戻ってしまう。


「「「…」」」


 俺の昔の口調が聞き慣れないためだろう。カリア達は俺を見て、怪訝な表情を浮かべていた。彼女は冬に備え、干物等の保存食を作っている人だ。冬の山は殆ど食料が取れない。熊等の獣も冬眠するので、小型の獣くらいしか採れる食料がないのだ。


「クロウは確か、勇者様の仲間になったのでは? 村に帰って来たのかい?」


 この村の中で俺は、勇者のパーティーに加わっていると認識されているらしい。やはり他の町と交流がないので、情報が何も入って来ないのだ。すでに俺が勇者パーティーに加入を断られてから、数か月経っている。


「家に帰ります」

「気を付けてね」


 フスト王国や桜花の情報は何も聞くことができないだろうと思ったので、話を切り上げて家に戻ることにした。


「ただいま」

「「「お邪魔します」」」


 家に入ると、やはりまだ誰も帰って来ていなかった。妹は学校、父は木を伐りに山へ行ったのだろう。王都へ行く前は、母が亡くなっていないので三人で暮らしていた。その頃はそれほど狭い家だとは思わなかったのだが、流石に六人プラス妖精一人いると狭く感じる。


「桜花の者達はいないようだな」


 カリアが言う。情報が伝わっていないということは、外の者が誰も来ていないということだ。


「ただい…ま?」


 帰って来た妹のウリィが、俺達を見て呆然としている。自分の家に帰って来ると、勇者パーティーに参加しているはずの俺や見知らぬ者達がいるのだ。

 唖然としてしまうのは、仕方がないことだろう。


「お兄ちゃん…どうしてここに?」

「帰って来たからだよ」

「そうじゃなくて…」


 そう言って、彼女がその先を言いよどむ。よく見ると、彼女の瞳からは涙が流れている。急に帰ってきたとはいえ、何故彼女が涙を流しているのかは分からない。流石に、急に兄が帰ってきて泣くような妹ではないはずだ。


「一体どうしたんだ?」

「それは私が説明しますよ」

「えっ!?」


 つい驚いて声を上げてしまった。家に入ってきたのは、フスト王国の兵士であるダウだった。彼は俺が特殊職である結界術師だと判断された時に、王都まで護衛してくれた人だ。ナディス村には一応兵士が駐在している。

 たまにゴブリンのような低ランクの魔物が現れるため、その魔物から村を守るためにいるのだ。殆ど魔物が出て来ないので、彼等は基本的に村人の手伝いをしている。本当にやることがないからだ。

 ダウとは俺が王都を出る際に別れた。彼は王都で務める兵士のため、王都に残ったのだ。パーティーに加入させてもらえなかった際に、彼は王都で城を守る兵士になるかどうか尋ねてくれた。結界術師である俺の能力は、何かを守ることに向いていると言ってくれたのは彼である。


「その腕は…」


 ダウはフスト王国の兵士服を着ていなかったので、俺以外誰も彼が兵士だとは思っていない。そんな彼はラフな服を着ているが、右肩から先の腕が欠けていた。

 彼は右利きなので、これでは満足に剣を振れないだろう。


「これは桜花との戦いでやられてしまいましてね」


 自嘲気味に彼が答える。桜花との戦いということは、フスト王国側が攻め込んで大敗したものだろう。王都に戻っていたため、彼も戦闘に参加させられていたようだ。この戦闘でかなり兵力を失ったと聞いた。命があるだけ、マシだったと言えなくもない。


「流石に剣が握れなければ何もできないので、兵士を引退したのですよ」


 年でもありますし、と空気を和ますように付け加える。彼は桜花に敗れ、ナディス村に戻って来たらしい。つまり、桜花と戦って負けた情報は知っててもいいはずだ。それなのに誰も知らなかったということは、彼が黙っていたということである。

 何故彼が黙っていたのか…。それは桜花に攻め込む意思がないのと、フスト王国に放棄されたと知って不安になることを防ぐためだろう。


「彼女にはあなたが勇者パーティーに入れなかったことと、冒険者として別の町で活動していることを伝えたのですよ」


 彼がウリィを見て言う。


「私は、フスト王国が桜花に負けたことを知っているから…」


 だから俺のことが心配だったようだ。流石に、ウェンデルト王国との戦争のことは知らないようであった。ダウが桜花に負けてこの村に来たのであれば、時系列的に知らないのも無理はない。

 フスト王国は桜花や魔王への戦力を保つために、低ランクの冒険者まで戦場へ派遣していた。俺がウェンデルト王国側にいると知っていないはずなので、この戦争のことを知っていたらさらに心配されていたことだろう。


「この子がクロウの妹ですか?」


 俺達が話していると、サーシャが突然尋ねてきた。思いがけないタイミングでダウと再会したことで、皆を置き去りにして話をしてしまっていたようだ。

 俺が頷くと、次はウリィが口を開く


「この子はお兄ちゃんの子供?」

「そんな訳ないだろ!」


 彼女に突っ込みを入れる。まさかサーシャが、妹に俺の子だと勘違いされるとは思いもしなかった。確かにサーシャは、同年代の子供とも比べても幼い見た目をしている。これは彼女が犬獣人ということもあるだろう。

 犬獣人は愛玩動物のように可愛らしい顔をしているのだ。これは女子だけでなく、老若男女問わない。だがそれでも、俺の子とは勘違いしないだろう。


「こちらの方は?」


 今度は、フランがダウを見て尋ねる。


「ダウさんではないですか。どうしました?」


 父であるダルの声が、ダウの後ろから聞こえる。ドアにダウがいるため、中の様子を把握できていないようだ。


「クロウ!?」


 ダウが移動したことにより、俺がいることに気付いたらしい。ダルも帰って来たことだし、諸々の説明込みで自己紹介をすることにした。


「成程。そのようなことになっていたのですね」


 現在のフスト王国やナディス村の状況を聞いたダウが、納得がいったというような表情を浮かべる。一切フスト王国から兵士が派遣されていないことで、少し疑問を持っていたようだ。


「まさかそれほどとは…」


 反対に、ダウの情報に俺達が驚いた。

 フスト王国を返した桜花の戦力は相当のものだと思っていたが、想像以上に厄介なようだ。彼等は何か分からない攻撃で、遠距離から次々と兵士や冒険者を倒していったらしい。その攻撃速度と威力は凄まじく、気が付いたら殆どの兵士が鎧に穴を開けられていたようだ。

 どうやら連続で攻撃できないらしく、交代でその攻撃をしてくるらしい。近付く前に何度もその攻撃を受け、彼等と接敵する頃にはかなりの兵力が減らされていたようだ。

 フスト王国側も魔法で遠距離攻撃をしていたようだが、後方に待機していた魔術師に対応されてしまったらしい。逆にこちらの魔術師は敵の攻撃の速さに対応できなかったという。かなり速い攻撃ということだ。

 さらに、敵は近接戦にも対応してきたようだ。かなり動きが速く、一撃も鋭いらしい。ダウもその攻撃に対応できず、右腕をやられたようだ。

 武器も特殊なもので、片刃でかなり細く、切れ味が鋭い剣だったらしい。それは攻撃の重さよりも、鋭さと速さを重視した武器のようである。

 近距離攻撃も得意な上に、謎の遠距離攻撃も持っている。どうやら、桜花はかなりの戦力を有しているようだった。

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